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電子書籍元年2010と書いてみたはいいが、全然それっぽくないのが無念。

 ジャンルはファンタジーで基本その路線のつもりですが、そんな都合のいい毒電波が飛んでくるわけではない。

 僕はブックスという団体に所属している。


「やめて!」


「奥さん、これは必要な事なんですよ」


 ブックスの活動は本を無駄なく資源に変え(そういう技術が開発された)、その内容を電子化することだ。ただでさえ資源が足りないこの世の中、完璧なリサイクル技術が開発されたというのに、紙の本を隠し持つ人は多い。そんな連中から、本を回収して資源に変え、内容を保存する。世の中の為になる活動だと思ってくれればそれでいい。


「キョウモオツカレサマデス」


 一仕事終えた僕を、ロボットが出迎える。ロボットは僕らにありとあらゆる娯楽と安心を提供してくれる。


「今日の予定は?」


「キョウハハハハハハ――」


「?」


 が、壊れた。今日は修理に行かなければいけないらしい。



「えーっと、つまり?」


「修理は明日終了する」


「あ、うん。分かったけど、僕の予定」


「シリマセンってことだよ」



 


「あれ?」


 家に帰って、取りあえず灯りを点けて、暖房を入れてとそこまでやったところで電気が消える。ロボットは家事の途中であらゆる物がつけっぱなしだった。僕はそれに止めを刺しただけだから悪くない。こうなったら僕は灯りを点ける為に何かスイッチとかを探す必要があるのだが、ちょっと今日は疲れていてそんな気分じゃなかった。明日になったらロボットが帰ってきて、何もかもやってくれると信じている。僕は果報は寝て待てを実践しようと早々にもベッドに入り、それで寝付けなかったから外に出た。

 すると誰かいた。


「君は?」


「見えるの?」


「いや……でも……」


「私のことを見たいなら、そのグラスを外して」


 誰かいる、というのは僕の感覚的な判断。しかし視覚的にはそこに誰もいない。でも聴覚的、それに心がそこに居ると教えてくれる。僕は、僕でなく人はとあるグラスの着用を義務付けられている。外すことは許されない。


「外したくない?」


「外して……みるよ。ただ、外し方が分からない」


「両手を耳に伸ばして」


「うん」


「棒の感触を探して掴んで」


「掴んだよ」


「グッて上に上げるの」


「上げる…………取れた」


 そこに居たのは少女だった。はにかんで笑ったあと、消えた。僕はそれを黙って見ていた。何処に消えたのだろうと、何故か空を見上げた。そこには星が在った。僕はそれを茫然としながら、じっと、見つめていた。そうして暫くした後、ベッドに戻り、暗闇が怖くなったのでグラスを着けた。グラスを着けていれば、暗闇は暗闇でない。ただの闇、けど僕は気になったのでもう一回グラスを外して、闇と向き合った。やがてまたグラスを着けて寝た。







「さー今日の仕事も終わりだ」


 今日もブックスとしての仕事をこなす。帰ると、家にはロボットが帰ってきている。


「今日の予定」


「データガフソクシテイマス」


「データ?」


 帰って来たロボットは、データが足りないと言った。データとは何だと言えば僕の行動を決める為に必要なものらしい。前は僕の親がそれを入力していたはずだ、と。確かにそうだったのかもしれない。


「このまま、データが無かったらどうなる?」


「コウドウハキメラレマセン」


「でも僕は何かをやらなくてはいけない、例えばブックスとしての活動。言われずとも食事は摂るし寝るし…………」


 そこまで言って、僕は自由というものを知った。同時に、これまでの人生が如何に束縛されたものであったかもだ。



 僕は外に出た。


「寂れている」


 この辺りは区画整理とか何かで人が消えた。その事実に対しての感想を色々呟いてみるけど、誰も答えを返さない。おかしなことに、それが嬉しかった。妙な興奮が有った。


「本屋」


 本屋を、見つける。何気なしに、入ってみた。奥へ、奥へと。何かを見つける必要が有った。グラスは要らない。きょろきょろと探し回ると、壁のような扉が一つ。押してみると、開いた。


「君は、ブックスか!?」


「そうでもあるし、そうでないとも」


 老人と、沢山の本が積まれていた。ブックスなら、こんなもの直ぐにリサイクルして電子化するだろう。僕はブックスとして、そうでなくとも一人の市民として、ここを通報することが出来る。


「グラスを着けていないじゃないか!」


「……そうです」


「まさか、君は」


「迷っています」


 しかし、僕に通報しようという意思は存在しなかった。ブックスの恰好をしているが、全然まるでブックスらしくない僕を睨みつけていた老人は落ち着きを取り戻し、優しげな顔で椅子に座るよう勧める。僕は椅子に座った。


「どうしてここに?」


 これまでの経緯を話した。老人は頷いた、君は紙の本に触ったことがあるかい? とも訊いた。ブックスは仕事をする時、手袋を着けている。一冊の本が差し出されたので、撫でた。そして蘇る記憶。


「あります! 子供の時、僕は本を……噛んで……破いた。あの、悪いことですか」


「悪いことかもしれない、でもデータだったらそんなことは絶対に出来ない」


 僕は無性に懐かしくなって、家に駆けた。確か僕の記憶ではベッドの下にまだ残っているのだ!






「あった」


 僕は遂に本を発見した、そして大事に大事に抱えた。それはとても傷ついていて、落書きが残り、ページが所々飛んでいる。それでも、紙の本だった。ドアは急いでいたので開けっ放しだった、僕はデータの修復の為にロボットを……


「データノシュウフクニマイリマシタ――ホンをハッケン、リサイクルシマス」


「止めろ!」


「ハンザイシャ、ハッケン。ツイセキシマス」


 思わず引っ手繰って、逃げた。これで立派な犯罪者。必死で逃げた、捕まったらこの本は裁断されて、リサイクルされる! 走って、走って、森の中まで。





 


「どうしたの?」


 今度会った少女は、最初からグラスを着けていなかったから実によく見えた。


「本を……」


「見て」


 少女はとある端末を僕に見せた。雑音だけが響いている、壊れている?


「全てのデータは消えたわ」


「どうして?」


「私の裸が残っていたからじゃないかしら? 天罰よ」

 判ると思いますが華氏451度、電子書籍版に置き換えられないかなと思ったけれど、文才がない私でやるとこんな感じに終わる。三十分で書いたからしょうがないね。紙の本は無くならないと、叫ぶのではいいんですがそのうち平和だ平和を護れ! のサヨクに見えてくるのは私が狂っているからか。無くならないと思うなら、それをわざわざ主張しなくてもいいのに。なのに言うのは、電子書籍というのが、確かに必要とされているからでしょうか。結局本にするメリットは、経済的な観点では薄く、感情論に頼らざるを得ず、そういう主張の薄くて差異が薄いものは安保法案が通ったように、消えていくのでしょうか。

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