江戸へ
各地を広く騒がせていた盗賊団捕縛の報は江戸にもすぐに知れ渡り、本宮家の株は大いに上がった。
そして、盗まれた米のほとんどはまだ大黒屋の倉や店にあったので、それと大黒屋の財産で、どうにか各家中も収まりを見せそうだ。
この飢饉の折り、方々の家中に恩を売る事も出来、また、上様直々に本宮が褒美も賜った。
そして、烏丸衆は佐奈の私兵扱いで家中に加わった。じきに国許へ来るのでそこで待つ事になるが、桔梗と楓の2人が、侍女として江戸屋敷にも上がる事となり、江戸へと同行していた。
「久々の江戸な気がするなあ」
のんびりと言う宗二郎だが、佐奈は半泣きだった。
「久々に、ばあやの本気の雷が落ちた」
秀克と光三郎がプッと笑う。
「お花も和歌もつまらん」
「まあまあ」
「替え玉を務めてくれた侍女もばあやも、気が気じゃなかったと思うしな」
「まあ、冷や汗ものだよな」
琴やら何やら色々と課題を出されてしまったが、まあ、仕方が無いとわかってはいるのだ。それでも、愚痴りたくなる分量なのだ。
「まあ、がんばれよな、佐奈」
宗二郎は気楽に言って、
(ああ。これでしばらくは寿命の縮む思いをせずに済む)
と思っていた。
「せっかくだし、楓と桔梗に忍びの術を教えてもらうか」
宗二郎、秀克、光三郎、皆がお茶にむせ、桔梗と楓はホホホと笑った。
しかし、彼らはまだ知らない。この本宮家に、新たな事件が迫っている事を。
そして、その声が響き渡った。
「一大事、一大事でござりまする!!」
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