おやすみまで。
初日~
防具屋で装備購入、そして宿屋で不思議系天然女将に遭遇。
さて、部屋に戻り、再びお話である。
「とりあえず、明日からなんだが…」
「はい」
「朝は軽く訓練、それから簡単な依頼、終わったらまた訓練、という感じでいいか?」
「そうですね…あと、魔法の事や知識の事も勉強したいです」
「そうか、そうだな。座学はあたしは苦手だから頼める奴に頼むとしよう」
「よろしくお願いします」
カーンカーンカーンカーンカーン
カーンカーンカーンカーンカーン
「おっと、日没の鐘だな。それじゃあ飯にしよう」
「はい」
1階に降りて、テーブルに着きました。
どんな料理が出てくるのでしょう。
「パンとスープと肉…うん、普通の展開だね」
「どうした?なんか変か?」
「いえ、知らないものが出てきたらどうしようかと思ってたんですけど、見た事がある物で良かったなぁと」
「あー…そりゃそうか。結構地域で変わるもんなー」
「ちなみに、食材は何か分かります?」
「ああ、これはパンだから小麦だろ?」
首肯する。
「こっちのスープは…玉葱、トマト、じゃが芋だな」
うーむ、全く同じ食材なのか?
翻訳の性能がいまいち分からないなぁ…。
「こっちの肉は、地鶏だな」
地鶏か…。
「これは、この辺の名産品だったりしますか?」
「んー、いや、地鶏だからなぁ。こいつは、鳥なのに地面を走り回るから地鶏っていうんだよ。結構、その辺にいるから、名産品ではないな」
ややニュアンスが違うけど、大きな誤差ではないか。
でも、説明を聞く限り、鶏という認識で良さげ?
「ちなみに、大きさはどれ位ですか?」
「んー、1メートル前後だな」
でかっ!?いやいや、それよりも単位…
「重さはどうですか?」
「重さ…30とか40キロじゃないか?」
ふーむ。単位は訳されてるっぽい?
んー、ま、分かりやすいからいいか〜。
「結構、大きいんですね〜」
「そうか?大きい地鶏は2メートル超えるぞ?」
それはもう、ダチョウ!!
「でかい方が味が締まって美味くなるんだ。あたしは3メートルのを仕留めた事があるけど、あれは美味かったなー。エッジも機会があったら食ってみろ」
「ぜ、是非とも食べてみたいと思います」
地鶏…そうかー…戦って狩らないとダメなんだー。
「よし、それじゃ、さっさと食って、修練するぞ」
「あ、はい。では、いただきます」
というわけで、まずはスープ。…うん、塩…鶏ガラの出汁もあるような、あっさりした味わい。野菜は普通に美味い。そして、特に変な所は無い。食材は似通った物と思っても良さそうだね。
次はパン…これは、フランスパンに近いかな。味は、何かと一緒に食べたいなという感じ。スープにつけて食べるのが普通みたいだ。
そしてメインの肉は…おおっ、ナイフで切ったら肉汁が…良い焼き具合じゃなかろうか。皮がパリパリ、中ジューシー…王道、横道に逸れる事のない、正に王道!!塩と、香辛料がふわっと味付けされていて、口腔内がパラダイス!
「肉…美味しいですね!」
「んむ、これ、は良い肉、だな、んむ」
アルセラさんはバクバクと食べるから、見ていて気持ち良いなぁ。
「大きな地鶏…という事ですね?」
「そうなのよ〜。2メートル超えなの〜」
天然さん登場しちゃった。
「高かったんじゃないのか?」
「それがね〜、安くして?ってお願いしたら、安くしてくれたのよ〜」
「「…」」
うん、アルセラさんと僕の気持ちが通じ合いました。
「そうだ〜。食後にリンゴ食べる?新鮮なリンゴを頂いたの。甘酸っぱいわよ〜」
「ん、頼む」
果物も大差は無さそうだ。なんて事を考えながら、黙々と食事をして、一通り食べ終わった頃に、お盆に湯呑み茶碗を2つのせて、女の子が近付いて来た。
「…どうぞ」
「ん、サティ、ありがとな」
湯気がゆらゆらと漂う。香りは…これは、紅茶?
置かれた茶碗の中を覗くと、茶色の背景に、紅茶色の液体が注がれていた。
「…お茶です」
「ありがとう」
サティちゃんは、僕が御礼を言うと、頷いてから厨房の方に去って行った。
うん、可愛い。保護欲が湧き上がる、そんな可愛さ。
「…どれどれ…ん、紅茶だ」
「知ってたのか?」
「あ、同じかどうかは分からないですけど、そっくりな物がありました」
「へぇー。…こういう所はあんまり差がないのかね〜?」
「うーん、その方が良いですし、まぁ、食べる物とかは似通ってくるものなんじゃないでしょうか」
「ふーん、そんなもんか」
料理系の知識とかはあまり問題にならない…よね?
「ところで、砂糖とか甘味料ってあります?」
「砂糖はなぁ、そこそこ高いぞ。贅沢品の部類だ」
「あー、そうなんですね〜」
「エッジのとこは安いのか?」
「まあ、普通に買えますね。甘いお菓子とかデザートは沢山ありました」
「へー…お菓子っていうとクッキーとかジャム?」
「そうですね。それもありますし、チョコとかケーキとか飴とか、アイスとか…」
「待て待て、知らない物ばかりだぞ?」
「あー…、こっちには無いのかも…」
「そうか…それは美味いのか?」
「もちろんですよ〜。甘い物が好きなら、間違いは無いでしょう」
「…お前は作れるのか?」
おぉ…アルセラさんの空気が変わった…。
「材料を揃えれば…なんとか作れる物もありますけど、料理人と試行錯誤しないと、完璧には再現できないでしょうね」
「よし、折を見て作ろう。それも修業のうちだな、うん」
なんだろう。とても良い笑顔ですよ?
甘い物が好きなのかな?
「頑張ってみます」
それから、ケーキの話でやたらと盛り上がって、何故かサティちゃんまで興味津々で聴いていたりして、楽しい団欒を過ごしてから、食事を終えた。…久し振りの団欒は身に沁みますなぁ。
「よし、始めるぞ」
所変わって、庭に来ました。辺りは薄暗く、月明かりのみでございます。月は月でいいらしい。ただし、でかい。日本で見ていた月の軽く3倍はある。違和感があるけど、幻想的でそれはそれで良いかもしれない。ちなみに星は疎らな感じだ。…それでも、日本に比べたら多いけどね〜。
「寝る前にやるのは、大体は型の確認だな。エッジは何かできるか?」
「えーっと…型ではないですけど、トレーニングはできますので、そっちをやろうかと」
「強化訓練か?…うん、そうだな、基礎から始めないとな」
僕はまず、軽く準備運動を始める事にした。
屈伸運動をベースに身体全体を動かして、関節をぷらぷらさせて、ほぐす。
「…エッジ、何してるんだ?」
アルセラさんが、ザ・怪訝、という表情で聞いてきた。
「準備運動ですよ。適度に身体を動かす事で、程良く身体を温めるんです」
「それは…必要なのか?動かしていたら同じ事だろう?」
「んー…、結果としてはそうなんですけど、これは、過程をより良くするものなんですよ。自分の身体の状態も分かりやすいですから、必要ではないですけど、不要なものでもないと思いますよ」
「ほう…そういうものか…。そういえば、お前は身体の事に詳しいのか?」
「一応、それなりに、ですね」
「武術の教官とか、治療士でもしていたのか?」
「いえ、なんというか、補佐をする方というか、癒す方というか」
「よく分からんな…そうだな…それじゃ、あたしがどうしたらもっと強くなれるか、というのは…」
「んー…体幹を鍛えたら、スキル?ですか、あれはもっと強化できるんじゃないでしょうか」
「…まさか、答えが返って来るとは思わなかったが、たいかんってなんだ??」
「えーっと、要は身体の軸、ですね。多分、アルセラさんは右をメインに使っているので、筋力のバランスが右に寄ってると考えられます。その分、反動が大きくなるんだと、僕は思うのです。なので、例えば、空中にロープを張って、その上を歩くような訓練をして、体幹を鍛えれば…流星衝みたいな反復技は、より良く使えるのではないでしょうか?」
「…すまん、何を言っているのかさっぱりだ」
「そうですかー。んー、2、3ヶ月くらいトレーニングしたら実感が出てくるとは思いますが…」
「…本当か?試す価値はあるんだな!?」
「少なくとも、身体の強化には繋がると思いますよ」
「よし、やろう!さあ、教えてくれ!」
あれー?立場が逆転したぞー!?
「えーっと、では…そうですね、まずは、簡単な所から始めましょうか。地面にうつ伏せで、つま先と肘で身体を支えます。この時腰だけ曲がったりしないようにお腹に意識をしましょう。そして、ここから片足を上げて維持します」
「おお…これは…じわじわとくるな」
「この状態を保っている筋肉が、鍛えられる事になるわけです。まあ、こっちのヒトの身体の構造が僕の知っているものと全く同じかは分からないので、試していかないとダメなんですけどね。では、とりあえず30程数えたら足を交代しましょう」
「そうか…こうやって鍛えるのか…。只管武器を振り回すのとは全然違うな」
「武器を振る為の筋肉を鍛える事で、より的確に振るう事ができるはずです。ただ、身体のバランスにもよりますけど…」
「闇雲に鍛えても意味は無いって事だな?」
「そんな感じです」
それから、数パターンのトレーニングをした後に、いよいよ、ロープ渡りの番だ。
「とりあえず、ここだと…あの柵とそこの木の間にロープを渡せば…」
「ロープだな、持ってこよう」
それにしても、こっちには筋力トレーニングとか、無いのかな?
ストレッチとかも無さそうだけど…回復魔法があるから…?
「持ってきたぞ、これを結ぶんだな?」
「あ、はい、こっちにこうして…」
「で、この上を歩くわけか…よっと」
僕の胸辺りの高さにロープは張られて、アルセラさんは軽く跳び上がり、ロープの上に乗った。
…マジか。
「ここを往復すれば良いんだな?」
「はい」
すっ、すっと、ロープを歩くアルセラさん。凄いな。
「んー、意外と簡単じゃないか?」
「そうですね、これは簡単みたいですね。では、一旦降りて下さい」
僕は、それからロープを張り直し、再びアルセラさんに乗ってもらった。
「ではどうぞ」
「うん…あ…っ」
今度は、アルセラさんはバランスを取るのに必死だ。
今回張ったロープは若干緩くしてあり、揺れるのである。そして、僕もまた、揺らす。
「おおっ…とっ、っく」
「どうでしょう?」
「これはっ…中々キツイなっ」
それでも、バランスを取りながら、アルセラさんは往復してしまう。
流石というべきか。
「どうですか?普段あまり使わない筋肉を使うので、いつもと違う疲労感がありませんか?」
「そう…だな。内側?がきつい感じがする」
「それに慣れれば、より安定した動きができると思います」
「…それは楽しみだ」
迫力のあるニヤリを頂きましたー。
「よーし、続けるぞ!」
それから、体感で1時間程修練をやって、僕達は部屋に戻った。
「明日は、日の出の鐘には起きるんだぞ」
「分かりました。ところで、明日受ける簡単な依頼というのはどんなものですか?」
「エッジは7級だから、せいぜい、採集系が幾つかあるくらいだろう。あとは雑用が殆どだ。なーに、3日もあれば昇級できるから、そうなれば外域で簡単な狩りもできるようになるぞ」
「あ、そういえば級の目安ってどんな感じですか?」
「おっと、その辺も説明しなきゃだな」
冒険者は強さの目安として、7級から1級まである。1級の上にも特級、超級、極級とあるけど今は気にするなとの事。7級は見習い、超初心者扱い。6級で冒険者見習いとなる。5級で初級冒険者と言われ、ようやく冒険者として本格的に動けるようになる。4級、3級は中級冒険者で、3級になると一人前といえるそうだ。2級から上級冒険者となり、周りから一目置かれる存在になる。1級は普通に辿り着く冒険者の頂点。その上は最早人外と呼ぶらしい。殆どの冒険者は、特級から上は目指すものではないという認識なんだそうだ。
「なるほど…そうなると、僕は当面は5級を目指す感じですかね」
「そうだな。その辺が一つの目安だろう。せめて浅域に行けるようにはしたいからな」
「その、せんいき?というのは、どの辺りですか?」
「ああ、深淵の森の事は説明してなかったか。まず…」
というわけで、深淵の森について。
この大陸は、中心から半分以上はこの森に覆われているらしい。広さに関しては、外周しか分かっていない。その外周も、徒歩で4年以上は掛かるとの事。軽く日本一周越えてる…とりあえずめちゃくちゃ広い森らしい。しかも、この森はその領域を徐々に広めていて、外域まで森の木が侵食してこないように、定期的に伐採も行っているそうだ。
それで、外域とか浅域とかは、森の区分の事で、大陸の中心に向かって、外域、浅域、中域、深域と分けている。森の入り口である外域は、ほぼ草原となっていて、低木がちらほらとある領域を指す。この辺りは獣や、弱い魔物がいる。浅域は木が多くなってきて、魔獣も出るようになる。中域はもう森と呼べる領域で、開けた場所は少なくなる。この辺りから魔獣の変異種も出始めるので、3級以上じゃないと生き残れないだろう、との事。
そして最奥の深域なんだけど、ここは中域よりも木と木の間隔が狭く、日中でも灯りが必要な所なんだって。別名、闇の森と言われるくらいで、ゴースト…肉体を持たない魔物の総称…がウヨウヨいるから、魔法士が必須らしい。ただ、大型の魔獣、魔物はいないそうだ。まあ、いずれにせよかなり厄介な領域なんだと思う。
それから、深域の先にレムリア山と呼ばれる領域があるそうだ。ここに辿り着けたのは未だ一組のユニット…パーティの事…だけなんだって。しかもそのユニットは、引き返したその途中で力尽きたらしい…。後日、他のユニットが遺品を見つけ、その中に手記があったそうだ。
「…それでな、その手記にはな、レムリア山の頂上には金色に輝く塔があったと書かれていたんだ。前人未到の地に誰が建てたのか?いつからあるのか?その手記以外の情報が全く無い、正に伝説なのさ。…唆られるだろう?」
「前人未到の地に聳える謎の塔ですか…ワクワクしますね!…あれ?でも、遠くから見えないんですか?」
山の頂上なら遠くから見えるのでは…?
「それがな、山の中腹から上は常に雲に覆われていて、何も見えないんだよ。何処かの国に展望台ってのがあって、観察している学者がいるらしいんだが、影すら見えないんだと。だから、手記に残された言葉も真偽の程は定かじゃないっつうオチなんだが…あたしはあると思うんだよな」
そういう事でしたか〜。
「それじゃあ、目指すはレムリア山ですね。アルセラさんに少しでも早く近付けるように、頑張りますよー!!」
「…お前…信じるのか?」
「何をですか?」
「いや、手記以外には存在は証明できてないんだぞ?」
「だから確かめに行くんじゃないですか?」
「いや、お前な、深域を越えるのがどれだけ大変か分かってないだろう?」
「最悪、空から行けば良いんじゃないかと思ってます」
「…は?」
「…魔法でひょーいって」
「馬鹿か。飛べるわけないだろ…そりゃ少しは飛べるだろうけど、深域は、歩いて一月は掛かると言われているんだぞ?」
「ふ、ふ、ふ。僕の世界には飛行機というものがありましてね。別に空を飛ぶのは不思議な事では無いんですよ?」
「…なんだよそれは?」
「空を飛べる道具です。100人以上乗せて数百キロメートル以上飛びますよ?」
「はぁぁぁ!?そんな馬鹿な!?!?」
ふむ。
こっちのヒトはまだ空を飛ぶという事には、あまり関心が無いみたいだね〜。
「まあ、こちらの技術との兼ね合いもありますので、この世界で飛行機が作れるかは、まだ分かりません。ただ、その可能性はゼロではないと思います」
「…な、なんていうか…エッジはやっぱり、ワタリトなんだな…」
「むむ、ちょっとは見直してもらえましたか?」
「…ん、まあ、ちょっとな。…あー、その、なんだ。別に侮ってはいないからな?」
「はい、分かってます」
「そうか。…うん、それならいいか」
アルセラさん、結構、気を遣ってくれているんだよなぁ。まあ、まだ出逢ったばかりで、望み過ぎるのもあれだけど…もう少し友達みたいな感じに…って待てよ?徒弟になってるから無理じゃね?あれ?師匠と弟子、つまりは、教師と生徒みたいな関係…だとするとなんかもう、アウト?いやいや、子供じゃないんだからそこはこう…大人な関係?…っていやいや、そうじゃなくて…
「エッジ?…大丈夫か?」
「ふぉぉぉ!?あ、すいません、いや、ぼーっとしてましたよ、ええ。ぼーっとね」
「そうか。まぁ、今日は色々あったからな。…んー…それじゃそろそろ休むか…」
「あ、あー、そうだ、アルセラさん、マッサージしてみます?」
「…疲れているんだろう?」
「そんなに時間は掛からないですよ?」
「そうか?…んー、それなら、腕を頼んでもいいか?」
「お任せ下さい〜」
というわけで、いよいよアルセラさんにマッサージ。
「では腕を失礼しますね」
アルセラさんの右隣にスタンバイ。
そこで僕は、遂に現実と向き合う。
アルセラさんは現在、部屋着のような布の服を装備中。
厚手の長袖シャツとスウェットみたいなズボン。白い布…綿?…だから、アルセラさんの小麦色の肌が妙に生々しいわけで、そのスタイルは隠されていない。
つまり、何が言いたいかというと。
巨大。
…。
……。
………あかん!!これはあかんて!!
見ないように意識しないようにしてたけど、近くで強制的に視界に入ると、もうダメだよ!凄いよ!こんな膨らみは漫画とかアニメでしか存在してないと思ってたよ!
「エッジ?」
「ふぁいっ」
はっ!?意識が飛んでいた…?
「す、すいません、ちょっと意識が…」
「やっぱり疲れてるのか?」
「あ、いえ、大丈夫ですよ!色んな意味で覚醒しましたので」
「…?」
凄い破壊力だぜ…一度直視しただけで意識を持って行かれるとはな。
流石の俺でも耐えきれなかったぜ※混乱中。
「では改めて腕を…」
集中!
集中だ!!
まずは状態を確認。ふむ。やや硬くなっているかな。まずは慣らしで軽く摩っていこう。手の平で覆うようにして流すように摩る。そして、手から揉んでいく。指先に感覚を…集中。
「む」「ん」
またこの感じだ。ピリピリする感じ。それに反応するアルセラさん。
吐息のように漏れ出した淡く甘い声って、どうしてこんなにも色っぽいのか…。
「メリルが言ってたのはこれか…」
「嫌な感じはないですか?」
「んーそれはないな。むしろ、良い感じだな」
ふむ、強さはこんなもんで…前腕部…上腕三頭筋、おお…良い筋肉だ〜。上腕二頭筋と三角筋と…うんうん、流れが良くなったんじゃないかな?妙な引っかかりがなくなった気がする。スキルによる疲労がどんなものかはまだなんとも言えないけど、普通にマッサージしていくだけでも効果はありそうだね。
「…と、こんな感じですが如何でしょう?」
「そうだな…」
アルセラさんは腕を曲げたり伸ばしたり、手を開いたり閉じたりと、動きを確認している。
「こう、動きが滑らかになった気はする。…あとは明日次第だな」
「本当なら首肩背中腰までやっておきたいんですけどね〜」
「…そうなのか?」
「あ、でも効果がどうなるか分からないので、今日の所はこれで終わって、明日の結果次第でまたどうするか決めた方が良いと思います。僕の知識と違うと、どうなるか分からないですから」
「…そうだな。明日次第、か。それじゃ、とっとと寝るか」
「はい。では、おやすみなさい」
「ああ、ゆっくり休め」
こうして、僕の異世界の1日目は終わりを迎える事になった。
…いや、なんていうか、未だ実感がね…微妙。
ワタリト…魔法…時空神…深淵の森…冒険者。
どうなるんだろうなぁ…あー…眠い………。
本当はマッサージというよりは魔力治療という感じです。




