表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

Reポイント

最高の居心地空間を手に入れるため、俺のようにReポイントを集める人間がたくさん現れるようになった。


俺もReポイントを集めている人間の一人だ。


「せんぱ~い!!牛丼(しょく)りに行かないっすか?!」


「ああ、もちろんだ。誘いがなければ俺から誘うところだった」


「ま、まじっすか?!センパイって、いつ誘っても毎度断るから、今回も玉砕覚悟で言ったんすけど、まじ意外っす!!」


だろうな。俺はこいつからの誘いは毎回断っていた。別に嫌っているわけではないが、これまで利害が一致しなかったのだ。


「最近のセンパイは、ヘブンイレブンのおでんばっかりモグってたから、おでん星人に脳味噌を侵略されたかと思って、心配してたんすっからね!!」


後輩君はがははと笑いながら俺の背中を馴れ馴れしくパンパンと叩いてきた。確かに、俺とこいつとは近しい関係だ。


だが、上司と部下の関係であり、今のような行為はいかがなモノかと最初は気になっていた。


が、注意するのも面倒だし「これが最近の若者とのコミュニケーションの取り方なのかな」とポジティブに考えることで、怒りの感情は蒸発し心に貯まることはなくなった。


むしろ、後輩君の行動の社会性の無さに着目するより、彼が使用している『今風の話し方』の方が気になって仕方がない。


(しょく)りに行く』だとか、『モグってる』だなんて俺が10年前の時に使用なんかしてなかったし、考えもしなかった。


後輩君といると日々新しい日本が見えてくるようで新鮮な気持ちになる。まぁ、それがいいか悪いかは置いといて。


そして、残念だが俺はおでん星人に脳味噌を侵されった覚えもない。コンビニであるヘブンイレブンのおでんを毎日せっせと食べていたのは、Reポイント付与キャンペーン対象の商品であったから食べていただけに過ぎない。


定価213円のおでんセットを購入した場合、通常であればReポイントは2ポイントしか付与されないが、期間中だった時は、なんとプラス2ポイントも貰えちゃうのだ!!


倍。もう一度言おう。


倍だ。


Reポイントを集めていない人からすればどうでもいいかもしれないが、俺からすればお祭り騒ぎ以外の何物でもない。


期間中の3日間の朝、昼、晩、夜食の4食はすべておでんにした。これで、4ポイント×4食×3日間で合計48ポイントを捻出することに成功したのだ。


ちなみに、

この48Reポイントをオークションで購入しようとした場合、相場としては12,000円前後である。


Reポイントは、100円の買い物をすれば1ポイントを付与されるため、単純計算でいうと100円×48ポイントなので、4800円となる。


が、現実では1万円以上の値で取引されている。


そう。Reポイントにはすでに社会現象が与えた付加価値が存在しているのだ。現金で購入するだけで手早くReポイントを入手できるというメリットが、商売として成立しているのだ。


取引ができる、このReポイントは生き物のように化けたのだ。


お金を生むツールとして。


そして、俺が今目指している神坂屋が発表したサービス「エターナルス」の利用に必要なReポイントの数は、2000万ポイントだ。


通常のReポイントユーザーであれば、一生かかっても到達しえない数値だ。


しかし、俺は目指している。


(ただ)の、しがないサラリーマンで、なんの取り柄もないその辺にいる男である『俺』がだ。


俺はオークションで他人からポイントを購入できるほど財源が潤っているわけではないし、そんな邪道な稼ぎ方は俺のプライドが許さない。


「いらっしゃいませ。ご注文は?」

「俺、牛丼並で。先輩は何(しょく)るッすか?」


ポイントを稼ぐうえで、俺が守るルールはただ一つ。


今俺たちは昼飯を食べに牛丼屋に来ている。そして、この店は今日からReポイントのキャンペーンが始まった。


「まず、俺はこの券を使う」


俺が店員に提示したのはスマホの画面。俺のスマホ画面に表示されているのは『新生活!!わくわくキャンペーン』と題されたページであった。


これは、新生活を迎える社会人や学生層をターゲットに行われているキャンペーンであり、通常、牛丼1杯320円のところが、半額の160円で食べれちゃうのだ。

だが、俺はこんなところでは終わらない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ