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第八話『禁忌の剣・ジギタリス』

 「リヌスさんが人を殺したことがある?」


 アーラの言ったことを繰り返すと、無言で頷く。

 どういう事なのか分からずに、アーラの肩を掴み近づいて聞いた。


 「ど、どういうことなんだよ!何か知ってるのか?」


 「う、うん……だけど今のパテルは怖いよ、肩痛いよ」


 震える手で掴んでいた肩を見ながら、アーラは言った。

 手に力を抜いて、聞こうとするがもう言いたくなくなってしまったようだ。アーラはk他を落とす俺を見て、


 「気を付けて……ね」


 「あぁ分かった、今度来たとき言いたくなったら教えてくれよな」


 何も言わずに頷き手を振るアーラ。

 そのまま倒れるようになり、目が覚めると目の前にはコウヤがいた。

 コウヤは眠る俺を上から見て、目覚めたのを確認すると、


 「やっと起きたのかい、パテル君?」


 「な、何でコウヤがここにいるんだ……」


 その問いに何かを考える素振そぶりを見せるコウヤ。

 だが自己完結したのか、頷いてから、


 「まあここにいる理由はなんだっていいじゃないか、それより無事にポワゾンフィールドに着いたんだねおめでとう」


 「お、おう」


 「それで花龍については聞けたのかい?」


 花龍という言葉を聞き、まだ聞けてないことを隠すため黙る。

 分かりやすかったのか、すぐにコウヤは笑いながら、


 「まだ聞けていないようだね、できるだけ早く聞いたほうがいいと思うよ」


 「な、何でだ?」


 「リヌスという男に会っただろ。彼奴は危険だ」


 リヌスが危険と言われると、頭の中でアーラに言われた子を思い出す。

 『リヌスという奴にはきをつけて!、あの人は人を殺したことがある』という言葉が離れなくなる。悩んだ顔をしていると、


 「何か君も気づいてるみたいだね、とりあえず頑張れよパテル君。それじゃさよならだ」


 そう言うと消えていくコウヤ。

 何の用事だったのだろうか、来た趣旨も分からずに去って行ってしまった。


 起きたのは夜中だったのか、周りは真っ暗で誰もが寝ている時間である。コウヤのせいで眠気がなくなってしまい、外に出てみると誰もいない。誰もいないのに、不気味さを感じたが歩いていると人影が見えた。こんな夜中に起きている人がいるのかと驚きながらも、その男は何か独り言を言っている。

 耳を澄まし陰に隠れ、気付かれないように聞くと、


 「私は間違っていたのだろうか……でもそれも全てポワゾンフィールドのため」


 その声はリヌスだった。何か悔やんだ表情でぶつぶつと言っている。

 何かを反省しているのか、立ちながらポワゾンフィールド見渡している。


 「花を纏う龍の出現には、百人の人の血が必要だった……でもしょうがない、しょうがないことなんだ」


 花を纏う龍の出現?

 ……もしかして花龍のことを言っているのか、それに百人の人間の血ってどういう事なんだ。意味は分からないが、花龍に関係があるならと聞き続ける。

 自分で自分自身に、言い聞かせるようにリヌスは、


 「私は悪くない、私は自分に罪があるとは思わない。()()()()()()()って私は褒められるようなことをした人間だ……」


 人を殺した……殺したって、しかも百人も殺したっていうのかよ。

 そ、それじゃ花龍を出現させたのってリヌスなのか、そう思った瞬間に心臓の鼓動が聞こえるほど大きくなるのを感じた。その気持ちは恐怖とはまた違った何かで、自分が話していた人間が百人の人間を殺したという事実に、動揺していたのだ。


 この場から立ち去りたい、だが足は震えて動かなくなっていた。立ち去りたいと思っていると、リヌスが近づいてくるのが分かった。


 慌てて動こうとしたところで、物音を立ててしまう。しゃがみ込み小さくなり隠れるが、きづかれているのか、一直線にこちらに向かう足音が聞こえる。

 迫る足音にもう駄目かと思い、目を瞑る。すると目の前に立ち止まる音が聞こえ、目を開けると、


 「こんなところで何をしているんだいパテル君?」


 笑顔で語りかけるリヌス。

 何故か笑顔のリヌスに、不気味さを感じつつ平然を装い話す。


 「少し目覚めて、歩いていただけです。それにしてもポワゾンフィールドは、広いですねー」


 「そうかい?それなら良かったが、何か聞いてはいなかったかい?」


 「う、うーん何のことでしょう。それじゃ俺はまだ眠いので、エトワのいるところでまた寝ますね」


 そう言って帰ろうとしたところで、リヌスに肩を掴まれる。

 肩を掴まれた手に力が入りながら、リヌスは言葉を発する。


 「聞いていたんだろ……?」


 「……はい」


 答えると諦めた表情をするリヌス、その表情を見て想像していたのは違い安心する。

 だが安心したのも束の間、振り返ると顔が暗くなり低い声で話し出す。


 「聞かれちゃったか、じゃあしょうがないよね……」


 リヌスは剣を取り出しながら言った。

 その剣は、鐘の形をして紫色である。


 「禁忌の剣・ジギタリスいくよ」


 ジギタリスと呼ばれるその剣を、向けて走り出すリヌス。


 「そんな綺麗な剣にも毒があるのか」


 「いいのかい、そんな事を言っていたらこの剣に殺られるよパテル君」


 鐘の形の剣が近くまで近づいてくる。避けようとするが、剣の先に細長く空いている穴を見ていると吸い込まれる気がした。

 剣の中を見ていると、近づいてくるリヌスが笑い言った。


 「この剣の中を見たとき、君の負けだ」


 と言った時には剣に細長く空いた穴を見てしまう。

 そこには綺麗な周りとは違い、紫の剣の中には黒い斑点模様が広がっていた。

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