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第一話『聖剣・青薔薇の中の少女』

 辺りを見渡すと、フィオーレオンライン特有の自然をモチーフとした、建物が立ち並んでいる。

 つたが巻き付いている煉瓦造りの家や、花がそのまま家になっていたりと、現実世界ではあまり見られない建物ばかりだ。


 まず何をするかは説明書をあまり読まずに来てしまったため、分からない。

 何をしたらいいかわからないため、通りすがりの人に話仕掛けることにした。


 「あの、すいません」


 話しかけたのは桜色の髪を二つ結びにした女の子だった。

 その女の子は、嫌な顔をせずに振り返り、


 「何ですか?」


 「初めてこの世界に来たんですが、何をしたらいいか……」


 「この世界では何かすることは決まっているわけじゃないから、とりあえず来たばかりならその手に持っている剣に宿っている言葉を、聞いてきたらいかがかしら?」


 「宿っている言葉?」


 何のことかさっぱり分からずに、言ったことを繰り返す。

 するとその女の子は困った表情になり、


 「本当に始めてみたいね、私はリーナ案内するからついてきて」


 「お、おう」


 そう言うとリーナは手を引っ張り連れて行こうとする。

 ジャフダンワールドの風景を見ていると、あっという間に目的地に着いたようで、


 「ここが剣のことが色々と分かる言葉屋」


 「ありがとうリーナ!」


 「いえいえ私も最初は迷ったから大丈夫、それよりあなたの名前は?」


 「俺はパテル、また会うことがあったらよろしく」


 名前を言うと、嬉しそうにリーナは頷いて顔をあげて、


 「パテル……覚えておくわ。それじゃ」


 手を振って走り去っていくリーナ、そのリーナに手を振り返す。

 テントのような感じでできている小さな言葉屋に入ろうとする。


 「失礼しまーす」


 入ると中には一人の髪の長い青年がいた、その青年は俺の持っている剣を見て口を開いて驚いた。

 その様子に何を驚いてるの分からなかったが、剣のことについて聞きに来たので聞くと、


 「あのすいません、ここで剣に宿っている言葉を聞けっ」


 と話し始めたところで割り込むようにその青年が話しかけてきた。


 「ぼ、僕は言葉屋のコウヤだ、よろしくね。それは君の剣かい?」


 「そうですけど……」


 興奮した様子でコウヤは聞いてきた。

 その問いに答えると続けてコウヤは、


 「そうなのか、君名前は?」


 剣を差し出せと言ったジェスチャーをしながら、名前を聞いてくる。

 しょうがなく剣を渡し、


 「俺はパテルっていいます」


 「パテル君か、それにしてもこんな剣を授かるなんてパテル君は凄いなー」


 「そうなんですか?」


 聞き返すと愚問だといった表情で茶色の髪をかき分け、コウヤは剣を返しながら言った。


 「そうなんですか、じゃないよ‼青い薔薇の剣なんて本来は存在しないはず、存在しないはずの剣を見て驚かずにはいられないさ」


 「存在しないはずの剣なのに……何故俺はこの剣をもっているんですか」


 「それが分かったら、もう少し冷静に対応したよ。まあでもその剣に直接聞けば、少しは分かるんじゃないかな」


 ニヤリとしながら、コウヤはそう言った。

 俺のこの剣に直接聞く、意味は分からないがやれることはやったほうがいいか。コウヤの言うことに嘘はなさそうだしな。


 「どうやってこの剣に聞くんだ?」


 「力を抜いてその剣を持ってみろ」


 「分かった……」


 真剣な表情でコウヤは言うと、その言葉に従い片手で剣を持つ。

 すると青い光が溢れだすように広がり、その光が体を包んでいく。光に包まれていくのを見たコウヤは笑顔で、目を細くしながら手を振っていた。


 「戻ってきたら話を聞かせてもらうぞ、パテル君」


 その声を聞いて目の前が何も見えなくなる。

 ようやく目が開けれるようになると、眩しくて最初は何も見えないが段々と周りの景色が見え始める。

 そこには多くの薔薇があり、薔薇に包まれるように立っていた。薔薇をかき分けながら歩いていると、薔薇の中に一際目立つ青色のバラが密集している場所があった。

 その中心には薄い青色の髪をした少女が、眠るように横になっていた。その少女に気づき駆け寄ると、どうやら起こしてしまったようで起き上がる。


 「だ、だれ……」


 首をかしげながら寝起きの顔で、聞いてきた少女に、


 「俺はパテルだ、君はここで何をしているの?」


 「パテル……よろしく。わたし?わたしはここで寝てる……」


 何もわからなそうな表情で、周りの薔薇を見ながらその少女は答えた。

 地面にも届きそうな髪を少女は両手で持ち遊びだす。自由気ままな少女に、


 「遊んでるところ悪いんだけど、君の名前は何?」


 「ん?わたしの名前は……青薔薇だと思う」


 「そっか青薔薇か、俺の剣と一緒だな」


 「それはそうだよ……その剣を持っているから、この世界に入って来られたんだと思うから」


 その言葉の意味に気づき、この世界は青い薔薇の世界だということを理解した。

 すると青薔薇ははしゃぎながら、


 「その剣はわたしそのものだから、大事にしてね」


 「う、うん分かった。それより青薔薇っていうのも素敵な名前だが、少し呼びにくいから呼び方変えてもいいかな?」


 「気に入ったら……いいよ」


 気に入ったらいいと言われ、慎重に名前を考える。

 ありがちな発想かもしれないがこれでいいと思い、青薔薇に新しい名前を言った。


 「青薔薇の最初と最後を取って、アーラっていうのはどうだい?」


 その名前を聞いて、後ろを向いてしまった。

 後ろ向きになった青薔薇を見て、名前が気に入らなかったのかと思い優しく肩をたたき謝ろうとする。


 「その……あまり気に入らなかったかな」


 そう言うと途端に振り返り、顔を赤くして首を振りながら、


 「んん、気にいった…………アーラって名前気にいった」


 「そうか良かった、これからよろしくな」


 気に入った様子のアーラは、自分の名前を何度も小さな声で言っていた。

 そのアーラに向かいここに来た理由でもある、剣のことについて聞く、

 

 「アーラ、この件について聞いてもいいか?」


 困った顔をしたが、頷いた。

 頷くとアーラは小さな声で、


 「その剣の名前は、聖剣・青薔薇。それ以外は何も……」


 「そっか、ありがとな」


 お礼を言うと、次に宿っている言葉について気になった。

 そのことを聞こうとしたところで、アーラは薔薇の中で横になり寝てしまった。


 「あっ、寝ちゃったか……うっまたこの光か」


 アーラが寝るとまた光に包まれる。


 「戻る時もこうなるのかよ」


 目を開けると目の前には笑顔でコウヤが待っていた。

 コウヤは俺が戻ると、凄い喰いつきようで前のめりになり、


 「さて、どんな収穫を得たか聞こうか」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 暗い場所、そこには自然はなく植物は全て枯れ果てていた。薄紫の肌をした人型の生物が二人で話している。

 その手には変わった形ではあるが、何かの花の剣であるようだ。


 「さっき情報が入ったよ」


 髪の短い女性がもう一人の髪の長い女性に話しかける。


 「何の情報だ?」


 「この世界に来た新しい人の情報だよー」


 「そんなものは日々増え続けているのだから一々伝える必要はないと言っただろう」


 「それはそうなんだけどさ、何せ今回来たやつちょっと変わっててさ」


 その言葉を言うと長い髪の女性の目つきが変わった。

 そして口を開き聞くと、


 「なにが変わってるんだ?」


 「剣だよ、青い薔薇の剣なんだ。あれは本来存在しないはず、あの剣があれば何か変わるかもよ」


 「そうかその剣でもしかしたら私たちも……面白いな」


 歯を見せるように笑うと、髪の短い女性は背筋に物凄い寒気を感じていた。

 凄い威圧の長い髪の女性は、


 「私はそいつの剣を奪いに行く、お前は来るか?」


 「僕はやめておくよ……気を付けてねウェネーム」


 ウェネームと呼ばれた髪の長い女性は、髪の短い女性の言葉を聞かずに青い薔薇の剣を、所持している者を探しに忽然と消えた。




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