表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/23

昼ご飯から個人レッスン。

二日目~昼頃


 チュー○ュートレインに突っ込みを入れて町に戻った。

ギルドに戻って来ました。


入手したものを換金すると、全部で480シェルになった。

ちなみにキュリィ草を10本集めると、100シェルだった。


その他は、胴長兎、ぐるぐる蛇、野犬…数種類の野良犬なんだけど、野犬で一括りにされているそうだ…を、数匹アルセラさんが仕留めていた分が上乗せされている。胴長兎は食用、ぐるぐる蛇は薬に、野犬は毛皮を利用するそうだ。


さて、結局の所、地球時間で2、3時間程かけて、1人240シェル。

悪くないと思う。


「それじゃ、先に飯にするか?」


アルセラさんは現金で受け取った貨幣を袋に入れると、そう提案した。


「はい、お任せします」

「隣に食堂があるから、そこ行くぞ」

「はい」


ギルドを出て右に行くと、それはあった。


「荒くれ者が夢の跡…?」

「ああ、ここの店主はな、昔冒険者だったんだが、足に怪我を負って、冒険者を断念した。そしてその後に店を開いたんだ」

「それで…」

「ああ。あ、それなりに美味いぞ?」

「楽しみですね」


ギィ…カランカラン


扉はノブが無く、押し開けるタイプだ。

出る人と入る人がぶつかりそう…。


「いらっしゃいませ、お二人ですか?」


店に入ると、左側がカウンター席、右側にテーブル席というシンプルな造りが目に入ってきた。

声の主は、カウンターの中で、こちらに笑顔を向けている。


「ああ二人だ。カウンターで頼む」

「あ、え、あ、アルセラさん…こ、こ、こいびとですかあぁぁっー!?」

「…と、て、い、だ!!」


…このやり取りは何度繰り返されるのだろう。


「とていさん…ですか?」

「徒弟!弟子だよ!言っておくが、エッジはあたしを選んだ上でそうなったんだぞ!」


あ、先制攻撃。


「ええっ!!そうなんですか!?…あ、あの、大丈夫ですか…?」


めっちゃ心配されてる…。


「大丈夫も何も、アルセラさんはとっても優しいですよ?僕はお世話になりっぱなしなので、いつも感謝しているくらいです」

「そ、そうですかぁ〜。あの、アルセラさんが男の人を連れているのを初めて見たので、混乱してしまいました…ごめんなさいです」


ぺこりと頭を下げた女性は、やっと落ち着いたようだ。


「カウンター使うぞ?」

「へ?あ、どうぞー」


女性は、オレンジの肩までの髪をふわふわさせている。瞳はエメラルドグリーン。顔立ちは丸い感じで動物的な可愛さがある。体型はふくよかな印象だ。20歳前後かな…?


「あ、そうだ、親父に兎持って来たんだ」

「あ、ありがとうございます。おとーさーん、アルセラさんが持ち込みだよー」


少し間を置いて、スキンヘッドの親父がやって来た。

…なんだろう。娘さんに似ている。いや、逆か。


「アルセラか。兎か?」

「ああ。そら、こいつだ」


徐にアルセラさんは、袋から頭無し胴長兎を取り出した。


「おう。すぐに調理しよう」

「頼む」


…む、視線がこっちに来た。


「まあ、頑張れ」


…キョトンとしてしまった。

こんなに普通に声を掛けられるなんて思ってなかった。

…っていうのもなんかアルセラさんに失礼か。


「が、頑張ります」


親父さんは頷くと、兎を持って奥の厨房らしき所に引っ込んで行った。


「あの、えと、私、エミィです!」


突然の自己紹介である。


「あ、エッジです。アルセラさんの徒弟です」

「あの、エッジさんも冒険者なんですか?」

「はい。昨日なりました」

「ほわぁ〜すごいですね〜。その歳でしっかりされて…」


あ、このパターンも来るのね。


「いやぁ、24!歳ですし、普通ですよ〜」

「…?」


エミィさんと見つめ合うこと30秒。


「ほぇ?と、と、歳上ですかぁぁぁっ!?」


アルセラさんと一緒に苦笑ですよ…。


話を聞いてみると、エミィさんは18歳で独身。ずっとお父さんのお手伝いをしているそうだ。お母さんは早くに亡くなったらしい…。娘さんは元気ですよ〜。


「エッジさんは戦うのは怖くないですか?」

「怖いんですけど、意外と冷静というか、なんとか動いてますね」


…未だに現実味が薄いからかもしれないけど。


「そぉですかぁ…私なんか外域も怖くて、歩けないですよぉ…」

「あー、でも、僕はアルセラさんが一緒だから大丈夫なんだと思います」

「なるほどぉ…アルセラさんですもんねぇ」


2人でうんうん頷いていると、アルセラさんは微妙な表情を浮かべた。


「…褒められているのか?」

「「もちろんです!」」


しばらく雑談をしていたら、ご飯が到着。


「兎肉のステーキと、柔パンとトマトスープです」


おおー肉がうまそーだ!


「いただきます」


ふむ、一口サイズに切られた肉をまずは…む、むむ、程良い弾力。これはアレだ、ホルモンと赤身を足して2で割った、そんな肉だ!かなり独特な感じだけど、塩胡椒だけと思われる味付けで変な臭みも無いし、あの兎…やるじゃないか!伊達に胴が長い訳じゃないって事だね〜。


「んぐ、やっぱり、焼き加減が絶妙だな〜」

「やっぱり…?」

「ん、胴長兎の肉は焼き加減を間違えると、只々硬くなるんだよ」

「そうでしたか…」

「なんだっけ、均一に程良く焼くとか?なんかコツがあるんだ」

「そぉなんですよ!だから、うちは持ち込みが多いんですよぉ」


エミィさんが、えっへん、とでも言う様に腰に手を当てて大きく頷いた。

微笑ましいなぁ。


「しかしなんだな、柔パンは美味いけど、噛みごたえが無いのが惜しいよな」


ん?そういえば、やわぱんって…

んぐんぐ、あ、柔らかい食パンみたいなパンだ。

こういうパンもあるんだ…。


「スープにつけて食べると美味しいですね」


染み込みんで、口の中でジュワァだ。なんだろね、ジュワァって美味しいよね。

それにしても、昨日今日と、この世界の料理は調理自体はシンプルだけど、完成度が高くて美味いっていうのが嬉しいな〜。やっぱり食は大事だもんね。


「…はー、これで気合入れて動けるなー」

「アルセラさん、午後の予定は…?」

「ギルドの訓練場だ。あと、メリルの都合で魔法に関してだな」

「…おお〜遂に魔法が!」

「エッジさんは魔法士なんですか?」

「いえ、超見習いです」

「…えと、あの…ごめんなさいです」


何故に謝られる?


「あーその、エッジは遠い田舎から来たんだよ。だからこの歳でも魔法に疎いんだ」

「あ…そうでしたかぁ…エッジさん、頑張ってくださいね!」

「え、あ、はい」


よく分からないままに、食事を終えて会計をして…持ち込みの分安かった…ギルドへ向かう。

その途中にて…


「あー、さっきのはな、エッジがその歳で見習いっていうから、エミィが色々気を使ったんだ。二十歳過ぎて魔法を知らないなんて、普通じゃないからな。過去に色々あったんだと想像するに難くない。だから、謝ったんだよ」

「あー…無駄に気を使わせてしまったんですね…。後で気にしないように言わないと」

「その為にも、基本を早く覚えないとな」

「はい!」


ギルドに着いて、メリルさんに話を通してもらうと、あっさり面会となった。


「薬草の採取は如何でしたか?」


現在、会議室?に通されて、テーブルを挟んで向かい合って座っているわけですが。


「あ、そうですね、思ったよりも見つけやすく、アルセラさんがいてくれたので、楽に終える事が出来たと思います」

「そうですか。外域程度であれば、アルセラが遅れを取る事はまず無いでしょう。彼女の強さは本物ですから」

「はい。頼りになり過ぎて、甘えないように気を付けたいくらいです」

「そうですね。その心構えを無くさないようにしていただければ、と思います。…さて、私からエッジさんには、魔法の基礎を指導する事になります。出来る限り分かり易くお伝えしたいので、分からない所は、すぐに仰って下さい。ここで遠慮をされると、後々に響きますので」

「はい。よろしくお願いします」

「では、始めましょうか」


…現在、この部屋はメリルさんと僕だけ。

アルセラさんは訓練場へ。

僕はマンツーマンでの個人授業。

ええ、つまり、密室に二人っきり!


…たまりません。このシチュエーション、たまらんぞぉぉぉぉ!!

※興奮中につきお見苦しい点があります。


「では、魔法の基礎概念から始めます」


魔法とは?


魔力により現象を生み出す術法である。


…というのが現在の一般的な認識なのだそうだ。しかし最近、研究者によって、新しい認識も出てきていて、活発に議論されているらしい。思ったよりもちゃんと体系化されていない?


「魔力というのは、基本見えない力で、生物に内包されるものとされています」

「生物以外には無いんですか?」

「…現在、魔力は長い時間を掛けると、鉱石などにも蓄積し、変質させる事が分かっています。…この辺りは未だに議論されていますので…取り敢えずは、生物に宿るものと考えていただければ良いかと思います」


魔力は、基本的に見えないものなので調べるのが大変らしい。

…普通に見える僕は、異端?


「あの、どれくらい魔力があるかは分かるんですか?」

「はい。魔力計測器があります。神器の一つなので大きなギルドには大体置いてあります」

「あの、じんぎ、というのは?」

「神器とは、神より賜った機器の事ですよ。分かりやすく言いますと、魔物や魔獣に対する、ヒト属の為の便利な道具ですね」


そう言えば魔力波長のアレも神器って言ってたっけ。

って言うか物質的に神様が助けてくれるんだね〜。


「もしかして、神剣とか聖剣みたいな物があったりしますか?」

「はい。聖剣はありますよ。他国の国宝として保管されているので…本末転倒なのですけど」

「…あー…使うに使えないという感じですか」

「一応、その国に勇者がいる時は貸し出すようですが…現在は宝物庫でお休み中でしょうね」


色々あるんだろうけど…まさに持ち腐れ。


「…と、話を戻しますね。魔力ですが、計測してみますか?」

「え?できるんですか?」

「ええ、少々お待ち下さい………どうぞ、こちらの水晶に触れて下さい」


メリルさんは、テーブルの上に透明な水晶玉を置いた。

これ、あれだ、占い師が使うやつ。


「こちらに手の平を置いてください」


ドキドキの測定タ〜イム。


「では…」


水晶玉に手を置く。

んー…?

水晶玉の中が濁ってきた。これは何をどう計測しているんだろう?


「…!?」


段々と様々な発色発光をし始める。

鮮やかな原色から淡い色合いまで、次から次へと変わっていく。


「こ、これは…」


メリルさんが声を絞り出すように呟いた。

やがて、水晶玉が全体的に真っ白な光で満たされると、その幻想的な一時が終わった。


「…こんな事が…?…いえ、彼はワタリト…あり得ない話ではない…?」

「あの、メリルさん?これはどう解釈すればいいんですかね?」

「…しかしこんな事例は…上に報告…」

「あのー、メリルさーん?」

「え?…あ、す、すみません!ちょっと混乱しておりました。…えー…何と言うか、あり得ない結果です…」


「え!?」


「…説明致します。まず、色は属性を表すのですが、エッジさんの場合、恐らく全属性に適性があります。…これは、前例がありません。通常、相反する属性はどちらか強い波長しか表れないのです。例えば、火の属性が得意であれば、赤く光りますが、相反する水属性の青色は表れません」


…もしかしてチートきた?


「しかも、属性色は個人では2色、多くても3色までしか確認されておりません。それをあれだけ色とりどりに見せられると…故障かと疑う所でした」


うーむ。

神器を疑うのは神様を疑うのも同義だろうしなぁ…。


「挙げ句の果てに…」


言葉が痛いです、メリルさん。


「…水晶玉を埋め尽くす光、これはおよそ、256人分の魔力を持っていると考えられます。ちなみに、私の場合ですと、水晶玉の中心部から半分くらいの大きさで発光しますので、およそ16人程度の魔力量となりますね」


…これはもうチート決定?


「…エッジさんの魔法能力は、史上最高になるかもしれません。…資質無しでこの結果は、想定外過ぎますよ…」


メリルさんがこめかみに手を当てて、首を振っている。

…やれやれだぜ、的な?


「あのー、これって凄い事なんですかね?」

「…凄い、という言葉で言い表せない程の凄さです…」


これは…


「無かった事に…」

「無理ですね。私の立場上…見逃せない事実なのです」

「そうですか…。うーん、故障じゃ済まないですよね〜」

「…普通、誇るべき所なのですが…エッジさんは本当に嫌そうにしますよね…」


メリルさんがなんとも言えない表情だ。

呆れているような、納得いかないような、苦笑しているような。


「僕としては、アルセラさんと一緒にレムリア山を目指したいので、余計な柵は作りたくないんですよ」

「レムリアですか!?…あの、本気で…?」

「目標、ですよ?アルセラさんも乗り気だったし、僕も未知の領域に行ってみたいので」

「そうですか…」


メリルさんは、少しの間目を閉じて表情を消した後に、ゆっくりと口を開く。


「分かりました。報告はしますが、大事にはならないように手を回しておきましょう」

「…いいんですか?」

「今はまだ、あなたは無力ですから」


…なんでそこで微笑を浮かべるんだぁぁぁ!!

ちくしょー!早く魔法覚えて見返してやるぅぅっ!!※被害妄想中


「では、魔力の話に戻ります」

「…はい」


魔力には、波長がある。

波長は人によって変わるのでそのパターンを計測して記録する事で個人を特定したりできるわけだ。


波長によって、得意属性、不得意属性が出てくる。例えば火属性の波長に近い人はそれが得意属性となるが、相反属性である水属性が苦手になる。波長が合いにくくなるので、制御が難しいとの事。全く使えないわけではないし、練習すればそれなりに使えるみたいだけど、その時間を得意属性に向けた方が、余程役に立つと、一般には認識されているそうだ。


「それで、現在の魔法属性は…」


基本として、6個の属性がある。


火…火を点ける、物を燃やす、爆発させる。

水…水を発生させる、水を降らせる。

土…土を固める、土を操作する※砂状も可。

風…風を起こす、吹き飛ばす、風で切りつける。

光…闇を照らす、光線を放つ。反射障壁を張る。

闇…光を閉ざす、影で隠す、減衰障壁を張る。


それから、特殊属性として…


冷凍…凍らせる、氷を発生させる。

雷電…雷を発生させる。

空間…空間を制御する?

時間…時間を制御する?


特殊属性は、氷と雷電以外は神器の情報からなので、扱える者は現在はいないそうだ。

使えないから調べようも無くて、保留状態なんだってさ。

…僕は使えるのかな?


それから、活力属性として…


回復…体力を回復させる。

再生…傷などの修復。

強化…身体能力の強化、補助。


とあるそうだ。

回復はあくまでも疲労の回復なので怪我の治療ではないとの事。

治療は再生魔法で行う。

強化魔法はスキル発動にも関わるそうだ。

こうしてみると、系統がそれなりに分かれていて、目移りするけど…


「僕の場合は、何から始めたらいいでしょう?」

「エッジさんは不得意属性が無さそうなので、好きなようにできるかと」

「…そうなると、やっぱりまずは、火ですね!」

「何がやはりなのかはさて置き、イメージしやすいですから、妥当かと思われます」

「…お願いします」

「まずは、魔力操作です。身体を巡る魔力を手の平に集めるようにイメージしてください」


…むむ…手の平に集めるイメージ。

ん、手の平が温かくなってきた?


「どうですか?温かくなってきましたか?」

「はい」

「…流石ですね。では、テーブルの上に手の平を上にして置いてください。そして、チイサキトモシビヲアラワセ、と唱えてください」


あ、また、なんかこもったような言葉だ。


「あの、もう一度お願いします」

「チイサキトモシビヲアラワセ、ですよ」

「チイサキトモシビヲアラワセ…」


おわっ!?

手の平から、ロウソクの火みたいなものが浮かび上がった。

ゆらゆら揺れてる…。


「…できちゃうんですねぇ…」


あら?メリルさんが無表情ですよ?


「普通は一月掛かるものなのに…」


なんだか、じとーっと見つめられてる。

こんな表情、レアじゃない?


「あはは…まあ、ワタリト補正という事で」

「………。いいでしょう。では、次にその灯火を維持したまま、大きさを変えてみてください」


大きさ…となると魔力の出力調整か。

大きくなるイメージを…


ボワッ


「…できちゃうんですねぇ…」

「あはは…は…」


メリルさんがまた無表情だよぉぉ!


「数日かけるものを一瞬ですか…」


どうしよう、自重した方が良いのかな?

っていうか普通を知らないんだから、どうしようもなくない?


「エッジさん、休憩しましょう。このままだと私が持ちません。…二息にそく程入れたら再開しますので、またここにお戻りください」

「はい…ご面倒おかけしてすいません…」

「え?あ、あの、エッジさんのせい…ではありますけど、エッジさんが謝る事ではないですよ。私自身の問題ですから…」


少し慌てるメリルさんが可愛いので、僕は満足です。


「で、では、後程…失礼しますね」


可愛いメリルさんが去ってしまった。


ちなみに、二息って、一息入れるの2回分の事で、時間的には30分くらいと考えていいみたい。

アバウトだけど砂時計で測れるから意外と細かい。


「さて…折角だから、アルセラさんの様子を見に行こうかな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ