ビヨンド・ザ・ワールド
ここにあるのが没集であるとするのなら一体普段は何を書いているんだという話になるかもしれませんが。
これはVRMMOシリーズ六作目になるはずだった第一話ということになります。ちょっと意味不明だったのでこっちに置いておきます。
月宮乃亜は普通の女子高校生なのです♪ 限定という言葉にも弱い可憐な女の子です♡ ゲームに興じてかっこいい男の子に「お前ここはこうやるんだよ」ってことを教えてもらうことを夢見ています☆
「ビヨンド・ネテロー♫ 休載を超えろ♬」
そんな私はこのたび、ビヨンド・ザ・ワールドという限定商品をくじ引きで引き当てました! さっそくプレイするのです。
『アーユーレディ?』
「家ー」
『オーケー、リンクスタート。シンクロ率10、30、80』
「120%!」
『FINISH! LETUSPLAYBEYONDTHEWORLD!!!』
デロリアンで時間を超えるような感じで仮想世界へと飛び立つのでした。
「毎日毎日ワシらは地球の片隅の」「上で廻って嫌になっちゃったので仮想世界へ逃げ込んだー」
「ラン→ラン→ラン→ラン→ラン↓ラン↗ラン↗ラン↗ラン↓ラン→ラン↗ラン↗」
「ラン、ランララ・ラン↓・ラン↑・ラン↓ ラン、ランラララン」
「LA・LA・LA・LA・LA LOVE SONG」
「Que sera,sera……」
意味もなくナイフを振り回すのです。月にナイフを翳してみるけど何も出てこないのです。ライターで炙ったらどうなるかなぁ? きっとナイフのたたきが出来上がるに違いない。鉄は血の味だから焦がし血液みたいな感じで。
『街に転移します』
『転移条件 転移者の非武装が満たせません』
『転移開始00:15』
「んっ??」
『転移条件を満たせませんでした』
『転移に失敗しました』
「ONEMORECHANCE!」
『転移先再検索……』
『ランダム転移、上空』
『転移します』
空、この碧くて広い大空! に独り投げ出される。井の中の蛙、大海を知らず。されど空の深さを知る。知ったところでどうしようもないんですけどね、と死への輪舞曲を口ずさみながら何か大きな力に期待するのです。死にとうない……
「ん、何だ?」
『モード片手銃 リロード』
突然何者かの狙撃を受けて静かに眠るのです。
「知らない天丼……」
「どんな丼だよ」
「精進天丼大葉尽くし大根おろしを添えて……」
「……………………」
「ま、私はソースカツ丼より味噌カツ丼が好きですけどね」
「お前誰だ」
「あなたこそ誰ですかと問いたいいいいって体が麻痺ひヒヒーン」
「睡眠と麻痺の追加効果の銃弾を受けたらな……」
と、そいつは私にポーション(塩酸かもしれない)を炭酸のように振ってからぶっかけたのです。私は初期装備でありました。初期装備が厚着であった例がかつて一度でもあったでしょうか? いや、ない。薄着なのです。さっき上空に放り出されて寒い思いをした私に冷たくて緑色のソレをぶっかけたのです。でも濡れ透けが規制に引っかかるのは如何なものか。
「私はアリス・チャンです。悪ネスちゃん或いはアリストテレスのアリスと。以後お見知りおきを」
「お、おお……。俺は水仙だ。というかアリストテレスって」
「ピタゴラス「ソクラテスがやられたようだな」アリストテレス「ククク…だが奴は四天王の中でも最弱」ニコストラトス「◆◆◆ごときに負けるとは…………ねえ?」のアリストテレスです」
「そうか。とにもかくにも悪かったな。詫びとして何かプレゼントしてやるよ」
「太っ腹ーと褒めたたえたところで何も出ないのはわかりきっているのですがそれでも期待してしまうのが人間のサガだというのならば、存分にカタストロフィしてやろうじゃありませんか。私がほしいのは翼、飛んで逝きたいのだけれど天国は見つからない。戦い続けるのが人間世界の理であり安住の地などもはやどこにもない、ならば創り出すしかないというのは無茶ぶりですがせめて明日への銃弾がほしい」
「銃……確かに銃がふさわしい。剣は銃より強し。これやるよ、初心者には過ぎた代物だが」
と、彼は私に銃を投げてよこしました。かつて禁酒法ができてどうなったかということを考えれば銃を規制したって無意味なのでは? と思うのはすでに銃があることに慣れすぎていたからでした。彼はアメリカ人のような日本人でしたが私は日本人であり銃なんて全然慣れてないから取りあえず構えて撃ってみるのです。
「ふっ、今の私にはKAKUGOがある。今ならトリガーハッピーにだってなれる」
それでアジャパーと叫びつつ反動で豪快に吹っ飛ばされて死んでしまうのです。
『再構築…………』
『修復完了』
「説明不足と謝ればいいのか? 俺がレベル1なのは遥か昔のことだ、どれだけ自分がひ弱だったかだなんて碌に覚えていない。もう少しだけ付き合ってやるし何かやりたいことだとか買ってほしいものがあったりしたらどうぞ」
「まったくアッチョンブリケなんですがね。何か一つ願い事を叶えてくれるのなら、ちょっと付き合ってくださいよ」
私は彼の人に拳を突き出すのです。ヒュッ、ヒュッ、ヒュッと息を吐いて吸って一撃に魂込めてそれでいて絶え間なく連続させて。
「初心者の動きじゃないぞ? レベル1だよな??」
彼の眼が光っています。私を見透かそうと鑑定しているのです、なんていやらしい。清廉潔白な私を調べたって疚しさと疎ましさが残るだけですよね?
「むかしーあるところにー古武術を習っていた少女がおりましたー」
「女の子はやがて山に籠るようになりましたー」
「女人禁制でしたが女らしかなぬ容姿だったので大丈夫でしたー」
「ある日発情した雄に出会いましたー」
「それは熊でしたー殺し愛ましたー」
「村一番の狩人となった猟師は私に古武術を教えてくれましたー」
「確か5歳のころの話」
「熊肉目当てによく通ったものです」
友達にクマ肉がおいしかったといったらそんな馬鹿な話があるかと馬鹿にされたのでそれから私は捕鯨に賛成するようになりいつか犬を食ってやると決意したという話です。アンポゲイハンターイってひとまとめにしてしまえばいいのに、素直じゃないですよね皆さま。
「古武術ってのはー」
「いま日本にあるよくわからない剣道なるもの」
「柔道」
「弓道とかその辺のと違って道はなし、殺人技術」
「まあ武道をやることが道徳心を養うかといえばそんなことはないけれど」
「ないこともないけれど所詮動機が不純というどうしようもなさ」
「私が熊肉に釣られたが如く」
ナイフを初期装備で手に入れられたのは僥倖でした。眼を狙って突き刺すのですが刺さらないというのは、予想外というほどでもないのでさっき両手でぶっ放した銃を片手で撃ってみたのですがその前に何発か銃弾を浴びて崩れ落ちて明後日の方向へ銃弾は放たれるのでした。
監獄というのは悪い人を閉じ込めておくところなのですが、どうもヴァルハラと化していたようであちこちで殺し合いが行われています。私も人を襲ったから監獄へ、後で知ったことですがこれは水仙さんがそれなりのお偉いさんだったことも大きかったらしいですね。
「新入りが来たぞっ!」
と、ヒャッハーしている誰かが私に強姦するのではないかという勢いで襲ってきたので反射的にその眉間を撃ち抜いたのです。
『レベルアップ』『レベルアッ』『レベルア』『レベル』『レベ』『レ』『レ』『レ』『レ』・・・
「おおー……」
身体が強制的に引き上げられていくような感じがありました。反動としてのダメージを成長による体力回復で相殺します。迷わず争っている誰かと誰か目掛けて撃っていきます。レベルアップ、それに伴う体の変態と反動としてのダメージが重力のように私を押しつぶしました。乾いた銃声でした。私は確かに他の囚人の注目を浴びたのです。
「ボム」
取りあえず爆発させようという危険物扱いによって私は燃やされます、されど不燃ごみなので有害です。レベルアップの効果がまだ残っているので酷く煙たいですが生きてはいました。それが拍車をかけるのです。その得体の知れなさを確かに証明した私の包囲網なるものがいつの間にか完成するのです。であるからそれは破られるのです。包囲網というのは破られるためにあるのだから。
「チェスト」
死が確かに迫っていました。物理的な、鈍重な鈍器でした。棍棒或いはハンマーのような、ブラックジャックは頭を砕かんとして、脳髄をぶちまけんとして、確かにシャラララランと夢の如く飛来するのです。それか振り下ろされるのか。
「貝になりたいのか」
「翼がほしいのか」
「呪文か? 最後っ屁の可能性も」
「両方やるというのは、というジョジョのあれには実は元ネタがあるのではないかと勝手に睨んでいます。ギロギロ」
「狂気には理性が含まれ」
「理性に狂気が含まれるとするのならば」
「純度百パーセントの狂気それから理性は一体どこにあるというのか」
「それとも空なのか」
「風になれたらいいですね」
「千の風は御免ですが」
「何よりも自由であると思います」
「そしてその自由は全て管理された束縛なのです」
「さて今の私は何だと思います?」
「三月ウサギなんですよね、これが」
『レベル100到達により”進化”』
『mad as a hatter となります』
殺戮が止まらない、水仙から貰った銃は高性能過ぎましたのでした。体力ロスを無視して連射していると今度は魔力を要求されました。
『オートリロード』
立っていられないほどの眩暈、魔力コストを要求しないのも事前に弾が込められていたからという訳でして、私が体力を失うのはその反動が凄まじすぎるからただそれだけということです。
これから水仙のギルドに入って初心者として成長していく……
普通に水仙視点で書いたほうがずっといいのではないかと思いました。