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防具屋から宿屋。

初日~


 ギルドを出て防具屋へ行ったらドワーフと遭遇した。

「はー、お前が遂に徒弟をねぇ…」


しみじみと呟くドワーフのオヤジはディフズさん。身長は150くらいでガッチリ体型。頭はツルツルだけど髭が凄い。なんていうか、頭と顎が逆なんじゃないかと思うくらいに。編み込みとか駆使してるんだよね。手入れとか大変そう。顔は意外と可愛い感じにまとまってるんだけど、雰囲気が威厳のあるものだから、違和感が結構あったりする。愛嬌のある雷親父みたいな?


「軽めの動きやすいやつを見繕って欲しいんだ」

「…あ、ああ。…いやしかし…アルセラがなぁ…」


ディフズさんはやや放心状態である。

…アルセラさんって、みんなにどう思われているんだ…。


「どれ、小僧、ちょっと測るぞ」


ごつごつした手が僕の身体を撫でていく。


…手がでかいなぁ。

頭がツルツルだなぁ。

この髭は固いのかな?

………。

ええ、オヤジに身体を触られるこの微妙な状態から、逃避してますとも。

アルセラさんは鎧に心を奪われているし。


「ふーむ、痩せてはいるが締まっているとも言えるな。皮鎧で良いだろう。小手と脛当てはおまけしてやろう」

「いいんですか?」

「ああ、アルセラの徒弟第1号記念だ」


その呼び方はなんか嫌なんですけど。


「それに、ワシの子供達を褒めてくれたからな」


自分の作品を子供と呼ぶか。

間違いない。このオヤジはマニアだ!!


「いえいえ、実際、素晴らしい品々ですよ。なんというか、一切の妥協無く造られた、という感じがします」

「おぉっ、分かるのか!?お前、もしかして鑑定眼でも持っているのか?」

「鑑定眼というのは知らないですけど、見ていたらなんとなくそうじゃないかなぁと」

「ほほぅ…まぁ、ワシの子供達はその辺の防具とは一線を画すからな。お前の選定眼は確かなものだ。自信を持っていいぞ!!」

「あ、ありがとうございます」


ドワーフのドヤ顔…ドワァ顔?


「よし、それじゃちょっと待ってな。持ってきてやる」

「あ、はい」


奥へと消えるディフズさん。

しかし皮鎧か…まさか本物の鎧を着る事ができるとはなぁ。

人生初の「防具を装備した」っていうシステムメッセージが流れちゃうよ〜!


「よし、小僧、着けてみろ」「はい!」


防具キター!

ふむ、なんの皮か分からないけど、硬いゴムみたいな感じがする。色は黒くて、表面は意外と滑らかだな。作りとしては胸当てと、背当てを肩と腰の所でつないである、簡素なものだ。持った限り、重くはない。でも、3、4キロくらいはあると思う。えーっとこれをこうして…ああして…


「エッジは皮の鎧を装備した!」


思わず自分で言ってしまう。


「ふむ、胴回りを少し調整すれば大丈夫だな。よし、外せ」

「はい、お願いします」


ところでこれ、いくらするんだろう?

値札とかついてないから相場が全く分からない…。


「あの、アルセラさーん、皮鎧って安いですよね?」

「んー?まあ、物によるけど、安い方だな。今のやつなら…2,000シェル前後じゃないか?」


…結構高くない?

いや、革ジャンとか数万円と考えるとそうでもないか?

技術料、加工料、素材料…色々あるだろうけども、その辺りが相場なのかな。


「おう、仕上がったぞ。ほれ、着てみろ」


自分専用の装備だ…!


「…、…丁度良いです!」

「おう!あったりめぇよ!」

「終わったか。で、いくらだ?」

「そうさなぁ…記念価格で1,500でどうだ?」

「…随分と気前が良いな?」

「ガッハッハ。こんなめでたい日は滅多に無いからな」


えーっと、1,500だと大銀貨1枚、銀貨5枚か。

んー、他の相場が知りたいなー。


「あのー、ちなみに、あのフルプレートはいくらくらいですか?」

「ん?あー、あれか。あれはな、表面にミスリルをコーティングしてあるからな、48万だ」


…なんか高そうと思っていたけど案の定だ!

日本円にして480万…高級車並みか。さすがにこれは参考にできないな。


「あそこの黒い胸当てはどうでしょうか?」

「あれは黒鉄製だな。あの辺は2,000って所だ」


ふーむ。あれが一番安いのかと思ったけど、やっぱり金属の方が高いのかな。


「皮で高いのはどれくらいしますか?」

「ふーむ、ワシが扱ったやつだと、キマイラの皮だな。あれは80万だったな」


ピンキリでしたー。そーですよねー。

っていうかキマイラいるんだ…会いたくないけど見てみたいな。


「あ、ところでミスリルって、やっぱり貴重なんですか?」

「採れる場所が限られるからな。だが、加工できるやつがそんなにいないから、そこまで貴重でもない。そしてワシはもちろん加工できるぞ!」


やはり優れた職人さんなんだね!

そしてあとは…金属といったらあれは外せない。


「オリハルコンってありますか?」

「おう、あるぞ。ただ、あれはかなり貴重だ。ワシでさえまだ数回触っただけだからな」

「おぉーっ!!」


オリハルコン…やっぱりあるんだ!!

うっひゃーこれはいつか絶対手に入れなければ!!


「エッジ…お前、もしかして鍛冶職人になりたいのか…?」


アルセラさんが不安げな声色になっちゃった。


「いえ、そういうわけではないですよ?まぁ、自分で作るっていうのも惹かれますけど、こうして優れた職人さんがいますからね。僕は頑張って素材を集めたいと思います!!」

「そ、そうか。…うん、目標があるのは良い事だよな」


…あれ?アルセラさんが若干引いてる…。

ふっ。男の浪漫は、中々理解されないものさ…。


「ガッハッハ。エッジだったか。お前は見込みがあるな!素材を持ち込んできたら、割引してやるぞ!」

「ありがとうございます!良い素材見つけます!」

「なんだよ、それなら残しとけば良かったな…」

「…どうした?」

「今日フレイムリザードを狩ったんだよ。…ギルドで換金しちまったけどな」

「そうだったのか。フレイムリザードだと、火耐性に優れた防具を作れるんだがな。まぁ、次に仕留めたら持って来い。小僧の装備を作ってやろう」

「ああ、そうするよ」


なんだか職人さんと繋がりができたみたい。

アルセラさんのおかげだね〜。


「それじゃ物はこれに入れてくれ。あと、代価はこっちな」


アルセラさんはそう言いながら、サクサクと会計を済ませた。

頼りになり過ぎるぞ!


「それじゃいつでも来いよ!」


何やら、僕まで常連みたいな扱いになったよ!やったね!

さて、そんな感じで店を出て、僕はアルセラさんの後ろをてくてくとついて行き、宿屋に辿り着いたわけだけど。

正面の見た目は、二階建ての一軒家にしか見えない。

奥に長いみたいだけど、それ程大きな宿屋ではないのかな?


「ここはあたしが拠点にしている所だ。小さい宿だが、飯は美味いし、静かな所だから、落ち着けるんだ」


確かに、商店街みたいな地区からは離れた場所で、閑静な住宅街みたいな感じだ。


チリンチリン


「いらっしゃいませ〜」


宿に足を踏み入れると、のんびりとした声が耳に届いた。


「ハーティ、部屋は空いてるか?」

「あら、アルセラちゃん、おかえり〜。…あら〜?恋人?」

「ちがうっ!」


見た目は優しそうなお姉さんなんだけど…そこはかとなく危険な香りが漂う女性だな。


「こいつは徒弟だ!!」

「?」


女性は首を傾げながら、アルセラさんと僕を交互に見ている。

青い瞳がキランと輝いた…ような気がする。


「…あら〜。誰でも初めてはあるのよ〜」


なんの事?


「アルセラちゃんがリードしてあげるのよ〜?最初は優しくしてあげるの。慣れてきたらお互いに好きなようにすればいいんだからね〜」


ああ、修業の事か〜。


「あ、でもね?避妊はちゃんとするのよ〜」


「「そっち!?」」


なんの話してんのこの人はーっ!?

思わず、前傾つんのめりツッコミをしちゃったよ!

そして、アルセラさんは顔を赤らめて驚いているという、不思議な表情だよ!


「…あら〜?童貞っていうから〜…」

「と!て!い!だ!!」

「あの、師匠と弟子という関係なんです」

「…あ〜、そういう感じね〜」


女性はうんうんと頷いて、一人で納得している。

…くっ、危険だと感じたまではいいけど、対応が難しいぞ…。


「とにかく!部屋を頼む!」

「は〜い」


女性は、パタパタと足音を残して二階へと消えて行った。


「…ああいうやつなんだ。悪気は無いらしいがな」

「理解しました…」


気を取り直して、宿の中を観察。出入り口は真ん中辺りに位置していて、正面側に二階への階段がある。左側は円テーブルと椅子が置いてあり、食事スペースになっているようだ。右側はカウンターとその奥にキッチン、という感じかな。ん?誰か出てきた。


「…」


目が合っている。見た感じ、小学生高学年くらい?


「こんにちは」


目が合っているので、挨拶をしてみた。


「…」


…目は合っている。


「サティ、こいつはあたしの徒弟だ。しばらく厄介になるから、よろしくな」

「…」


あ、頷いた。

そして、奥へ消えて行った。


「…あいつは、親父に似たのか無口なんだよ。まあ、しばらく見ていたから、大丈夫だろう」


…何が大丈夫なんだろう?


「お待たせ〜。アルセラちゃんのお隣のお部屋でいいかしら〜?」

「ああ、大丈夫だ。先にとりあえず、3日分頼む」

「はいは〜い」


先払い方式かな?


「それじゃ、これ鍵ね〜。えーっと、なに君?」


…子供扱いだなぁ。


「エッジです。24歳です」

「…エッジ君…24歳…。あら〜?おばさん聞き間違えたかしら〜?」

「聞き間違えてはないですよ。間違いなく24です」

「そうなの〜?大きなフェアリーさん?」

「いえ、人間です!」

「インゲン?お豆さんなの〜?」


…なんでやねん。


「エッジはヒューマだろ?」


ん?…あれ?ひょっとして…


「あの、こっちの種族って…」

「あ、そうか。あー、あたし達はヒト属のヒューマっていう種族だ。…お前、ヒューマだよな…?」

「それで合ってると思います。僕の方ではヒト、人間とか幾つか呼び方があったんですよ。っていうか、他の種族は居なかったです」

「そうだったのか。魔属もいないのか?」

「まぞく?え?悪魔もいるんですか!?」

「あくま?」


むむ…魔王とかいるのか…?

詳しく聞きたいけど、にこにこ笑顔の天然さんを放って置くのもあれだよね。


「えっと、その辺の摺合せは後にしましょう」

「ん、そうだな」

「エッジ君は〜、不思議君なのね?」


…くっ、天然さんに不思議と言われる、この行き場の無い複雑な思い!

にこにこの可愛い顔が逆に心を抉ってくるぜ…ぐふっ。


「じゃあ、一旦部屋に行くか」

「ご飯はどうする〜?」

「そうだな、日没の鐘が鳴ったら頼むよ」

「は〜い。それじゃあごゆっくり〜」


若干の疲労を感じながら、僕らは二階の部屋へと向かった。


「ここだな。あたしはこっちだ。荷物を置いてくるから先に部屋で待っててくれ」

「はい」


鍵を受け取って、自分の部屋へと入る。中はシンプルだ。窓際にベッドが一つ、小さなテーブルと椅子が一つずつ。一応クローゼットもある。六畳前後かな?


「入るぞ」


声と共にアルセラさんがやって来た。

手に皮鎧を持っている。あ、あの便利袋に入れたままだったんだ。


「ありがとうございます。とりあえず座りましょうか」


僕はベッドに腰を掛けて、アルセラさんに椅子を促した。


「早速ですが、さっきの続きを…」

「ああ。…んー、一から説明した方がいいよな。あー、まず、この世界にはヒト属と魔属がいるんだ。そして、ヒト属は、ヒューマ、アニマ、エルフ、ドワーフ、フェアリーという種族に分けられる。ヒューマは一般的なヒト属で一番多い種族だな。次に多いのがアニマで、こいつらは、ヒューマと獣の特徴を持った種族だ。ギルドにいただろ?耳とか尻尾があるのは間違いなくアニマだな。ヒューマよりも身体能力が高のが特徴だな。ただ、直情的な奴らが多いから、挑発とかしないようにした方がいい。そして、エルフは森の民とも言われる、基本、穏やかな奴らだな。…稀にぶっ飛んだやつもいるがな。まあ、丁寧に接していれば大丈夫な奴らだ。それから…次はドワーフか。ドワーフはさっき会ったな。防具屋のオヤジだ。まあ、大体あんな感じだ。あ、女はちゃんと髪があるぞ?なんでも、男は髭、女は髪なんだそうだ。あとは…フェアリーだな。こいつらは、基本小さい。ヒューマの子供くらいがほとんどだ。ちっこくて素早いって感じだな」


ふむ…地球型ファンタジーからそれ程外れてはいない、と。


「そして、魔属だが…こいつらはよく分からん。ヒト属と敵対してから、別の大陸に移って、あまり交流が無いからな」

「敵対…?」

「昔争ったらしいんだが、その辺の情報があやふやなんだ。まあ、大抵は魔属を悪と決め付けているがな。…時々魔属の襲撃事件もあるから、良くはないんだろう」


ふむ。こっちは調べてみないとなんとも言えないか…。


「種族に関してはこんな所だ。あとはなんかあるか?」

「えーっと…」


それから聞いたのはこの世界の事。

まず、この世界はアルテルアということ。今いる大陸はアトランといい、その隣に魔属が住むとされるムーティス、少し離れて、ヤマトネシアという島々があるそうだ。


神様に関しては、創世の女神を頂点として、火の神、水の神、大地の神、海の神、風の神、狩猟の神、破壊の神などがいるらしい。ちなみに、スキルとか魔法は神によって管理されているから、加護があるのと無いのではそれなりに差が出るとの事。…僕の、時空神は気になっている、はなんか恩恵があるのだろうか…。


次に時間の概念も聞いてみたんだけど、1日は8刻、10日で1週、3週で1ヶ月、12ヶ月で1年となっているそうだ。現時刻は、ソーラ暦1752年5月10日の下刻となる。下刻はかこくと言って、ソーラが沈む時間帯をそう呼ぶ。反対は上刻。地球の午前午後の事だね。ちなみに何時というのは〜刻で、コクという。ソーラが出てから沈むまでを1刻から5刻として、月が出てからを5刻から8刻とする。正午は3刻(または中刻)になる。分とか秒は無くてその辺はアバウトみたい。


時計は無いから、ソーラ(太陽の事)の位置で鐘を鳴らして時間を知らせているとの事。それじゃあ、曇ってたりしたらどうするんだろう?と聞いてみたら、ソーラの位置が分かる魔法具があるんだって。


魔法具っていうのは、魔法効果を付与した道具の事で、要は便利グッズの事。コンロとか、浄水器とか色々あるみたい。燃料は魔力結晶で、これは充電池みたいなものらしい。どうやら、魔法文明はそれなりに発達しているようだ。


言葉に関しては、大陸で共通言語があって、あとは種族言語があるとの事。僕の言語通訳は、この世界の言葉や文字を僕の脳内で補完通訳していると思われる。こちらから話すと、自動的に相手に伝わるように言葉が通訳されているみたい。チート、便利、万歳!


「…とまあ、あたしは学者じゃないから、こんな感じで勘弁してくれ」

「いえいえ、とても助かりました。ほとんど知らない事ばかりですからね」

「そうか。詳しく知りたいなら、図書館に案内してやるから、その時は言ってくれ」

「ありがとうございます」

「ああ、そうだ。忘れない内に、ギルドの説明もしないとな」


ギルドとは冒険者組合の事である。

冒険者の代わりに様々な事務手続きを行い、彼らの活動を補助するのが主な目的。特に納税や住民登録は、冒険者として登録できれば、基本気にしなくていいようだ。それから、素材の買取や住居の斡旋などもギルドに頼めば、冒険者は最低限の手続きで済ませる事が可能との事。

これらの事から、ギルドは冒険者派遣会社に役所が足された様な所と言えそうだ。

思ったよりもしっかりした組織なのだろう。


でも、その割には、冒険者登録が簡単だったなぁと思ったら、僕の場合、アルセラさんの徒弟という事で、物凄い便宜が図られたらしい。本当はもっと手続きに時間がかかるものなんだって。

…つくづく、アルセラさんで良かったと思う。

アルセラさんには足を向けて寝ちゃダメ!絶対!


さて次に、冒険者に関して聞いてみた。


冒険者とは?

簡単にまとめると、深淵の森と呼ばれる広大な森を探索、及び魔獣、魔物と対峙する者の事。


主な仕事としては、深淵の森の脅威を軽減する事。深淵の森は、魔物と魔獣が溢れているらしい。詳しい数は分からないけど、魔物なんかは常に発生し続けていると考えられているみたい。冒険者はそれをせっせと駆除する、というわけだ。

それから、森の資源を手に入れる事。


薬草類を手に入れたり、時々、森の所々に洞窟が発生するから、そこを攻略しつつ資源を手に入れたりする。要は、ダンジョン攻略と、採集系クエストなんだと思う。洞窟はどんなものかと聞いてみたら、地下に向かう入り組んだ穴、というのがほとんどらしい。蟻の巣穴をイメージしたんだけど、中にはちゃんとした迷宮になっているものもあるらしく、これは難易度が高いけど、貴重な資源がある可能性も高いんだって。…レアダンジョンって事かな?


これらの洞窟は奥にある魔力水晶を地上に出すと、奥の方から崩れていき、やがて消滅する。…それじゃ、巻き込まれて死ぬ可能性も?と思ったら、それ程急に崩れるわけではないとの事。でも、時々、巻き込まれて埋まる事故も無くは無いんだってさ。…うん、気を付けよう。


少し脱線したので戻そう。

話を聞く限り、所謂普通の冒険者っぽい、という認識で良さそうだ。ドキドキワクワクの大冒険!なんて浮かれそうだったんだけど、そんなタイミングで、冒険者の心得というのを教わった。


「冒険者たる者は、ただ逃げ出す事は罷り成らぬ」


…というものだ。神風根性?かと思いきや、対峙した上での撤退は良いとの事。危険を冒しても無理はダメ、という事らしい。うむ、頑張るのは良いけど無理はいかん。…チートも無いみたいだしね〜。


その他にも、冒険者のルールなんかもざっと教わったけど、まあ、社会人としては当たり前の事ばかりだった。どの道知らない事ばかりだから、手探りでやっていかないとダメだし、焦らずに行こうと思う。


「さて、他になんかあるか?」

「そうですね…あ。…トイレってどうなってますかね?」

「トイレ?」

「あー、えーと、んー、厠?便所?用足し?小便?」

「あ、あー、流しの事か」

「ナガシ?…えーと、催して、出すみたいな…」

「ん、まあ、それ、だろ?…小用の事だよな?」

「えと、あの、それ、だと思います」

「それなら、1階の奥の方にあるから、行ってこい」


…気まずいわー。逃げるように出て行くわー。

そうかー。トイレの事は流しというのか…。ちょっとオシャレ。


「あらー?エッジ君どこ行くの〜?」


1階に降りると、天然さんがいたよ…。


「あの、流しに…?」

「それなら、突き当たりよ〜。お手伝いする〜?」

「しません!!」


ナニをする気なの!?


「そう?それじゃあいってらっしゃい〜」


トイレに行くだけなのに、いってらっしゃいって…初めて聞いたよ…。

にこにこ可愛いのになぁ…なんだか勿体無い。


「…お、おお!?まさかの水洗…」


扉を開けたら、水洗和式便所がありましたとさ。

下水があるのか…あ、だから流し、なのかな?

それにしても、文明レベルがよく分かんないなぁ。


「ん?これは…葉っぱ…」


…そうか、そこは、原始的なんだね。


葉っぱは畑で作られています。

お茶に近い種類で、漢方として使えなくも無いです。

でも、御尻を拭くものを…飲むのは…

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