第一話 分岐点
凄く短いです。読み流してください。
寒い冬の、雪がぽつぽつと降っている時、僕は中学二年の修学旅行で東京に来ていた。
僕がいるのは、どこかの駅。
名前なんて分からない。
そもそも、ここに来る予定なんてなかったから下調べもしてないし、東京みたいな都会の駅は多すぎて名前なんて分からない。
だけど、ただ秋葉原に行きたいから駅に乗る
そんな理由。
お昼はとっくの昔に過ぎて夕方、俗に言う帰宅ラッシュに一歩踏み込んだぐらいの時間帯。
自由時間は夜までだから、まだ大丈夫。
周りを見ると、人が集まり始めている。
やっぱり、東京は凄いな。
そろそろ電車が来るのかな?
多分、来るんだろう。
周りには、同じ班の奴らはいない。
あいつらとは今、別行動をしている。
そもそも、仲良くなんかない。
ただ僕があの班にいるのは、荷物持ちをやらされたりするから、一緒にいるだけ。
よくある、虐められる関係、そういうことだ。
元々、虐められることはあった。
小学生の頃はどちらかというと、ちょっかいされる程度だった。
その理由も、なんとなくだけど分かっている。
僕が大人しめで根暗で、さらに身長が低いからだ。
だけど、中学から変わった。
中学は二つの小学校の生徒が合わさっている。
それで知らない生徒が増え、弄られることも増えた。
だけど、まあ耐えられた。
それが二年になってから変わった。
正確には、二年の途中からだ。
僕には、幼馴染の女の子がいた。
凄く可愛い子だ。
男子で可愛い女子ランキングなんてものをしたりすると、一位に入るぐらいだ。
その幼馴染に告白する人が多いらしく、全てを断っていると聞いている。
そして二年にいるクラスメイト、サッカー部の次期キャプテンと呼ばれている、結崎≪ゆうざき≫真治≪しんじ≫も告白し、振られた。
その腹いせか、僕に八つ当たりされるようになった。
僕がいつもその幼馴染と一緒にいるから。
ただそんな理由。
しかし、まだ大人とは違う僕ら中学生にとっては、その理由だけで十分だ。
その時、ズボンの右ポケットから振動した。
右ポケットの中に右手を突っ込むと、その振動した物を取り出す。
それは、ケータイだった。
ケータイの画面には、幼馴染の名前が表示されたていた。
まあ、予想はできていた。
今のように虐められる関係になって以来、電話が掛かって来る事が多くなった。
だけど、いつもその電話には絶対にでないことにしている。
だって、僕の恥ずかしい姿なんか見せたくないし、女の子に頼っているのは、男としては見せたくない。
虐められているけど、僕にもプライドだってある。
だから頼らない。
それに、一緒にいるとまた真治君に絡まれる恐れもある。
だから、幼馴染と一緒にいるわけにはいかない。
すると、ケータイのバイブが消えた。。
ケータイを元のポケットにしまい、電車が来るのを待つ。
徐々に人が増え、今はかなり多い。
人が一色。
隙間がないように思う。
人込みは嫌いだ。
早く電車来ないかな?
念じていると、アナウンスが鳴った。
電車がもうそろそろ来るらしい。
左の方を覗けば、遠くから電車が来るのが良く見える。
来てる。ちょっと前に行こう。
電車に乗る人が前に進み、少し身体が押される。
それで黄色い線よりも少し前に出てしまう。
そのとき、身体が思いっきり前に出る。
あれ?
それが、ゆっくりと、スローモーションのように感じた。
普通に、少しだけ前に出ただけだ。
それなのに、どうしてこんなにも前に出てしまうの?
身体がホームの外、レールの真上に来る。
左を見れば、電車がゆっくりと近づいて来る。
さらに、後ろを覗く。
そこには、並んでいる電車に乗ろうとしていた人達。
彼らは一様に驚いてる。
口を大きく開いたり、口元に手をやったり、目を見開いたり。
その中で一人、人と人の僅かな隙間に、少年の顔がよく見えた。
結崎真治。
奴だけ、笑っていた。
ああ、こいつに押されたのか。
本能的、それが理解できた。
そして、景色がいつも通りに戻った。
音がよく聞こえる。
電車もいつも通り、早く、気が付いたら目の前に。
ドスッ、という叩く音が辺りに響くと次にキキーという電車が急停止する音が聞こえる
その日、人身事故が起こった。
警察の調べでは、雪が降っていたせいで滑って誤ってホームの外に出た、と報道した。
その日、阿嶋≪あじま≫遊斗≪ゆうと≫は死んだ。
二日まで7時、12時、19時に投稿しますので、もしよかったら見てください。
第一章が終わるまでは毎日投稿します。
二章からはストックが底を尽きますので、間が空きます。