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第九話『アーラの想い』

 「だからこの中を見てはいけないと言っただろ」


 ジギタリスの中を見た瞬間に毒に襲われる気がした。

 でもそこまで強い毒じゃないようだが、どういうことなんだ。


 「なんちゃってね、先入観というものは怖いね。この斑点模様に毒はない、あるのは……」


 と言うと、ジギタリスの中から小さなカプセルのようなものが、出て口の中に入ってしまう。

 その薬のカプセルのようなものを吐き出そうとするが、喉の奥まで入ってしまい取り出すことはできない。入った瞬間に一気にライフゲージが減る。


 「そのカプセルは、ジギタリスの葉を凝縮したものさ。ここまで言ったらもうわかるだろ?ジギタリスの毒は主に葉にある。そしてその毒には様々な作用がある、やがて君はジギタリス中毒になるだろう」


 「な……なんでそんなことをした?」


 「それは君に何かバラされては、面倒なことになるからね」


 その返事に首を振る。

 どういう意味か分からなかったのか、苦しむ俺を見ながら何を言うか待つリヌス。


 「違う……俺の事じゃない。聞いてるのは何故……花龍に頼らなければいけなかったかだ」


 自分がどんな状況か分かっていないのかといった表情で、驚くリヌス。

 悩みながらも口を開き、俺の問いに答える。

()()()

 「それは……君たち人間が私たちを迫害したからだろ。昔の話をした時は省いたが、毒の民が現れポワゾンフィールドには近づかなくなったが、しばらくしてどうしたと思う?」


 「どう……したんですか」


 「私達がいるこの場所を、毒の民を皆殺しにして奪おうとした……そしてここに攻め入ることを()()()から知らされた私は、百人の人間を殺し花龍を生み出した。だが全てはその男に騙されていただけ」


 ある男、それは誰なんだ。それじゃリヌスは、その男に騙され花龍を生み出した。

 でも慎重そうなリヌスが騙されることは考えにくそうだが、と考えていると情けないような顔をしてリヌスは、


 「普段の私だったら、君が思っている通り騙されなかったかもしれない。だがあの時は違った、人間は本当に私たちのことを嫌って、数々の迫害を受けていた。焦っていたそんな時にあんな情報が入ったら」


 信じることしかできなったのか……だがその行動は結局、自分自身による自爆でしかなかった。

 となるとリヌスを騙した人間、その人間が花龍の事をリヌスに流して……生み出させたのか。


 「聞きますが……花龍のことは誰から?」


 「それは、私を騙した男からだ」


 段々と情報が自分の中で繋がっていく、そんな時体には毒が周りもう考えることができなくなっていた。

 花龍の事を聞いて何かわかりそうだったのに、こんなところで死ぬのか。


 「パテルっ……パテルっ」


 その声はアーラだった。何度も起こしてくれたアーラの青薔薇による奇跡。能力に頼り過ぎていたせいで、自分の限界が分からなくなっていた。その時、自分のライフゲージを見るとゼロになっていた。


 -奇跡、その言葉は何か都合のいい時に使えそうな気がしていた。


 それは間違いである。


 それは自分の力ではない。


 それは飛んだ自分の都合である。


 奇跡というその言葉に頼り過ぎた男の末路はこのようなくだらない、中途半端な結果を迎えようとしている。これを救えるのは誰でもない、勿論自分自身でもない。何故だろうか、悲しさがこみ上げる。

 情けない自分、中途半端な自分、アーラをきっと悲しませてしまう自分。この全てが死ぬ間際で自分に重く伸し掛かる。


 -もう少し頑張りたかったな…………


 「なに……死のうとしてるの?」


 「アーラ……?」


 紛れもなくその声はアーラだったが、姿を見ると何か違った。子供のような体ではなく、少し成長して大人びていた。

 アーラは真剣な表情で、


 「奇跡っていうものに頼りすぎたと思ってるなら、最後までとことん頼ればいいじゃない。パテルが死んだら私の存在もなくなっちゃんだよ」


 「だけど……俺はもう」


 「そん事言わないで、今ならまだ間に合うから!」


 アーラが言うと光が見える。その先には、自分がいた場所が映っていた。

 向かうのに躊躇っていると背中を押してから、アーラが言う。


 「それにパテルは何か勘違いしているみたいだけど。私の能力はパテルの物でもある、私たちは二人で一つ、何方かがいなかったら何の意味もない。それでもパテルを否定する人がいたら私がその人を否定する、それが例えパテル自身だったとしてもね」


 笑顔で言い切ったアーラ、その目に嘘偽りはなかった。

 笑顔で頷き、光に向かい走り出す。後ろにはアーラが見守っているから、何も怖いことはなかった。消えそうな光をこじ開ける。


 すると息を吹き返し、ライフゲージが全回復し、さっきまでいた場所に戻る。目の前には息を吹き返した俺に驚く、リヌスがいた。リヌスに向かい、俺は、


 「花龍のこと、その男の事、俺に任せてはくれませんかリヌスさん」


 「な、なにを言っているんだい……私は君を殺そうとしたんだよ」


 「そんな事は分かってますよ、だけどリヌスさん俺は貴方が苦しんでいたのも何となくは分かります。かといって貴方がしたことは、許されることではないですが……だから貴方は自分自身が、すべき事をして花龍のことは俺達に教えてください」


 何故そう言った考えになったのだろうと思い、考えに苦しむ表情をするリヌス。

 苦しむ表情を見せるリヌスに、笑顔を見せながら、


 「リヌスさんはちゃんと罪を何かしらの形で償ってください、それ以外は俺達に任せて!」


 その一言で、肩の荷が下りたのかリヌスはその場で泣き崩れた。

 リヌスの肩に手を置いた後、自分の元いた場所に戻ろうとする、去り際にリヌスは、


 「パテル君……ありがとう」


 「お礼なら、この剣に言ってください」


 持っていた聖剣・蒼薔薇を見せる。

 月に照らされた、青く輝く美しい県を見てリヌスは、


 「その剣は?」


 「奇跡を起こせる剣、聖剣・蒼薔薇。そしてまたの名を俺がつけた名前だけど、アーラっていいます」


 アーラのことを言って去っていく、俺を見ながらリヌスは、


 「そうか……君ならとんでもない奇跡が起こせそうだな」


 月明かりの中リヌスは、あの笑顔を見て信じようと誓った。

 

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