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序章 ポイントは男のステータス

「せんぱ~い!!仕事お疲れさまッス!!」


元気よく俺に絡んでくるのは、入社2年目の後輩君だ。俺は入社して10年目という事もあり、この元気な後輩君が昨年の春に入社してきた時に、指導係として任命されたのだ。


後輩君は入社早々から、今のようなテンションで絡んでくる。


「俺頑張っちゃう系の人間なんで、まじよろしくッス!!」といきなり握手を求めて来たときは、今どきの若者との年の差を感じずにはいられなかった。


元々、俺が後輩君の指導係として自薦したわけでもなんでもなかった。指導係だなんて面倒で誰もやりたがらなかった上、新人が育たなかった場合、指導係の評価まで下げられてしまうのだ。


指導係を引き受けても、得することは何一つないのだ。


俺の努めている会社はどこにでもある弱小のコンサル会社だ。入社する若手も多い反面、離職する若手も同じように多い。


まぁ、こんな会社に長い間いても明るい未来だなんてないだろうし、転職するための踏み台か、結婚して家庭に入るまでのつなぎぐらいにしか思っていない連中は多い。


俺も、ニートのまま路頭に迷うのが嫌だから、20代後半の時に、職なしの俺でも雇ってくれる企業を探していたら、たまたま現在勤めているこの会社を見つけただけで、この会社に特別深い愛情もなければ、やめる理由も特にない。


そんな中途半端な状態のまま年を重ね、気がつけば今年で入社10年目、37歳独身の俺が出来上がってしまったというわけだ。


同期のメンバーというと、この会社より福利厚生が整っている別会社に転職、結婚相手を見つけるなり円満退職するなどで、徐々に同じ立ち位置の仲間がいなくなっていった。


残った職場の人間を見渡しても、妻子持ちのパパばかり。新人君の育成に時間をかけていられるような暇そうな人間はいない。


結局、独身の俺以外に新米社員の指導係という貧乏くじがお似合いな人間はほかにおらず、渋々引き受けたというわけだ。


もちろん『タダで』引き受けるほど俺はお人好しでもない。営業部長が俺の趣味を知った上で交換条件を提示してきたのだ。


「新米の指導係になってくれたら『Reポイント』をやろう」と。


Reポイントとは、この現代社会で広く使用されているポイントであり、コンビニではもちろん、外食や書籍の購入など多くの売買行為で受け取ることができるポイントである。


Reポイントも例外なく、1ポイント=1円として使用でき、利用者はたくさん存在する。


ただ、このようなポイントは、この御時世、珍しくともなんともなく既存の類似ポイントは山のように存在している。


だが、Reポイントは他とは大きく違う点がある。それは、譲渡が可能なのだ。双方の合意があれば、取引材料として使用することが可能ということだ。


現在、Reポイントを巡って日本では大きな変動を遂げた。譲渡可能になったことで、取引の場面で使用されるケースが増えた。


それにより、Reポイントの知名度は上がり、今最も熱いポイントとして君臨している。


そんなReポイントを上手く活用しようと、多くの企業がアイデアを出し注目をあびようとしている。


その取組の1つとして代表的なサービスがある。


それは、Reポイントを保有している者への優遇措置サービスだ。


例えば、1000Reポイント保有していると、全国展開しているドラッグストアで、10%の値引きをするところもあれば、5万Reポイントを保有していれば、おかず1品無料サービスをする牛丼チェーン店まで現れた。


ポイントを使用せずとも『保有しているだけ』で優遇されるのだ。


このサービスが話題を呼び、Reポイントは瞬く間に知名度をあげ、ポイント業界のトップの座に着いたというわけだ。


そして、話題沸騰のReポイント業界に驚きのサービスが参入することになった。


高級マンションを手掛ける最大手『神坂屋』が超高ポイント保有者に対し、保有ビルの最上階を無料で貸すというプロジェクトを開始したのだ。


ビックプロジェクトの名は『エターナルス』


エターナルスがある場所は首都のど真ん中。東京駅から歩いて数分のところにある巨大オフィスビルのワンフロアだ。


そこには、無料のドリンクはおろか、個室やバーまで存在している。もちろん、その空間で行われているサービスはすべて無料。一切の追加料金は発生しない。更に、宿泊することも可能な為、世間の注目の的となった。


居心地の良さからついた名が「現在社会の竜宮城」


この最高の居心地空間を手に入れるため、Reポイントを集める人間がたくさん現れるようになった。


このように、ポイントを集めている人を『ポーター』と呼ぶようになり、流行語にも選ばれた。


俺もポイントを集めている人間の一人であり、Reポイントを集めている人『リポーター』である。



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