生きろ
夏が暑いと感じたのはいつからだろうか。最近はもう涼しさの足跡さえも見失った。夕色になれど暑いのはなぜだろうか。見失えど見失えど繰り返す悪夢のようで、空虚を覘く猫のような好奇心でさえも取り除くことのできなかった光があった。
第一章 流浪
髪が長かった。さすがに今回は伸ばしすぎた。後ろ髪は腰まで伸びていて、毎晩のドライヤーで10分とか 20分とかかかるもんだから、いい加減切る気になった。だから仕方なく切りに行くだけだ。
外は嫌いだ。なぜか知らないけれどすれ違うたびに人がこっちを見ている気がする。行ったことのないところへ行くと必ずと言っていいほどに美容室とやらの店員に声を掛けられる。これがまた解らない。いつもは自分で切ってたのにハサミをどっかにやった自分が憎い。
仕方なく外へ出ると、木が緑に色ずいていた。汗がじんわりとでてくる。
「みんな半袖なんだ…なんでだろ、まぁ、どうだっていいか。」湿りを失ったアスファルトをずるように歩き、意味もなく服の胸元を掴み、反射的に扇ぐ。
流れていく他人の家にはさほど興味もなく、私の中ではただの背景と化していた。ただ、普段と違うものがあるときには、気に掛ける程度の興味は持つ。前回の外出の時にはなかったものが増えていた時、ちょっと違和感を持ちつつもすぐに背景になってしまう。