第6章 彼らの長い一日の始まり 前編
え?締切あと2週間もないじゃん・・・ッ!
それから3日が経ち、私は、いつもと変わらぬ様に高校へ通っていた。
でもその日、私達には考えられない衝撃的な事が、この一日をまるで数日間のことのような感覚を味わいさせたのです。
第6章 彼らの長い一日の始まり 前編
そう、その長い一日は、3日ぶりに現れた「彼」の登校から始まったのでした。
先生の話の途中、ドアの向こうから全力で駆ける「何か」の荒い息が聞こえていた。教室にいた何人かがそれに気づき不審に思う。
すると黒板に近い方のドアが勢いよく開き、肩で大きく息をする「連」がいた。彼は酷く息を切らして、教室へ入った。完璧な遅刻だったが、諦めずに走ってきたところは真面目な彼らしい行動ともいえる。
「神風君、珍しく5分遅刻じゃない。何かあったのかしら?」
先生の指す「何か」とは、連の頬にある絆創膏の数だ。未璃は自分の席から彼の頬に張られている、大きなそれ見ると心配で落ち着いてられなかった。
連は至って平然を装い、頭を少し下げて謝った。
「すみません、寝坊しました」
相変わらずの真面目な態度に、先生も軽く溜め息を吐いた。
「まぁ、普段真面目なあなたが寝坊だなんて珍しいから、今回は見逃してあげますけど次回からは許しませんからね?」
先生の許しに連は大きく頷いた。
連が席に着くと、クラスのみんながざわき始めていることに気づいた。それは連の珍しい遅刻に対してではなく、先日の彼の怪しい行動以来、様々な噂が流れているのだ。
耳をよく澄ませば、男女問わず話し声が聞こえてくる。
(ねぇ、噂のあの子今日学校来たね)
(あのF.B.Iの特殊工作員とかいう奴でしょ? 何か落ち着いてて、鋭い眼差し、間違いないでしょー?)
(あいつさ、実は裏で賞金稼ぎと繋がってるって噂が出てる奴だろ? こんな学校で何しでかすつもりだよ・・・)
(あれじゃね? 依頼者はとある教師の元彼とか。で、元彼が別れたハライセに賞金稼ぎに依頼して殺してほしいとか)
どれもこれも、デタラメにも程がある。もっとマシな噂が流れなかったのか、黙って聴いている未璃も不思議に思う。
連の耳にも、本人に聞こえぬよう潜める会話が届いていた。だが、その噂に彼の表情は全く左右されない。顔に出さない、のは、彼が賞金稼ぎであるからしての技である。
荷物を片づけ終えると椅子に腰掛け、窓の向こうを見つめる。普段と変わらないよう、装った1日が始まったのだ・・・。
中編へ・・・
レビューとかも・・・お願いします。