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その26〜その30
私の影がどこかに行ってしまったので、日に日に自分の存在が薄くなっている。
私とすれ違う一瞬だけ、老若男女誰もが同じ赤いコートの女の姿に変わる。
自宅の玄関に毎日落書きされている奇妙な記号を調べてみると、異国に伝わる悪魔を封印する紋章だとわかった。
オレオレ詐欺の常習犯だった彼は、「電話から自分自身の笑い声が聞こえた」というメモを残して行方不明になった。
子供の頃に友達を埋めた場所を掘り返してみると、あの時のままの彼がぱちりと目を開けて、「待ってたよ」と言った。