ギルド地下にて。
二日目~下刻
ご飯を食べて魔法のお勉強。どうやら魔法に関してはチートっぽい。
さて、地下に下りてきましたよ。
「おお…結構広い」
階段を下りると広場があった。
大体50メートル前後の正方形に近い広さだ。
天井までは5メートル位かな?
この時間だとそれ程訓練しているヒトはいないようで、壁際に座る数人と、疎らに数人が体を動かしているのが見える。
「アルセラさん…あ、いた」
奥の方で、槍斧をビュンビュン振り回している。
…巻き込まれたら即死だな。
壁際をコソコソと移動して近付くと、アルセラさんがこちらに気付いた。
「どうした?」
若干汗が滲んでいるのが、上からの光に照らされてちょっとドキドキものです。
「小休憩です。…メリルさんが疲れたとの事で、二息入れる事になりました」
「そうか。で、どうだ?魔法は使えそうか?」
「あ、使えました」
「…は?」
「えー…ちょっと考えてみると、どうも、スキルの影響っぽいんですよね〜。まさかのお役立ちスキルですよ」
「ちょ、ちょっと待て。お前、そんなスキルあったのか?」
「あの、不明なものが一つあったんですが、それが魔法LOVEっていうスキルなんです」
「魔法らぶ?」
「はい。魔法LOVEですね」
「らぶってなんだ?」
「えーっと、愛、ですね」
「…は?」
アルセラさんの表情がどんどん怪訝さを増して、眉間のシワが渓谷を形成しそうだ!
「えっと、多分、魔法がとても好きっていう意味ではないかと思うんです。あるいは、魔法が僕を好き?みたいな?」
「………」
あ、今度は無表情になったよ。
…仕方ないじゃないか。
魔法LOVEなんだもん。
「いや、なんと言うか、まあ、頑張れ」
「…はい。…あ、ちなみにここで魔法の練習はできるんですか?」
「ああ、あっちの壁際に的があるだろ?一応強化魔法で壊れにくくなってるから、気にせず打ち込め」
「おお、強化魔法ってそんな事もできるんですか。無機物にも使えるんだ…」
「どれ、あたしも見てみたいから、早くやってくれ」
「了解です」
的から10メートル程の距離を開けて対峙。
えーっと………ん?どうやって飛ばすんだろう?
…しまったー!?いやしかし、アルセラさんが真剣な顔でこちらを見ている。
っく、ここは何かしら…えーっと…そうだ!まずは手の平に魔力を集めて、
「ヒノタマヲアラワシタマエ」
…………。
…しーん。
…………。
のぉぉぉーーーーーっ!?
「…エッジ?」
「ジャスタッモーメントッ!!」
「お、おう?」
いかん!恥ずかしい!!
静まれハートビートッ!!
落ち着けマイハートッ!!
※冷静に混乱中。
…よし。
イメージを優先してやり直そう。
火の玉を純粋に…
ブォワッ
「あぶなっ」
「おお!」
アルセラさんもビックリ。
僕もビックリしたのは秘密だよ?
さてこれを的に向けて着弾のイメージ。
すると、火の玉は回転し始めて段々とその形状を楕円に変えて…あれ?弾丸?
とりあえず手の平を的に向けて、魔力を押し出してみた。
ヒュボッ…バシュッ
「「…え?」」
的に穴が空いて、後ろの壁も少し穴を開けてから消えた。
うん、何を言っているか良く分かる。
「え、エッジ?今のはなんだ?」
「…多分、火の攻撃魔法?」
「…なんで疑問系?」
「火の玉を出したつもりでした。その結果です。異論は認めません」
「お、おう。そ、そうか」
ちょっと強気で押してみた。
アルセラさんの気の抜けたような、惚けた表情が良いですね〜。
それにしても、イメージがダイレクトに伝わってるのかな。よく分からない呪文?を唱えるよりも、頭でイメージしたものが、そのまま魔法になっているような気がする。考えるな、感じろ!的な?
「エッジ、他にもできるのか?」
「あ、そうですね、できる気がします」
今度は風をイメージしてみよう。
風の塊を、的に向かって押し出す。
手の平を的に向けて、風の塊…弾丸でいいか…を形成して…
真っ直ぐ飛ばすなら回転もいるよね…解き放つ!
ドゥッ…ッボッ
なんか越えてはいけない壁を突破して、的に穴を開けて霧散したようです。
「…また穴が空いたな」
「そうですね」
「…今の風だよな?」
「そうですね」
「普通、風って、吹き飛ばすとか、斬るもんなんだけどな」
「そう…なんですね」
「エッジは本当に魔法使うの初めてなのか?」
「そうです…よね?」
「あたしに聞き返すなよ…」
アルセラさんが呆れっぱなしでございます。
「他にもなんかできるとか言わないよな?」
「…えっと、属性は全部使えるらしいです」
「はあっ!?…っと、ちょっとこっち来い!」
アルセラさんに引き摺られて、誰もいない空間へ来ました。
…ドキドキ。
「いいか、今のは他の奴に絶対に言うなよ!!」
小声なのに、途轍もなく重い言葉が耳から脳へと直に響いた。
「全属性なんて前代未聞だからな!?お前が持ってるなんて、他の奴に知られたら、面倒な事になるぞ!!」
「りょ、了解しました」
やばい、大事になるパターンだった!?
いや、今の所、二つ…火と風だけだから、まだ大丈夫…?
「お前がワタリトだって忘れてたよ…。どうやらお前は魔法の資質を持っているようだな」
「魔法の資質?」
「ああ。魔法に関する能力が高くなるんだ。あたしの知り合いは「賢者の知恵」っていうスキルを持っているが、それよりも魔法適性が高いんだろうな」
「なるほど…。いやまさか『魔法LOVE』がこんなに凄いものだとは…」
「多分固有のスキルだろうな。…それも相当凄いスキルだぞ?」
「まじですか…」
うーん。チートスキルのようだけど、名前がなぁ…。
まあでも、アルセラさんの支援ができそうだし、ありがたく使わせてもらおう。
「しかし、どうしたもんかな。練習場所に困る…あっ!…あいつに頼んでみるか…?」
「あいつ、とは?」
「あー、その、あたしの知り合いっつうか。そいつの家の地下に訓練場があるんだ」
「家にですか!?…お金持ちの方なんですね」
「そう、だな。魔法の研究の為に金を注ぎ込む奴だから、金を持っていた、という方が正解だ」
「そういうヒトですか」
「メリルに聞いて、了承貰えたらそこ行くか?」
「そうですね、下手に人目がある所よりは、良いと思います」
「よし、じゃあ、一緒に行くか」
…あいつって誰だろうね?
短め。




