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その1〜その5
十二歳の姿のまま眠り続ける僕の姉は、自分の見ている悪夢を僕にだけ一行の文章で教えてくれる。
踏切の向こうにいるのが去年死んだ友人だと気づいた瞬間、電車がけたたましく通り過ぎて行った。
名前を呼ばれて振り返ったら、何匹もの猫が集まってじっとこちらを見ている。
産まれる前に亡くなった父の写真は顔の部分が全てぼやけているので、私は未だに父の顔を知らない。
妻が子供の頃から大事にしているぬいぐるみの中には、誰のものとも知れない長い髪の毛が詰まっていた。
前世で死別して結ばれなかった恋人の墓を暴くと、今世で私が殺した女の遺体が出て来た。