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第十一話『動揺する心』

 「な、何故だイオス!」


 ウェネームは、イオスに向かいそう言った。イオスのライフゲージを見ると、もうほとんど無くなったっていた。

 イオスは自分に刺さる剣を、手で押さえるようにしながら、


 「ごめん、ウェネーム僕は君に迷惑をかけてばかりだね……」


 力のない声で言う。目を合わせることができないウェネームの目からは、涙が流れていた。

 見せたことのない表情で、ウェネームは自分のしたことに後悔する。

 だがそんなウェネームに、イオスは笑顔で、


 「ウェネームのそんな顔初めて見たな……君でもそんな顔するんだね」


 「馬鹿にするなイオス、それよりその血どうしたらいい」


 慌てた様子で周りを見回してから、俺の顔を見るウェネーム。

 声をあげて、どうすればいいのかという視線で訴える。


 「と、とりあえず剣は抜かずに、イオスのことを横にしてあげるんだ」


 「わかった、これでいいか?」


 ウェネームは自分にもたれかかるようになっていたイオスを、優しく横にして仰向けの状態にした。

 それでもまだ、慌てるウェネームはどうしたらいいかとまた問いかけるが、イオスはウェネームの手を力強く握り、


 「もう無理っぽいから、大丈夫だよ。イオスちゃん……もうちょい体力あると思ったんだけど意外となかったみたい」


 「何をあきらめたような口を聞いている!」


 小さな手に温もりがなくなっていく。

 イオスはウェネームから、俺に視線を移す。


 「短い間だったけどパテル、君のこと案外気に入ってたよ……」


 「イオス……!」


 次に、エトワにも視線を移して小さな声を出す。

 その声が聞こえるように、近づくエトワ。


 「エトワ……君はウェネームと仲良くしてあげて。素直じゃないだけで、ウェネームだって案外いいところもあるからさ」


 「あぁ分かったよ、イオス」


 全員に視線を送った後、再びウェネームに視線を合わせて。

 手を握るゑネームの顔を見ながら、震える声でイオスは、

 

 「ウェネーム……君は一人で何でもしようとしちゃうところがあるから、何かあったら相談したりするんだよ」


 「そんなことは……分かってる」


 「そ、それとね…………あんまり得意じゃないかもしれないけど、いろんな人と仲良くするんだよウェネーム」


 「う、うん。もうわかったから喋るんじゃないイオス」


 仰向けの状態で涙を流しながら、イオスはウェネームの手を強く握る。

 力を振り絞り、笑顔になり、


 「いままで……ありがとう」


 「いや、お礼を言うのは私の方だ。ありがとう……イオス」


 倒れているイオスに力がなくなり、段々と冷たくなる。そのイオスのライフゲージは、ゼロになった。

 消えていくイオスの場所に残されたのは、大剣・トリカブトと刺さっていた毒の剣・カルミア・ラティフォリア。その剣を、両方とも拾い上げるウェネーム。


 「行くぞパテル、エトワ」


 静かな表情で、ウェネームは言った。

 パテルはそのまま行こうとする、ウェネームに一つだけ聞いた。


 「一つ聞いていいか?」


 「なんだ……?」


 「ウェネームはこれから何のために、花龍のところに行くつもり?」


 無言になるウェネーム。

 考えた後、笑顔で、


 「イオスがした決意を受け継ぐ。どうせあいつのことだ花龍は毒の民が関係している、その代表として行くとでも言ったのだろう」


 その答えに笑顔で頷く。

 俺の反応にウェネームも笑顔になり、二人の方を向き、


 「数々の今までの無礼済まなかった、許してくれるとは思わないが一緒に行ってもいいか」


 二人で目を合わせた後、ウェネームのことを見て頷く。

 俺を先頭にして三人で歩き、自然の中を抜けていく。

 歩いていく度に、自然が多くなり歩くのが難しくなっていくが、リヌスからもらった紙によると、


 -自然が多くなり歩くのが難しくなってきたその先に、開けた場所が現れる。その中央に花龍は眠っているー


 その紙の通り、しばらく歩き続けていると開けた場所に着いた。

 円状になっているその場所には、様々な花が咲いている。咲いている花々の中央には見たこともない大きさの龍がいた。


 「あれが、花龍なのか……」


 花龍の大きさに三人とも圧倒されていると、何処からか声が聞こえる。

 その声は誰もが知っている、人物の声だった。


 「パテル君たちじゃないか、待ってたよ。遅かったね」


 と言いながらコウヤは、花龍の隣にいた。

 何故コウヤがいるか、最初のままの印象では分からなかったかもしれないが、今となっては花龍の隣にいる意味が何となく分かる気がする。


 「何故そこにいるんだコウヤ!」


 「パテル君……珍しく熱くなっているねぇ。君もうすうす気づいているんじゃないのかい?」


 「何のことだ?」


 俺の問いに答えずに、呑気な表情でコウヤは、花龍に餌を与える。

 餌を与えた後、不気味な雰囲気で笑いながらコウヤは、


 「くっくく、本当に君は鈍感だな。リヌスを騙したのも、ウェネームが誰か氏らを殺すように仕向けたのも全部、全部……全部この僕なんだよ」


 清々しい表情で笑いながら、コウヤは言った。

 何となく察しはついていた事だったが、何故か動揺してしまう。その様子に気付いたのか、エトワが前に出てコウヤに言う。


 「そんなことは知っていた、全てのことはお前が怪しいと」


 エトワが言い切ると、コウヤはショックを受けた表情になる。

 だがすぐに表情を変えて、手のひらで顔を覆うようにしながら笑ったあと、コウヤは指をさしながら、


 「確かに全員知っていたようだが……では何故そこにいる奴だけは動揺している!」


 その指は俺のことを指していた。

 自分でもわからないが、確かに動揺はしている。すると、コウヤはまたしても笑いながら、


 「くくくっパテル君……君はお人好しだ、だから何処かでコウヤが敵じゃないならいいのにと、思っていたから動揺しているんじゃないのかい?最初に会った時のことを思い出しながら、僕を丸で友達のように思っているから!」


 コウヤの言葉を聞いて、自分の気持ちに当てはめていくとほとんどが言った通りであると自覚した。

 隙を見せた瞬間にコウヤが、花龍に向かい、


 「パテル君を、殺せ花龍!」


 大きく響くその声に気づいた時には、目の前に花龍がいた。

 口を開けている花龍に、俺はただ立ち尽くすことしかできなかった。


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