2 父、陛下との対談
大きな扉の前に立つ。
父はあまり子供に関わらない人だ。子供のことは母と使用人達に一任している。そんな陛下が直接私を呼ぶなんて嫌な予感がする。
「失礼します。陛下。」
「入れ。まあそこに座りなさい。」
指し示されたソファーにこしわわかける。
「お前は、もう10歳だ。人魚は10歳になったら成人の儀式をやるのは知っているな?」
「ええ、陛下。存じておりますわ。」
「うむ、最近お前の素行も良くなってきたし、そろそろ行うべきだと思ってな。儀式は海の上の世界を見てくることだ。と言ってもただ、海上に頭を出して戻って来れば良い。」
「えっ…」思わず声が漏れた。私の知ってる人魚姫は、確か16で海上に行く権利を得るというもの。陛下のお言葉からすると、海上に行くのは決定事項らしい。どうしよう…泡になる未来に近ずいたよ。
「簡単なことだろう。どうしたと言うのだ?お前は行きたがってたじゃないか。あぁ、言っておくがくれぐれも人間に近ずくな。人間は危険だ見つかれば捕らえられるかもしれないからな。」
「はい…」そうだ、海上にいっても王子に会うとは限らないんだから。すぐに頭出してもぐればいいんだわ。
「あと一つ、くれぐれも海上の食物を口にするな。はなしは終わりだ。簡単な儀式だが、命の危険はある。心して望め。」
「はい…失礼致します、陛下。」
私は陛下の部屋をあとにした。
陛下との話で引っかかったのは、海上の食物を食べてはいけないことだ。あぁ、理由聞き逃しちゃった。それになんで命の危険があるんだろう。ただ少し海の上に頭を出すだけなのに。
「姫様。姫様。」
ドン。きゃあー、痛い。考え事をしていたら壁に激突した。
人魚である私は廊下を勿論人間のように歩いたりはしない。始めにひと蹴り尾ひれで水をかけば、そのままスーと進めるのだ。これが結構たのしいのだか、ぼーっとしているとそのまま壁に激突するのだ。
「まったく、姫様。気をつけてください。もう成人するというのに。先が思いやられます。」
「大丈夫よ、セバスチャン。だって、海の上にちょっと頭出すだけでしょ?任せて起きなさい!」
「姫様!前…」
ドン。
「セバスは心配にございますよ。姫様、頭を海上に出す前に上を確認なさいませ。船に頭をぶつけたら、笑い事じゃありません。」
「もうー、そんなにドンくさくないわよ!」
私は自室の部屋へと戻った。