サークル introduction 2
「俺はベース担当のワタルってことで。 まぁ自己紹介も一通り終わったことだし…って、あれ?」
そう言ってワタルがキョロキョロと辺りを見渡す。
「ん? なんだよ」
「あの黒服ちゃんは?」
「黒服の…あぁ、アスのことか」
アスの方を見ると、部室の端に置かれている楽器を退屈そうにツンツンと触っていた。
海辺でヒトデをいじっている女の子かアンタは。
「おーい、楽器いじってないでこっち来いよ」
呼ばれていることに気付いたアスは、パタパタとこちらにやって来る。
その様子を見て、俺の呼ぶ方向に誰かいるのかと、アカリは「ん?」と首をかしげていた。
「なんですか? 用事がないなら帰りたいのですが」
「じゃあ帰ればいいだろ…」
「ダメです、私はチヒロさんを護衛する任務があるので」
「護衛じゃなくてストーカーだろうが。 つか、護衛なら帰りたいとかわがまま言うな」
「いふぁい、いふぁいふぇす…」
両方の頬を横に引っ張ってつねると、抵抗する気がないアスは口では言うものの、されるがままだった。
離すと、つねられた赤い頬を膨らまして俺を睨む。
「全く、相変わらずチヒロさんは鬼畜ですね」
「お前が変なこと言わなきゃこんなことはしない」
「そんなチヒロさんは鬼畜・鬼・悪魔に昇格です」
「なんだその単語の寄せ集めセットは」
「ハッピーセットです」
「どこに幸せがあるんだ、どこに」
俺がアスと話している様子を見て、アカリは頭からハテナマークを生やしてワタルに聞く。
「…チヒロさんはさっきから何してるんですか?」
「お嬢ちゃんとイチャイチャしてんな」
「してねぇよ」
「してないです」
アカリは「イチャイチャ…? んー?」と言いながら目をこすって俺達のことを見つめて数秒。
「あぁ…あ! ほんとだ、お嬢ちゃん! なんで気付かなかったんだろう」
「身体が小っちゃいっから、わかんなかったんだr…」
ワタルは台詞を最後まで言い切れる前に、アスに腹パンをされる。
「ワタルさんは『でりかしぃ』っていうものをよく勉強したら良いと思います」
「そうゆーの、よくないと思うなぁ」
アカリもアス側についてワタルを注意する。
「わ、悪かった…悪かったから、腹パンはやめて…」
そう言って、助けを求めているようなウルウルとした目でこちらを見てきた。
すまん、流石にこれはフォローできんわ、ワタル。
「それよりも、アス、三人に挨拶してくれ」
「三人?」
「私が見えているんですか?」というアスの目に、俺はとりあえず頷く。
「アスです、よろしくお願いします」
ワタル、アカリ、ユカ、それぞれに目を向けてからペコリと挨拶を交わす。
その挨拶にアカリは、すぐに反応することができた。
ワタルも自然と挨拶を返す。
「アスって言うんだな。 お嬢ちゃんの名前」
「まぁワタルはあの時、蹴りが初めましてだったもんな」
「あれ、初めましての挨拶だったのかよ?!」
「あなたは蹴りで十分です」
アス、やっぱ「ワタルになんかされたのか」ってレベルで扱い雑じゃね?
「そんなぁ~」とワタルがノリノリで返してるから、別にいいのか。
まぁあいつMだし。
「Mじゃないからな」
「え、どうしたんだ急に」
「なんかそう言ってる顔してたから」
「まさか、気のせいだよ」
なぜバレたし。
ワタルとアカリがアスと少しわいわいした後。
「……。」
ユカが全然喋っていないことが気になったアカリはユカに話しかけた。
「ユカ? どうしたの?」
「ん…少し考え事」
ユカは少し遅れてアスに挨拶をする。
こうして、ワタルの他にアカリとユカもアスが見えていることがわかった。
だけどユカの、何か深く考えているような表情が少し気がかりだった。
次話投稿は2月18日になります。
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