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神風ナイト  作者: Ringo
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第1章 高校生、借金11億、月収1億。 前編


 近未来・・・。金を求めて戦いをする騎士が現われた時代。騎士は軍事開発された陸戦機動歩兵用アーマーで全身を覆い、依頼者から高額の金を受け取って様々な「闇の仕事」を行う。近年、国が手に負えない「汚れた仕事」を裏で騎士へ依頼することも増えていた。銃刀法違反、殺人罪等、法律を破る者が国が裏で認められていることに対し、国は一切の否認であった。


 その違法者である騎士を取り締まる為、「ガイア」という組織が結成されるが、世界中に潜む騎士の増加を抑えることは出来ずにいた。


 金だけに従う騎士。そして人々は彼らの様な者を「バウンティハンター」と呼ぶようになった。








 3日後


 祐介と蓮は2人そろって自分達の住む町の商店街へと訪れいていた。腕時計の短い針は4を差し、夕食のお買い物が目的の人々がわんさかと散らばっている。だが、2人も仲良く買い物に来たのが目的ではない。2人はそのまま路地を曲がり、さらに曲がって、曲がって、曲がって・・・。やっとおんぼろの家の前とたどり着いた。周囲は幾つもの建物が並び、非常に狭い通路。近代化のお陰で建物はより高層化も進み、その影で押し潰されそうに、おんぼろの家はちょこんと建っていた。


 サッシが錆びてなかなか素直に開かないドアを無理やりこじ開け、2人はその家の中へお邪魔した。


 部屋の中へあがると、埃とカビの臭いがぷんっと漂った。辺りを見れば、そこ等中本が積まれたり機械が積まれたり、とてつもなく管理が悪い状態であった。


 すると書斎用デスクの下からひょこっと顔を出した老人が現われた。老人はにっこりと笑うと両手を広げて歓迎をした。


 老人の名前はジディ。この家の主であり、又職業は主にバウンティハンターへの依頼の仲介人や、武器商人である。2人が賞金稼ぎを始める前からの知人である。


「おお、完遂してきたか。まぁこっちにきて座れや」


 そういうと老人は2人を奥の部屋へと連れて行った。






「なにぃっ?! 賞金をもらえないだってぇ!! どういうことだよ!!」


 奥の部屋で話をしていて、気に食わず机を両手でバンっと叩きつけて大声でこう叫んだ祐介。その隣に座る蓮も向かいの白髪のジディも、そろって耳を塞いだ。それでも鼓膜へしっかりと伝わり、頭の中はキーンという耳鳴りが木霊こだましていた。


「そう大声をださんでも聞こえてるだわさ。兎に角今回の720万の賞金はそのままアーマードナイトの借金に回すって事だ」


 アーマードナイト(A.N)とは、最新の科学の技術で人工知能を搭載した人型の警備ロボットである。基本全長2メートルを越す巨体には腕にアームガンが内蔵されているの一般的で、本来は軍基地や国の重要施設などの警備に使用される物であった。だが、数十年前から警備ロボットを戦闘向けへと改修させ、軍やバウンティハンター等の護衛兵器として実用化された。3日前、蓮が苦戦している所に現われ助けたのもアーマードナイトである。


「借金は返すっつったじゃねぇかよ、 何で今持っていくんだよ!」


 老人は暫ししかめっ面になり、ノートパソコンに打ち込んでディスプレイを此方へと向けてきた。


「ほれ、まずあのロゥランドの装甲! あれは特殊な合金で作られていてそう簡単に手に入るもんじゃない! それにマイクロジェネレーターやラジエーター、あれらも全部最上級のレアパーツだ。A.N.専用の武器だって、中国から手に入る安もんなんかとは格が違う! 一番重要なのがA.N.に組み込まれた人工知能だ。あれはまだ裏で出回ってない米軍が開発した最新のシステムが組み込まれている。それらをアセンブルしたロゥランドは総額5億円!! こんな高額をワシが背負えるものか! 今回ばかりはワシはそう長く立て替えてられん。だから賞金はお前さん達に渡せんと言っとるんだ」


 祐介は腰を下ろして何とか老人に説得をしかけた。


「でもロゥランドを注文したとき、金は払うって契約したじゃねぇかよ?」


「だめだ。最近お前さん等からの立て替えが多くてな、まぁちょくちょく返金され取るがそれも合わせると総額11億程度まで達する。さすがのワシも貯金がそこを尽きるわい」


 言われた通り、仕事で使う武器などの立て替えを最近重ねていた。返すつもりはあるのだが、この所、高額の依頼が自分の下へ届かないのだ。その為徐々に月収も減っていき、この所は月0円に等しいほどであった。久々に入ったこの依頼は2人にとってはとても必要不可欠な賞金だったのだ。


「お前達には悪いが、これからの依頼、全額こっちの借金へ回してもらうぞ」


 そういうと老人はノートパソコンを閉じ、コーヒーをすすった。絶望的な生活に陥った事を知った祐介は頭を抱えて唸った。


「じゃぁ俺達どうやって金稼げっていうんだよ・・・」


 するとそんな生活が危うくなるのに特に顔色一つ変えない蓮は老人へ訊いた。


「ちなみに新しい依頼はないのか?」


 ジディは突然ぎょっと目を大きく開き、懐から一枚の紙切れを取り出した。


「そうだった。お前さん達にちょうどいい依頼が来てるんだ。ほれ」


 ジディはその紙を蓮へ渡した。蓮と祐介はその紙を上からゆっくりと読んでいった。その紙には2人への新しい依頼が記されていた。


「依頼内容、<旭高校 2年 17歳 伊崎未璃いざきみり本人には一切正体を晒されること無く1ヶ月以上彼女の身に起こりうる危険や事故からの回避、護衛>これどういうことだよ?」


「昨日1人の女がきてなぁ、この子の護衛を極秘でおまえさんらにしてもらいたいって。何が目的かは知らんが、娘っこ1人のお守りの依頼にこんなは莫大な金をかけるとは信じられんだわ」


 老人に言われ、金額を見た。すると・・・


「―――ッ! 1ヶ月いいぃいぃぃ1億?!」


 「一ヶ月」という言葉も気にはなるが、最も1億も掛かる依頼はどこを探しても存在するはずがない。2人は疑ったが、間違いなく桁はあっていたし、満更夢でもなかった。


「ジディ、本当なのか?」


 念を押して蓮は訊いてみるがジディは困った顔をして頷いた。


「そこでだわ。この依頼のを受けるのも受けないのも自由だが受けるなら、毎月支払われる賞金1億はそのままワシへの借金返済へ当てろ。そうすりゃ1年で返せるし他の依頼の賞金はお前さん達のもんでいい。どうだ?」


 残された選択は無い。11億の借金をこの不景気な状態で自力で返す事は一生掛かっても無理だろう。それがたかが高校生1人のお守り1ヶ月で1億も手に入るなど、もう迷うことは出来ない。


「・・・こんな莫大な金を注ぎ込まれてでも見張らなくてはならない訳は分からない。でも、1ヶ月1億ってつまり最低1年間はこの依頼を受け持たなきゃいけないんだろ? それに誰が護衛を―――」


 蓮が疑問を口にした瞬間、祐介とジディの目線は痛いほど蓮へ向けられた。それは「お前以外いないだろ」と言わずしても分かるものだった。


「・・・待て待て。いや何だ? その期待と信頼が溢れるほどまでの瞳は・・・ッ!」


 嫌な冷たい汗が蓮の全身から流れ始めた。そして、彼の嫌な予感も的中してしまうのだ。


―――嘘だろ? 俺が高校生・・・!?―――





 第1章 高校生、借金11億、月収1億。中編 へ続く

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