はじめまして
初投稿です。
特に急ぐほど時間が厳しい訳ではないけど、定期的にある教師との対面を終えてからすぐ友達とバスへ乗り込んだ。
理由な単純で、早く帰りたいというだけ。
これを逃しても次のバスに乗ればいいだけなのに、なんでバスに乗ることに息を切らしてまで走ってるんだとバカバカしく思えてくる。
あとは座っていれば家に着くという安心感を得てから、気分はオフモードのさらに下へと向かっていく。
箱の中には小さな板を見つめる人形が点々と置かれ、窓の外には海が夕日から放つ炎に包まれている。
その風景を見て、勝手に映画のエンドロールを脳内映像で垂れ流していた。
「おいチヒロ? ちーひーろ、聞いてんの?」
そんな俺を、ワタルが呼び続けていたことで現実へと戻されていく。
流石にポーカーフェイスな反応は心配されそうなので、
少し慌てている風を装ってワタルの方に顔を向ける。
「ん? あぁすまん、宗教勧誘の話だっけ?」
「は?」
「え?」
ちょっとこれは慌てすぎたのかもしれない。
「いや、対面授業が少なくてさ、いい女子との出会いが無いなぁって」
そう言いながら、どこから宗教勧誘の話が出てきたんだよと困惑する顔をするワタル。
まぁそれは当然の反応で。
「恋愛の神様を信仰するために日々頑張ってるもんな、宗教活動お疲れ様」
「宗教の話、全くしてねぇから」
まぁ当然の正論である。
別に宗教の話を続ける意味は全くないけど着くまで暇だから、ワタルにはこのまま俺の宗教ネタに付き合わせてもらおう。
「え? まさかお前、信仰してないから出会いがないんじゃないのか?」
「は?」
「いやぁ勿体ねぇなぁ、恋愛の神様を拝めば将来すげぇ美人と出会えるのに」
「え、マジで?」
あからさまな嘘に反応するワタルに俺は少し困惑する。
美人だけで釣れるとか、心は小学生か。
「おう、マジだ。俺がここに引っ越す前にいた同じ高校の友達で、二年間ずっと拝んでたヤツがいたん
だけどさ、三年になって高嶺の花をゲットしたんだとよ」
「うぉー!マジか、すげぇな!」
さらにその嘘に前のめりになって反応するワタル。
ちょっとこれは面白いことになりそうだから、このまま進めていくことにする。
「だから、お前も頑張って拝んでれば、数年後には美人と出会えるんだよ」
「よっしゃ今日からやる!俺何すればいいの?」
「そうだな……朝、北に向かって高橋さんラブラブって十回唱えながら反復横跳びをするんだ」
「なんで高橋さんなのか知らんけど、ありがとう! とりあえず今日帰ってやってみるよ!」
「おう、頑張れよー」
元気な足取りでワタルはバスから降りていった。
あんなあからさまな嘘を、何も疑わずに信じるなんて大丈夫だろうか。
あいつ、宗教勧誘の人に会ったらマジで騙されそうだな。
「ま、何も疑わないあいつが悪いってことで」
ワタルが降りた後、バスは気怠い感じでゆっくりと進み始めた。
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大学からバスで15分ほど揺られて着く、この町で唯一ある商店街。
気が付けば、水平線に隠れようとしている太陽は、もうほとんど隠れていた。
5月の時点で日中は熱いから、薄着でもいいやと思っていると、
夕方くらいから吹く冷たい風に、少し肌寒さを感じる。
「寒っ、なんか羽織るものでも持ってくればよかったな」
時間を確認してから、俺はなるべく足早で歩いた。
ここの商店街は、来るたび代わり映えのしない光景を映し出している。
色鮮やかな店内の照明を消し、彩の一部を掻き消す花屋の女主人。
今日の夕飯を話ながら並んで歩く中年のカップル。
杖をつきながらゆっくりとした足取りで、目当ての店へと向かう老人。
隅でスマホをいじりながら友達同士で駄弁る高校生。
スーパーの方へ向かうと、窓からはマイバックに買った食品を詰めていく主婦達が大半を占めていた。
それを遠目で確認しつつ店内へと入り、意味もなく夕飯の献立を考える素振りをしながら周っていく。
肉コーナーを三往復。野菜コーナーを二周。
スマホで材料を確認し、必要な食材をかごへと入れていく。
まぁ、三日前に作り込んだ回鍋肉が昨日で無くなったから、それ作る為の材料買うだけなんだけど。
使う食材を集め終え、風呂上がりのアイスを最後に大勢並んでいるカウンターへと向かう。
「やっぱこの時間帯は混むよなぁ」
いつも見る光景。
スマホを取り出し、SNSのタイムラインで待ち時間を潰す。
当たり前の日常。
列が少しずつ進んでいるので、前につめようと顔をあげる。
いつも…見る光景。
‟違和感"が視界に収まったのは、まさにその瞬間だった。
並んで歩く中年のカップル。
杖をつきながらゆっくりとした足取りで歩く老人。
隅でスマホをいじりながら友達同士で駄弁る高校生。
道の真ん中で佇む、ゴシックドレスを着た一人の少女。
「……」
ゴシックドレスを着た一人の少女。
自分の体調を疑ったが、どこも悪くはない。
輪郭も存在もはっきりしている。
透き通った長く白い髪。一目奪う金色の瞳。華奢な身体を纏う黒いドレス。
この容姿から、明らかにこの場には合わないような印象を受けた。
いや、まぁ今時こういうのを着ている女がいるのかもしれないけど。
でも「違和感」というのは別のところにある。
「なんじゃこりゃ」
思わず声がもれる。
あの人混みの中でも目立っている少女に、全く誰も気にかけていない。
普通、この場には合わない格好をしている少女を見たら、ちらっと顔を向ける。
スマホをいじっている高校生だって、顔をあげる。
これ、気付いてるの俺だけか?
「あの、次あなたですけど」
後ろから声をかけられているのに気づき我に返ると、いつの間にか自分の番がきていたようだ。
ふと辺りを見回すと周囲の人は少し迷惑そうな顔で俺を見ていた。
とりあえずこのままはまずいので、苦笑いをしながら軽く周囲に会釈し、会計を済ました。
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さっきみた光景が気になって慌ててスーパーから出る。
あの少女が立っていた場所に行ってみたものの、ゴシックドレスを着た人などどこにもいなかった。
何だったんだ、今の。
「いつの間にか薬やってたのか、俺は」
まぁ見たのは数分前だったから、どこかに行ったっていうのが自然か。
「あーもぉやめだ、帰ろ」
買い物袋を持ってうろちょろして、無駄に疲れを増やすなんて嫌すぎる。
俺は真っすぐ家の方向に向かおうとした。
「……あ」
ふと視界に映る、歩く「違和感」はすぐそこにいた。
透き通った長く白い髪。一目奪う金色の瞳。華奢な身体を纏う黒いドレス。
少女は周囲をキョロキョロとみつつ、商店街の道をジグザグに歩いている。
右へ左へと寄りながら、歩いている人達を叩いたり、脅かしたり、舌を出して挑発するといったちょっかいをしているようだ。
「何やってんだアイツ……」
傍から見てもそれは変としかいいようがなく、滑稽だった。
しかし、そんなちょっかいをされている本人たちは一切反応することなく、
そのまま通り過ぎていった。
やはり俺は幻覚を見ているのか。
きっとそうに違いない。
ここ最近、毎日の夕飯が回鍋肉だからだろう。
別に幻覚が見えるような食べ物じゃないんだけどな。
今日の夕飯、違うメニューにすれば良かったかな。
「あっかんべーっだ」
「あ?」
そう考えているうちに、いつの間にか少女は俺の目の前に来ていた。
「……」
「……」
お互いに瞬きを数回。
少女はこちらが見ていることに気付くと目を丸くし、口を開いた。
「もしかして……あなたは、私が見えるんですか!」
「え? はい」
少女は驚き、俺の表情を伺いながら周りをぐるぐると回る。
驚いたかと思えば、今度は背中を向けてこそこそと何かを始めた。
「み、見える人が…いた!」
さっきからこいつの行動がよくわからないんだが。
大体こういう変なヤツと絡むと、ろくなことがない。
こそこそと何かをやっているこの人を変人と見なし、さっさと帰ることにした。
「じゃ、俺はこれで……」
「ま、待って待って!…ください」
少女は慌てて追いかけ、行く末を阻むかのように俺の目の前に回り込んだ。
「あの、私が見えるということで願いを聞いてくれるんですよね」
「え?」
なんだそのゲーム、流行ってるのか。
‟見えている”ということが余程嬉しいのか、彼女は落ち着くために一旦息を整えてから、そのお願いを話す。
「えと、ですね…」
すると今度はモジモジしながら俺に頭を下げた。
「あ、愛ってなんでしゅか!教えてくだひゃい!」
「…は?」
彼女は俺と出会った矢先にこんなこと言ってきたのを、俺は今でもよく覚えてる。
愛ってなんですかって、なんか曲の歌詞でよく使われてそうな言葉だよな。
最初はそんな印象だった。
初めまして、間宮 凪です。
「明日記」これから頑張っていきます。
次回の投稿は11月26日を予定しています。
:追記
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