表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

第十二話『未完成な世界、フィオーレ・オンライン』

 「お前がこんなところで死んでどうする!」


 目の前には、イオスの剣と自分の剣で花龍の攻撃を受け止めるウェネームがいた。

 ウェネームの声が自分の中に入る、受け止めるウェネームの負担を減らすためにエトワは自分の力を使い、横から花龍に攻撃する。


 「星の騎士たちよ、花龍に向かえ!」


 だがその攻撃は、何度しても効いていない。

 それどころか、攻撃をされた花龍は怒り力を増すばかりだ。


 「うっ……僕の力じゃ倒せないのか」


 エトワが後ずさりする。

 格の違う花龍に、エトワとウェネームは攻撃を防ぐことにばかり集中してしまう。


 「おい、何をしているんだパテル!」


 「パテル、僕達と一緒に戦って」


 今度は二人の声が自分の中に入ってくる。ライフゲージの減っていく二人を見て、助けなければいけないという気持ちがこみ上げてくるが、足は動かない。

 すると、花龍の後ろにいるコウヤが、


 「おいおい、何をしているんだいパテルくーん?このままじゃ、二人とも死んじゃうよ」


 そんなことは分かっている、だけど何故か足が動かない。

 花龍は強大な力を持ち強いが、そのことに怯えているわけではない。コウヤを倒すということに、躊躇しているわけでもない。

 それじゃ何故、俺はここから動けない。


 「パテルっ!」


 ウェネームの声がした。


 「パテル!」


 エトワの声がした。


 「パテルくーん?」


 コウヤの声がする。


 目を見開き目の前を見ると、そこにはアーラが立っていた。

 アーラは、俺の前に立ち厳しい表情をしていた。


 「何で何もしないのパテル!」


 「……分からないんだ俺にも」


 そう答える俺に、アーラは手を差し出す。

 差し出せれた手を握ると、今まで起きたすべてのことが流れていく。記憶の中を遡るようなその世界では、自分以外の記憶もあった。

 毒の民の記憶やエトワの記憶、それ以外にも多くの記憶が自分の中に入ってくる。

 

 「アーラ、これは一体何なの?」


 「パテルも理解している通り、みんなの記憶だよ……」


 「何でみんなの記憶を俺に……?」


 目を見て笑うアーラ。

 その表情には、何の濁りもない純粋な気持ちしか含まれていなかった。


 「それはねパテル……この世界は不安定で脆くて、まだ未完成だから。パテル貴方にまたこの世界を再構築してほしいの?」


 「ど、どういうことアーラ!それじゃ丸で、この世界が終わっちゃうみたいじゃないか」


 無言で頷くアーラ。目には涙を浮かべ悲しげな表情も浮かべている。

 涙を拭い、アーラは、


 「その通りだよパテル、花龍を倒したらこの世界は崩壊してしまう」


 「えっ花龍を倒したら?」


 「そう……まだ花龍が存在していなかった時は、花龍に頼ることはなかった。だけど花龍の出現により、このフィオーレ・オンラインの世界は花龍に頼ることを選んだ」


 フィオーレ・オンラインが花龍に頼っている。

 それならと、頭の中ですぐに思いついた考えをアーラに言う。


 「花龍を倒したら崩壊してしまう……それなら花龍を倒さなければいいんじゃないか?」


 「そんなことは分かってるよパテル。だけれど、貴方達が倒さないでも花龍はいずれ消滅する日が来る。だから、貴方には新しいこの世界を作ってほしい!」


 新しいこの世界……その言葉の意味を理解はしたくなかったが、この状況では理解せざる終えなかった。

 アーラの願いに頷くと、笑顔を見せて喜んでいた。


 「それじゃ、パテル。私を思う存分使って、そうじゃないと花龍も倒せないしコウヤにもきっと敵わない」


 「なあ一つ聞いてもいいか、アーラ?」


 何かと思いアーラは不思議そうな表情をする。

 俺が口を開く、


 「コウヤは一体何者なんだ、アーラは知っているのか?」


 首を横に振るアーラ。

 否定した後アーラは、


 「彼については私もわからない、だけれど私と同じで彼もまたイレギュラーな存在なのかもしれない」


 「そう……なのか。コウヤもきっと倒すことになるんだよな」


 「大丈夫、どんなことがあっても最後まで私は一緒にいるよ」


 というと横にアーラは並び、手を繋ぐ。

 前を向き二人で目を閉じて、開くとそこには花龍がいた。花龍の横には、倒れるエトワとウェネームがいた。ライフゲージは何とか残っている程度だった。


 「うっ……僕死んじゃうのかな」


 花龍がエトワに噛みつこうとしたところで、


 「ごめん遅くなってエトワ」


 花龍の牙を、聖剣・青薔薇で砕く。牙を折られた花龍は暴れ、咆哮する。

 暴れている隙に、エトワとウェネームを担ぎ安全な場所に寝かせる。

 横にした後、すぐに花龍のほうへ向かおうと立ち上がると、エトワは自分剣を差し出し、


 「イフェイオンを持っていって……」


 「な、なんでこれは君の大事な剣だろ?」


 「そう……だけど。少しでも役に立ちたいの、だから持っていって」


 頷いて返事をすると。

 エトワは、笑みを浮かべた。

 急いで花龍のところに行くと、コウヤが俺のほうを見て、


 「何か吹っ切れたみたいだけど、実力は変わってないんだから花龍は倒せないよ」


 コウヤの問いに無言を貫き通した後、花龍の右前脚を切り落とす。

 周りの自然に血が吹き飛ぶ、攻撃が聞いていることに驚くコウヤ。そのコウヤに俺は、


 「確かに実力は変わってないかもしれない、だけど俺の決意は変わった!」


 驚き続けるコウヤを尻目に、花龍に傷を与えていく。

 花龍の悲しき悲鳴が聞こえるが、その手を緩めることはない。

 速さに追いつけずに、叫び続ける花龍はとうとう倒れその場で暴れだした。


 「これで終わりだああぁぁぁあ!」


 花龍の心臓を貫き、止めを刺すと辺りには血飛抹が飛び散った。

 その地はやがて、赤から緑に変わり自然となり多くの花を咲かせた。

 花龍を倒されたコウヤは、その場で跪き顔は曇っていた。コウヤに向かい剣を向けて、


 「花龍は倒した、これで最後にしようコウヤ」


 花龍を倒した事で不安定になり、フィオーレ・オンラインの世界は揺れ、崩壊が進んでいた。

 揺れるこの世界で、コウヤとの最後の戦いが始まる。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ