1 プロローグ
私の幼い頃の夢は、お姫様になることだった。最後は幸せになる童話のお姫様に憧れていた。白雪姫、シンデレラ、眠り姫…みんな、幸せになれるのに、どうして人魚姫は幸せにならないのだろう。私は、人魚姫だけはなりたくないな…
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「朝よ、起きなさい。遅れるわよ。」母の声で目を覚ます。時計を見れば8時になろうとしていた。今日は平日。学校がある。家から学校まで自転車で20分はかかる。(勿論、全力で漕いで、信号に引っかからなかった場合だ。)制服に着替え、家を飛び出した。
やばい、遅れちゃうよ。自転車のペダルを全力でこぐ。この坂を下ればもう少しで学校。私は猛スピードで坂を駆け下りる。あー、風きもちいな。
「危ない!」誰かの叫び声が聞こえた。前方から車が突っ込んでくる。あれ?どうしたんだろう。自転車のブレーキが…
私の人生は18歳で幕を閉じた。
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姫様!姫様!
私は目を開ける。生きてる…?水の中?息が…溺れる!!え!?息ができる…どうなってんの?
ひどい頭痛で気を失った。
私は人魚姫になっていた。足があった場所はピンクの鱗に覆われ、光に反射してキラキラ輝いている。人魚ってこんなに綺麗なんだ…って、違う違う!なんでよりにもよって人魚姫?これは泡になって消滅確定じゃん!私はイケメン王子と幸せになりたいのに…
私は頭の中を整理した。
私は、フローラ・シャルル。10歳。美しい金髪、水の中であるため髪はまっすぐだが、本当にストレートかはわからない。白い肌に大きな目。瞳は澄んだ海のような青。海底の城に住んでいる。末っ子に生まれた私は、我儘放題の甘えん坊、つまり、どうしようもないお姫様だった。だけど、前世(?)の私はむしろ大人しい女の子だった。引っ込み思案で、人に言われたことを断れないため雑用係みたいになっていた。そんな、記憶をもつ私が我儘姫なんてムリ!!(性格が変わりすぎてみんなに頭がイカれたのかと思われた。)
そんなことより、私は幸せになりたいのに。うーん…『人魚姫幸せ計画』をたてよう!人間の王子に会わない。人間にならない。声を無くさない。あっ、でも王子にはちょっと会いたいかも…会って恋に落ちなきゃオーケー?いや、物語的におちゃうだろ、で泡になる…うん、いっそのこと会わなきゃいいじゃん!私はお姫様なんだから人魚のイケメン王子と幸せになればいいじゃない!私、天才。
『人魚姫幸せ計画結論:人間の世界に行かない。人魚の王子と結婚する。』
「姫様、陛下がおよびです。」呼びに来たのは執事のクラゲ、セバスチャン。
「ええ、すぐ行くわ。」陛下、父の元へ向かった。