サークル introduction
「ども、チヒロです。 ギターの代わりで来ました」
「よっ! 救世主!」
ワタルが満面の笑みで大きく拍手した後に続いて、メンバーである他の二人も軽く拍手をした。
授業を終えた夕方。
大学の校舎の隣に設備されている、その校舎と同じくらい割と大きめなサークルの部室棟。
ここの大学の軽音サークルの部室は、思っていた以上の3倍は広かった。
部室棟はもっと古臭い小さな部屋をイメージしてたものだから、ここまで広いのは意外な印象だった。
部室の角にはドラムセットやギターがごっちゃに並べられ、そこに細かな機材が添えられている。
ワタルいわく、それぞれ別のスタジオに行って練習をしているため、ここではメンバーでのミーティングにしか使っていないらしく、そこら辺の物はただの置くスペースのようだ。
それで今そのミーティング中なわけで、俺が来て早々にメンバー全員の自己紹介が始まっていた。
「メンバーの絆をズバッと深めるためには、お互いのことを知る所からだ。いいか、まずはな、自己紹介だ!」というワタル独自のルールの元、言葉通りに自己紹介が始まっていた。
まぁ、そういう細かい所からモチベを上げてこうという考えは、ワタルらしいなとは思った。
「じゃあ次はボーカルさん!」
ワタルに指名されて「え、私!?」と言わんばかりの動揺をする彼女。
しなやかな茶髪のロングヘアに透き通った茶色の目、全体的に落ち着いた雰囲気を感じる服装、初めて見た印象は「優しい」だった。
「ボ、ボーカルの、アカリ…です! 短い間だけど、よ、よろしく、ね?」
と、上目遣いでこちらを伺う。
よろしくと返すと彼女はえへへと照れるように微笑んだ。
その様子を見ている俺に、ワタルはニヤニヤしていた。
「ん、なんだよ」
「あ、可愛いなって思ってるの、バレバレだぜ?」
「そんな顔に出てた?」
「いや、別に? ただ言ってみただけだけど、チヒロの反応がつまんないなぁ、31点」
「はいはい、俺は赤点ぎりぎり男ですよ」
「意外とお前ってツンデレキャラ的なオチなのか?」
「嫌な分析すんなよ」
「まぁなんだ、よろしくやってくれよ。 アカリはすげぇ歌が上手いんだぜ? 透き通った歌声してるっていうかさ。 この前なんて、カラオケで98点出してて凄かったんだよ」
「へぇ、そりゃすげぇわ。 今度合わせるときが楽しみだな」
「えぇ! えと、あの、が、頑張ります!」
と、アカリは「はぅ…」と縮こまった反応をしては、顔を赤くして口をパクパクしていた。
んー、「優しい」というかこれは…。
(小動物みたいだな)
「小動物みたいだな!」
ワタルが俺の考えていることと同じことを言うと、今度は俺の方を見てニヤニヤする。
…ワタルうざい。
「…あのあの! ベースの子!紹介するね」
アカリはそのベースの子の後ろに逃げるように隠れた。
ベースの子の方が身長は少しだけ小さいからか、隠れきれていない所が可愛らしく見える。
黒髪のボブヘアに奇麗な紫の瞳でストリート系統の服を着ているが、アカリと比べて彼女は物静かな印象を受けた。
「ベースの子…」
「……。」
「……。」
「…え、終わり?」
「…のユカです」
謎の沈黙の後に、礼をして挨拶をするユカ。
それに思わずコケる動作をしてしまう。
「圏外にいるんかアンタは」
「…はい」
「え、あ、そーなんですね」
「嘘です」
うん、まぁですよね。
「俗にいう、ベースジョークです」
「どこにベース要素あったんだ」
てか俗にいうのかこれは。
「ベースの、ベース」
自分が言ったベースジョーク(?)でクスクス笑っているユカ。
「なぁワタルよ」
「んー?」
「ユカの頭のどこかが故障してるんじゃあるまいな?」
「いや、平常運転だけど」
「そか…」
「でもねでもね、ベースすっごく上手なんだよ!」
さっきまでユカの後ろに隠れていたアカリが、いつの間にか隣で目を輝かしてユカを褒めていた。
「うん、ベースの技術といったらー級品だ」
アカリの言うことに大きく頷いては、ワタルもユカのことを褒めた。
「そーなんだな」
改めてユカの方に目を向けて、返していなかった挨拶を返す。
「酷いこと言ってすまんな、よろしくな」
「べーす(つ)に気にしてない」
本当に大丈夫なんだろうか。
日付が過ぎてしまって、申し訳ないです!
次話の投稿は2月11日になります。
読んでいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
などと思ったら、下の☆☆☆☆☆から作品の応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらならかったら星1つ、読んでみて正直に思ったことで大丈夫です。
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。
これらの評価を得ることで、今後の執筆に活かしていきたいと考えています。
何卒よろしくお願いいたします。




