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第四話『毒の剣の民』

 「それで君たち二人は、このコウヤを運営だと思っているのかい?」


 俺とエトワは無言で頷く。

 その二人を見て、目を逸らしながらもコウヤは、


 「まあ運営かどうかは内緒だ、それよりも君たちが気にっているのはあの特別クエストだろ?」


 「あぁその通りだ」


 エトワが答えると、コウヤは悩んだ表情になる。

 そして視線をエトワではなく俺に向けながら、


 「まずこのクエストの意味としては、君の青薔薇の剣それが邪魔ということさ。そしてエトワ君、君の剣に関しては何らイレギュラーな存在ではない」


 「それじゃなぜ、僕も巻き込まれている!」


 「その理由は簡単さ、君が邪魔だからだよ」


 その回答に動揺するエトワ。その様子を見たコウヤはさすがに申し訳ないと思ったのか、頭を下げる。

 だがその後に何故か追い打ちをかけるように、


 「そんな顔をしても事実は事実だ。悪いが君たちにできることは、逃げることただそれだけさ」


 「僕達に残された方法はそれだけなのか、他に方法は?」


 顎に手を当てながら眉を顰めるコウヤ、無くはないといった表情にエトワは詰め寄る。

 その圧に負けたのか、頭を抱えながらコウヤは小さな声で周りに聞こえないように、


 「一つだけ方法はあるやも知れない……それは花龍だ。花龍を倒せば何かわかるかもな」


 「花龍か、あんなものは迷信だと思っていたが……」


 「信じないならそれでもいい、ただ君たちにそんな余裕はないだろ」


 エトワと目を合わせる。言われた通り俺たちに残された道は数少ない、その中でも希望がありそうな情報を信じないわけにはいかない。

 ただ一つだけ疑問に思う、エトワでも知らないような花龍は何処にいるのか。そのことを、コウヤに聞こうとする。


 「だけど俺達は今自由には動けない、その中で矢鱈に花龍を探すのはいくら何でも目立つ、何か花龍の居場所については知らないのか?」


 「うーん、パテル君の頼みなら教えてあげよう。花龍については僕よりも詳しい人物がいる、それは毒の剣を持つ民さ」


 毒の剣、その言葉にはとても抵抗があった。何故なら、ほんの少し前に自分はその毒の剣を持った人間に殺されかけたからである。

 そんなことをコウヤは知る由もなく、淡々と話すが途中で俺の顔色について気になったのか顔を覗くようにして、


 「もしかして毒の剣を持つ者に会ったことがあるのかいパテル君?」


 「はい、殺されかけました……」


 殺されかけたといった瞬間に、コウヤは口を大きく開けて笑った。

 笑うコウヤを睨むと、まじめな顔に戻り、


 「いやー済まないパテル君、まさか殺されかけていたとは知らなかったからね。だけれど自分を殺そうとした人間にこれから会いに行くなんてパテル君も大変だなー」


 コウヤの言葉は一つ一つが他人事だった。確かにコウヤからすれば、他人事で済む話かもしれないが殺されかけたことへの、反応の仕方は腹が立つ。

 そんなことを思いながらも信じる男が、目の前にいるコウヤしかいないことにも腹が立っていた。


 「まあそんな怒った顔をしないでよパテル君。毒の剣の民がいる場所は教えてあげるからさ」


 そう言うとコウヤは紙を出して、その紙を広げた。

 紙には地図のような図が書いてあり、コウヤが指を置いて、


 「そうそうこの辺りかな、ここがポワゾンフィールド。毒の剣の民が住んでいるところさ、そこに行って君たちは花龍の居場所について聞いてくるといい」


 地図で指をさした場所はジャフダンワールドを北に一直線とわかりやすい場所ではあった。だがこのジャフダンワールドの最北端に位置するポワゾンフィールドまでの道のりはどのくらいかわからなかった。

 地図を見ながら考えていると、コウヤは口を開き、


 「それじゃ僕はこの辺でさよなら……頑張ってねパテル君とエトワちゃんかな」


 と言い残して姿を隠し、何処かへと行ってしまう。

 地図は机の上に残されていたため、その地図を持ちコウヤのテントから出た。


 「とりあえずは北を目指すしかないみたいだな、これからもよろしくなエトワ」


 するとエトワは、顔を赤らめながら、


 「そ、その僕が女だからと気付いていままでと態度は変わらないでもいいからな……?」


 「お、おうわかったよ。でも時には女性としても扱わないと駄目だろ」


 「ぼ、僕は大丈夫だ。そ、そんなことより早く北を目指すぞ!」


 自分から意識をするなと言ってきたのに怒られてしまった。これからどうなるか、不安しかない。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 枯れ果てた地に荒んだ表情で、立つウェネーム。

 表情には悔しさが出ていた、その横にいる神の短い女性がウェネームに話しかける。


 「そんなに剣を奪えなかったのが悔しいの?」


 「イオスにはわからないだろうが、悔しいよ」


 イオスと呼ばれた小柄な髪の短い女性は、困った顔になる。

 沈黙の後イオスは口を開い言った。


 「うーん、そんなに悔しいならさ今度は僕と一緒に行こうよ」


 「それもいいかもしれないが、奴は強いぞ」


 「奴っていうのは、青薔薇の剣を持った子の事かな?」


 その問いにウェネームは、首を振った。

 首を振られて、疑問の表情を浮かべながらイオスは、


 「それじゃ、それ以外に強い人がいたの?」


 「あぁ、エトワっていうやつだ。あいつは戦いに慣れている……」


 「へぇウェネームがそう言うってことは相当の実力者かな。ねぇねぇ僕一人で見に行ってもいいかな」


 疲れた表情でウェネームは小さく頷くと、イオスは笑顔になる。

 消えていこうとする間際にイオスは、


 「それじゃイオスちゃん頑張ってくるね!」


 「気を付けろよ……」


 そう言って何処かへと行ったイオス。

 見送った後ウェネームは壁にもたれかかりながら寝そうになっていると、背後から誰かが近づいてくる。背後に気づき剣を構えて後ろを振り向くと、コウヤがいた。


 「おっと危ないなー!当たってたら死んじゃうところだったよ」


 「お前だったか驚かすな……」


 「随分と疲れてるみたいだけど大丈夫かなウェネームちゃん」


 唐突なちゃん付けに怒るウェネーム。

 怒って殴りかかるも、コウヤは飛んで躱した。


 「ごめんごめん。ちゃん付けは嫌だったかな?」


 「そんなことはどうでもいい、それよりお前が来たってことは何か用があるんだろ」


 ウェネームが暗い表情で言うと、いままで笑っていたコウヤもまじめな表情になる。

 そして低い声でコウヤは、


 「君たちもあまり勝手なことはしないほうがいいよ」


 「何を今更、私たちはお前などに何か言われたくらいで引き下がらないぞ」


 「そっかじゃあ…………」


 コウヤの目は冷たくなり、剣をウェネームの頬に近づける。

 緊張感に押し潰されそうになるが、何とか我慢しているウェネーム。だが我慢するウェネームの耳元でコウヤは、


 「……死ぬかい?」


 死ぬという言葉に怖がるわけではなく、ウェネームはコウヤの威圧に押し潰されそうになる。

 コウヤは怯えるウェネームを見たとたんに笑顔になり、


 「なーんちゃって、ごめんね驚かせちゃって。それじゃ僕は帰るよー」


 「おい、お前は何しに来た」


 帰る寸前のコウヤを引き止めた。

 ウェネームの声に振り返り思い出したのか、頭に手を当てて、


 「そうだそうだ伝えないとね。あの二人がここに来るよ」


 「あの二人って……まさか」


 「まあ君なら考えればすぐわかるでしょ。それじゃバイバイ、ウェネームちゃん」


 風のように来て風のように去ったコウヤを見ながら、頭の中ではここに来るであろうパテルとエトワのことを考えていた。



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