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明日の日記帳(休載)  作者: 間宮 凪
6月
4/11

夏のはじまり

 六月。平日の朝。

 寝不足でまだ眠っている身体を無理やり起こす。

 寝られなくなる理由では無いんだけどなぁ。

 この前バス停で言われた言葉が、ふと宙を浮かんだ。


(あなたを観察して、私なりに探します。 『愛』とは何なのかを)


 『愛』とは何なのか…。

 別に俺を見たことで学ぶこと、ないんだけどなぁ。

 買ってからまだ三ヶ月も経っていない奇麗なカーテンを開け、部屋に昼前の日差しを取り入れる。

 二階から見える窓からは車一台分の道路と住宅が建ち並んでいるだけで、玄関掃除をする主婦や歩いている学生などはいなく、シンとしていた。

 少し見慣れてきた風景を特に意味もなく見てから、大学の準備を始める。

 ベッドのすぐ下にあるコンセントからスマホの充電器を抜き、スマホを手に取って通知を確認する。

 メッセージを見るとワタルから連絡が来ていた。

 サークルの件だ。

 軽音サークルの定期ライブでやるバンドメンツで、ギターが一人かけたその代わり。

 元々はやる気の粒子すらなかった。


(あなたを観察して、私なりに探します。)


 記憶喪失の少女にそう言われた以上、俺のぐーたら生活を見せても何のヒントも得られない。

 なら、定期ライブの練習から本番を通じて何かを得られるならそれが一番手っ取り早い。

 見える人が今のところ俺しかいないみたいだしな…。

 そう、他に見える人さえいれば、適当な理由付けてサークルとおさらばすればいいのだよ。

 ワタルから「マジ神ぃ!愛してるぅ!」みたいなメッセージが来ていたので、とりあえず適当に返事を返す。

 そこからなんやかんやで大学に行く準備も済ませたので、バスの時間を確認し、外へと繋ぐ重い 扉を開けた。




----




 急な階段を下りてアパートから出ると、熱い日差しが俺を出迎えた。

 湿ったコンクリートが太陽によって黒く輝き、道の小さな水たまりが空の一部を切り取って映す。


「あつっ…。」


 この前は少し熱いくらいだったのに、六月になってからはそれがパワーアップしていた。

 しかも湿気の多さがおまけでついてくるというサービス精神。

 そんなのいりません。

 間違いなく、夏の足音が駆け足で大きくなっていた。

 そんな日の下で、俺は慣れた道を歩く。

 家からバス停までの距離は近いので、すぐ着く。

 どうやら俺が一番手だったようだ。

 まぁ、いつものことなんですけど。

 バスが来るまであと数分…。

 俺はスマホでSNSのタイムラインを眺めて時間を潰していた。


「あぁー、あついです…。 自分の周りにだけ冷却空間を生み出す能力みたいなのないんですかねぇ」


 いつからいたのだろうか。

 俺の隣にはこの前も会った少女がいた。

 白く透き通ったロングヘア。思わず見つめてしまう金色の瞳。華奢な身体を纏うゴシックドレス。

 アスだ。


「まず自分の格好をどうにかする所からだろこれ」


「この恰好は私の身体と同化しているのでダメです」


「なんじゃそりゃ」


「あれですよ『ゲームのキャラクターはどんな場所でも服装を変えない』のと一緒みたいなものですよ」


「メタいな、おい」


 まぁ確かにそうだけど。


「じゃあ暑いなんて言ってないで、ゲームキャラみたく何も言わないことだな」


「それは拷問です、鬼畜です、いじわるです!」


 アスは左右に首をブンブンと大きく振っていた。

 なんだ、その三段活用は。

 そうしている間にバスが俺らの前に止まった。


「そ、それよりも乗るんですよね?」


 この前は俺が乗るかどうかを聞いていたけど、今日はアスが俺に聞いてきた。

 ついていくって話、やっぱ本当なんだなぁ。


「まぁ、もちろん」


 軽い足取りで乗っていくアスに続いて、ゆっくりと俺もバスへと乗った。


「そういえば、いつからバス停にいたんだ?」


「バス停というか、チヒロさんが家から出たあたりですね」


 アスは表情を変えずにドッキリなことを言い出した。


「いや待て、なんで俺の家を知ってんだよ」


 俺は思わず身体ごとアスの方へと向けて聞いた。


「この前に言ったじゃないですか、あなたについていくって」


「いや言いましたけども、流石にそれはやりすぎ」


 マジもんのストーカーじゃねぇか。


「でもこの前は俺と一緒にバスに乗らなかったじゃんか」


「いやぁなんというか、あのあとフラっと商店街に行ったら、買い物帰りのチヒロさんを見かけまして…。」


「それでついていったと?」


 アスはコクコクと頷く。


「見かけたんなら、俺に声かければ良かったのに」


「それは…まぁ、いいじゃないですか」


 アスは少しだけ俯いてから答えた。


「ほんとにストーカーなんじゃないのか?」


「そんなことないです!失礼です!鼻くそです!」


「なんだよ、鼻くそって」


「鼻くそはチヒロさんです」


 なんかムカついたのであすの頭をはたくと、アスは「あいたっ」と言ってはたかれた部分を両手で抑える。


「むぅ、ぶつことないじゃないですか」


「失礼な事いうからだろ、ったく」


 なんだかんだアスとバスに乗ったのはこれが初めてだったな。

 ちなみに、バスに乗っていた他の大学生からジロジロと見られていたのは、また別の話である。

次回の投稿は年末年始がある関係で1月21日になります。


読んでいただきありがとうございます。


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面白かったら星5つ、つまらならかったら星1つ、読んでみて正直に思ったことで大丈夫です。


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


これらの評価を得ることで、今後の執筆に活かしていきたいと考えています。


何卒よろしくお願いいたします。


皆さん よいお年を。

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