剣[ツルギ]
世界は闇と仮す
そんな世界を守るのか
新の世界を作ると言うか
いいや…俺は違う
俺は世界を始めるんだ
第一章 世界の硲
眠ぃ…なんだよ…
合コンなんか嫌いだよ。女なんて興味ねぇっての
どうせ女呼ぶために俺を呼んだんだろ?
どうせ顔と頭だけ良い男だよ!
世界なんて消えちまえぇ
「恭平!待てよ!」
「ん?なんだ昭人か」
「お前帰んのか?」
「ああ。興味ないし」
「途中退会はダメ」
「は?」
意味分かんないこと色々と言わないでくんない??俺はめんどくさい事は、嫌いなんだよ!
ったく…昭人は…
「帰る。じゃ」
「待ってよぉ!!!」
「着いてくんな」
「分かったよ…じゃ」
昭人は拗ねながらカラオケの店へ戻っていった。幼なじみだからってなぁ
「世界なんていらねぇ」これは俺の口癖なんだ。なんか嫌な事があるとすぐ口に出てしまう。幼い頃、母親に捨てられ父親に殴られまくったしそのせいなんだよな。
俺の名前は早瀬恭平16歳頭良し顔良しで過ごして早6年だな。
みんなには好かれてるが俺はあまり女は好きじゃない。
「あ、雨」
あっという間に大雨が降ってきた。俺は屋根の下に潜り込んだけど、隣に変な少年がいた
誰だ?
『この世界は毒だ』
「は?」
何言ってんだコイツと思っていると急に周りが静かになった。後ろを振り返ると有り得ない事が起きていた
「人が…止まってる?」
俺とその少年だけが生き物として動いていた。こんな事現実では有り得ない。そうだろう?
震えが止まらなくなった。隣にいる人は普通の人間では無い。
『世界を作らない?』
「世界を作る…だと?」
『そう。自分の意思をそのまま通した世界を持つことが出来るんだ』
「…自分の意思?」
『思いのままに出来るんだよ』
頭がこんがらがってきた止めてくれよ。
頼むから…誰か止めてよ
「お前は誰だ」
『僕の名はキルト』
「キルト…」
『どう?早瀬恭平くん』
「!?何故俺の名を知ってる!」
早くこの場から立ち去りたい、そう考えていた。キルトという男はニヤッと笑い俺の腕を掴んだ。ひぃっ!近寄るな!
「嫌だ!!!!!」
その答えを出した瞬間、キルトは笑いを消し俺に剣を向けた。殺される!!!!
『なら…死んでね』
「止めろぉ!!」
『危ない!』
俺は目を瞑り首だけは守ろうと腕を前に出した。
【カキンッ】
剣の重なり合った音がした。まさかな。剣は一つしかないんだから。
でも気になったから少し目を開いてみると前に女の子が立ち剣を構えていた。ええっ!?
「俺…死んで…ない!」
「大丈夫?」
「あ…あぁ」
「良かった。早く逃げて!コイツはあなたを狙っているの」
「ありがとう!」
俺死んでねえよ!
ちゃんと生きてるじゃねえか!でも…あの子平気かな…やべえ…心配だ。戻らなきゃいけねえ!!!!俺はそう考え走り出した
「君!大丈夫か!」
「なんで来たんですか!!あなたバカですよ!」
「バカって…」
「早く逃げて!」
「あ、危ない!!!」
キルトが女の子の腕を剣で刺した。女の子はその場に倒れ込んでしまった
「おい!大丈夫か!」
その子の周りには血がたくさん流れていた。
グロい!うわぁヤバい!!!ヤバいヤバいヤバい……
「うっ…これくらい…」
「えっと…ゴメン!」
俺は彼女をキルトから守ろうとした。キルトは、もう一度剣を向けてきた俺は死ぬのか?
いいや死ぬわけがねえよ
「止めろ!」
そう叫んだ瞬間僕の手から光が延びてきた。
なんだ…これ…
みるみるうちにその光は見たことのある物に変わっていった。
「剣…?」
そう、それは紛れもなく剣だった。怪我をした彼女もキルトも唖然としていた。一番驚いていたのは俺だった。
「何で俺が…」
『ふはははっ!やはり君だったのか!恭平君!』
「は?何の事だよっ」
急に笑い出したからビビった。焦るわあ…
「あなたがっ…光の…」
「光の?」
彼女は息を落ち着かせ、軽く笑った。こっちも笑わないでよ!!
「光の勇者…よ」
「ひっ光の勇者ぁ!?」
『それでは、さよなら』
「ちょっ…」
『クスッ』
小さく笑いキルトは消えていった。なんだよ一体キルトは…人間なのか??俺は何なんだ…
「ありがとう…」
「へ?」
「助けてくれて…」
「あ、ああ…」
「恭平君…ちょっと良いかな?腕見せて」
「腕っすか?ほい」
俺は言われた通りに腕を見せたなんか…彼女…可愛いかもだなジロジロ見てたから少し気持ち悪いけど…
「やっぱり…」
「あのサ何かあるの?」
「それはあそこへ行ってからお話します」
「あそこって?」
「目を瞑って下さい」
えっと…何するきかな??どこ行く気だよ…
「え…ちょっと」
「嫌ですか?」
「別に…でもどこに?」
「硲です」
「硲?だと?」
「では強制生還します♪」
ちょっと待てえええええ強制生還は無しだろう!!しかも最後♪(音符)付いてるし!?てか何処行く気だよー!!!!!
「いーやー!!!!!!!!」
そして俺は訳の分からない場所へと連れて行かれた。
第二章 ユーリ
【ドスンッ】
尻餅を思いっきりした。痛い…てかここどこだよ森?いや違う。山?違う。どこだよ…
「大丈夫?着いたよ!」
隣に彼女が座っていた
「そうっすか」
「ここは、世界の硲よ。過去でも未来でもない所分かる?」
「分かんねえ」
当たり前だろうが
急に言われてもな…
硲に連れてこられたっていう人いない気がするが全くもっておかしいよな
ったく…
「そっか…あっ私ユーリよろしくね恭ちゃん」
「いきなりちゃん付けかよ…」
彼女の名前はユーリ。
硲に住む人間らしいがさっきの怪我すっかり治ってる…何で!?
「私には治癒能力という力が備わっているの」
「治癒能力?!」
「そうだよ。この国には力を持っている人々が集まってできた国なの」
「つまりこの空間こそが彼らの力なのか」
なんかカッコイい事言ったけども真面目だからなつらいぜ。
「ええ。さ、来て」
「またかよ…」
ユーリに手を引っ張られ嫌々歩いていった。
俺女の子苦手なのにさ…こう積極的だと困るなぅ本当にココどこだよ!!!!でも…感じる…。
懐かしい気がする…。
鳥が鳴いてる
風が吹いてる
この世界も生きている
そう、感じれる。
ああ何か…懐かしいよ。
「恭ちゃんどした?」
「あ?」
「体調悪いの?」
「違えよ。ただ懐かしかったんだ」
「懐かしい…ね」
いつの間にか村に着いていた。わぁ!と村の子供達が寄ってきた。
可愛いな…。
「お兄ちゃん誰え?」
「何の力ぁ?」
「か、カッコイい…」
三人の女の子と男の子が近付きて抱き付いてきたやっぱり可愛いな…。
「ミーナ!キラ!リン!」
『ユーリお姉ちゃん!!』
「元気だった!?」
『うん!』
なんか仲良さげで良いなあ、そうそう。俺なガキ好きなんだよ〜♪
将来保育士になりてえのダサくねえよ!!
俺さ…ガキ好きな人が好きなんだケドよ周りにはいねえいねえ…。
ユーリとガキ達が笑ってると、なんだか良いな!!
「恭ちゃんはね勇者なの光の勇者」
「勇者ぁ?」
「そう!勇者様だよ」
パッと俺の方を見たガキは笑顔で
「恭ちゃん!!」
と喜んでいた。
「あ、ユーリ」
「ん?」
「俺が連れてこられた理由を教えてくれ」
「あぁそうだったね」
コホンと咳をし指を上に上げた真剣な顔をして話し出した。
「恭ちゃんは世界を作る力が備わっている事は分かるね?その逆に世界を消す力もあるの」
「世界を…消す?」
「そう。だから闇の化身キルトが現れたでしょ??アイツは恭ちゃんの力を狙っている…」
ああ混乱してきたよ…
キルトが俺の力を狙っているだとお?!
俺の力は…そんなに強いのかよ?イヤだね。
幼い頃から強かったんだ俺…。
「でも、俺さ…」
「キルト以外にも恭ちゃんを狙う奴らがいる事も確かだからその光の剣で全てを消すの。そして、この国を守って…」
「守って…って…この世界も狙われてるって事だよな」
「そう…恭ちゃんお願い!!」
「消すって事は斬るの??その奴らを」
なんか難しくなってきた気がするんだよな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜なんか物語upしてきたよ悲しいなぁ俺。
「マジで?!」
「うん♪私も手伝うから頑張ろう!」
「やだ」
「ええーここまで来てかよっ?!ねっ!」
「…………………」
「恭ちゃん〜」
…あ、泣きそうになってるし…だって俺剣道しか出来ねえんだよ〜ゴメン本当の剣は慣れてないしマジゴメン!
「うーん…」
ユーリ達だけでも十分じゃない?
だって強いじゃん君ら。俺は弱虫だ…
「お願い…だよ」
「ユーリ…
分かったよ!!やれば良いんだろ!!」
ユーリの顔はキラリンと光り抱き付いてきた。
そんなに嬉しいか??????俺は悲しいぞ…
周りが拍手をし始めた。何?!てか何で?!
俺本当にお人好しだよ…
「ちょ…ユーリ」
「ありがとぅっ!!!」
「あのさ、俺何すりゃ良いんだ?」
「魔物狩りだねえ」
「っ?!誰だよ」
「この世界の作成者よ」
「作成者?」
作成者なんていたのかよ夢壊れたよ…グスン
つーか…若っ!!
「こんにちは恭平君」
「あ、こんちは」
「私はリリーフ。時を司る力を持っているよ」
「そっすか」
「恭平君にはこれから、ユーリと共に魔物狩りをして頂く。この世界に魔物が入り込む前に」
………………………
「お願いだよ♪」
この人がか…
「は、は、は、」
「どうかした?」
「分かってるよリリーフ。それくらいな」
バカな俺だってそのくらいの事は理解出来るさ。わかるよな…みんな…
【現実だという事を】
第三章 運命
そうさ…俺がいるこの世界は事実なんだよな。
分かってんだけどさ……信じたくねえんだ。俺。俺の力で世界を作るだ、俺の力で世界を消すとか
……………………………
世界を守って欲しい…か
辛い選択だな…
「分かってくれた?」
「ああ。前よりはな」
「では頼むよ恭平君」
「…そうだな」
「恭ちゃん〜良かった♪ありがとー」
「しょうがねえだろ」
俺はユーリ(由里)に抱き付かれるの慣れちまった…女嫌いが治りそう…
「恭ちゃん、まずは説明するね。恭ちゃんの力を狙っているキルトは何十匹ものの妖怪を従ってる」
「何十匹も!?」
「そうだよ。その妖怪達この世界を消す力があるんだよ…だから」
「俺にかかってるっか」
ユーリは無言になった。
結局こういう事なんだよな…みんな。
しょうがねえな♪
「最初はどこにいる?」
「…分からない」
「あ?分かんねえの!?」
「だって…」
グスン…。と涙ぐんでた
コイツさ良く泣くな……
俺もう嫌かも
「泣くなよユーリ」
「ぅっぅぅ−」
「な!俺がいるじゃん」
「ぅっぅぅー」
俺女の子に泣かれるとさ以外と困るんだよ…
えっとお…
「しょうがねえなぁ」
と言って俺はユーリの頬に軽くキスをした。
俺のかーちゃん受け継ぎ
「女の子泣かせた時は、チュウをしろ」
という言葉である。これはしたくなかったのに…
「にゃ!にゃにするの!」
「ゴメン…泣いてて欲しく無かったから」
「…ありがと」
「え?」
「なんでもなーい」
いつの間にか、ユーリの顔は笑顔で真っ赤になっていた。意外と利くね〜
いやはや…良かったな。
「さ、行こう♪」
「ああ…」
俺らは一歩踏み出した。世界を守っちゃる!!!!!!
頑張るよぉっ!!
「あ、俺九州出身だぜ」
「へえ…私青森だよ」
「青森?良い所だよな」
「そお?」
「九州も良い所だけど」
なんか女の子と一緒に歩くの恥ずかしいな…
何言えば良いんだ………
困るなちきしょう…
「あ、あのさっ」
「ん〜?」
「ユーリは恋とか…した事あるのか…?」
「へ!?」
「な、無いよ!!」
「そんなに照れなくても…いいじゃん」
「だっだってさ…じゃあ恭ちゃんはあるの!?」
「まあな」
「教えてよ〜ねっ」
「あれはな…」
なんか長々書くの面倒だ
だって初恋は小学生の頃だぜ?名前は沙織ちゃん。
物凄くモテたんだ彼女…
俺とは友達、まぁfriend!として仲良くしてたんだけどよ…。
沙織ちゃん…誓約結婚が決まっていたからサ。
残念で、毎日泣いていて、俺…どうしようかと思った時もあったんだ。
忘れよう…忘れようとすると余計忘れらんないし
本当に初恋って叶わない事が証明された瞬間だよ
ま、結局こういう事だし沙織ちゃんは引っ越して外国行っちゃったんだよ
まぁ一番俺が良くやったと思うのはキスの贈り物
沙織ちゃんが外国行く日キスしてあげたんだ。
あー口じゃねえよ?
当たり前だが、抱きしめた。
そしたら沙織ちゃん!ニコッって笑っていた。
あぁ良かったな…ってサ
それ以来会ってねえんだ
「うっ…」
「え!?何で泣くの!?」
「だって恭ちゃんぅぅ」
「えええ…」
「私の話もするからぁ」
「あ、それは聞く(笑)」
話が終わった瞬間ユーリは泣き出していた。
はいはい。
そしてユーリの話が始まった。
「私はね…」
私の初恋は中学生の頃。
隣の席の神堂隼人くん。
いつも教科書忘れてきて
いつも貸してあげてたの
あの笑顔が素敵でね
「由里は優しいから…」
っていつも言ってたからすぐ貸しちゃうのよ♪
「ちょっと良いか?」
「ん〜?話の途中だよ?」
「お前利用されてねえ」
「…………にゃは」
「今は好きなのか?」
「ううん…だって彼女いるんだもん」
「ああ…そ」
可哀想に…完全利用だよ
隼人って奴…最悪だな。
ん?隼人?
……………………………
「神堂隼人ぉぉぉ?!」
「え?!」
「神堂隼人って俺の高校の…生徒だぜ」
「えええっ!?」
「しかもフリーだ」
これ言いたくねえな…
でも言った方がいいの??
「お前の事好きだぜ」
「へ?」
「私を好き!?」
「だってさ、ずっと由里由里…って話てて、なんだコイツって思う時あったもん」
「…ふうん」
微妙な反応だった。
困るね…
「どした?」
「私今恭ちゃんだから」
「は?」
急に変な事言ってくんなよ…っ…
マジ照れるーーーーーー
え?本当な訳無いよな
「本当だよ?」
「そ…そうか」
そんなのほほんとした話をしていた直後、上の方から、鳥のような鳴き声が聞こえた。
俺とユーリは同時に上を見上げた。
やっぱり!!俺の最初の敵だぜ!!名前分かんねえがな…鳥みたいだから……
「バードン!」
「え!?何で名前…」
「あ…当たったのか」
「そうだよ」
完全にそのまんまじゃん
バードだからバードン??
笑える−。あははははは。
「恭ちゃん!後ろ!」
俺が後ろを振り返ると、バードンが目の前にいた
「のぉぉぉぉ!?」
【ギャア!!】
「近すぎだよぉぉぉ!?」
とっさに手に力を込めた
あり?光が出ない……???
それってヤバくねえ?
ヤバいよね?
【ギャア!!】
「ユーリ!!光の剣が出ない!!」
「ええ!?」
どうしたらいい…
逃げるか?それとも……!
「止めろぉ!!」
と叫んだ。意味はある。
あの時そう叫んで手から光が現れたんだからな。
一か八かの勝負だぜ!!
すると…………………
「出た?」
そう。光の剣が現れた。
驚くよな普通。
でも俺は…激驚いた(笑)
「いっけえっ!!!」
俺は剣をバードンの頭から振り落とした。
俺は知らなかったよ…
と少し落ち込んだ。
バードンは軽く苦しみながら消えていった。
俺の顔面には奴の血がベッタリ付いた。
「おぅえ…」
これどろろ(映画)のにそっくりじゃん!!
パクッてスミマセン!
でも…気持ち悪い………
ユーリが心配してんのか喜んでんのかわかんねえけど、俺に抱き付いた。
「えっ?!な、何だよ」
「良くやった!」
「はぁ?」
「恭ちゃんはエラい!」
「どうも…てか腰が抜けたんですが」
「ああ…大丈夫?」
そう言って手を恭平に差し出した。
恭平は
「ごめん」と笑い頭をポリポリ掻いていた。周りを見渡した2人は一面が暗くなっている事に気がついた。
恭平は何も気にはしていなかったが、ユーリは焦っていた。
「恭ちゃん…」
「どうした?顔青いぞ」
「周りが暗い…」
「そんなの夜になれば普通…」
恭平はあ、と軽く吐息を漏らした。
ユーリに聞いた話を思い出したのだ。
【周りが暗くなった時は魔物が現れる】
「あ…はは」
「…………恭ちゃん」
「ん〜?」
「後ろいるけど…」
「ぎょ?!」
恭平が後ろを振り向くとデカいドロドロがいた。
その体からは不気味な液が大量に流れ出ていた。
「き…キモイぃぃ!」
そりゃあキモイな。
体がドロドロなんだから。
しかも奴が通った道は、溶けていた。
まさにドロドロ!!
恭平の顔は強張っている。凍りついたように固まっている体はピクリとも動かない。
ユーリの顔も強張る。
今にも泣き出しそうだ。
「お…おい!」
「恭ちゃん逃げて!」
「どうやってだよ!」
「わからなぁぁぁい!」
「………そ」
恭平の手には光の剣が握られていたけれど、恭平はそれを落としてしまう。
「やべ!」
その瞬間を見落とさない魔物は一瞬にして剣を飲み込んだ。
「のおぉぉぉ!」
【ドォエ…】
「軽く月賦したし…」
【ホシイ】
「は?」
【オマエノチカラ】
奴は俺の力を狙っているのか?
ああ…危機一髪だよ。
どうしたら逃げられる?
教えてくれ!!
「近寄るな!」
【ムリヤリニデモウバウ】
「お前なんかぁ!」
恭平が叫ぶと恭平の体が光り出した。
彼の力が解かれたのだ。
光り出した自分に恭平は物凄く驚いた。
「なっなんだよぉ!」
【マブシイ…】
「逃げろぉぉぉぉ!」
【ニガサナイ】
恭平が逃げようとした瞬間、そいつはドロドロの液を投げ捨てた。
そのドロドロに当たった恭平は倒れた。
ネバネバしていたせいか動きを止められた。
「ぬぉぉ!!!!!」
「恭ちゃぁぁぁん」
「飲み込むなぁ!!!!」
【ヌフ…】
恭平はドロドロの中に飲み込まれた。
プツンと恭平の意識も途切れてしまった。
完全に飲み込まれる前にユーリの声が聞こえた。
「ユ……………リ」
第四章 負けるものか
飲み込まれた恭平がいたのは周りが恐ろしく真っ暗で何も見えなかった。
そこで何分だろう、気を失っていた恭平は
「ん…」と目を覚ました。
真っ暗なのに驚いた恭平は目を擦りだした。
「ここ…は…」
ああそうだ。
俺はあのドロドロに飲み込まれたんだっけ。
光の剣落とさなきゃ良かったよ
「痛っ……」
恭平が足を見ると痣が出来ていた。
多分落ちてきたときについた傷だ。
その証拠にドロドロの破片が靴に付いていた。
ふぅ…と溜め息を付いた恭平は悩んでいた。
しかし、その悩む時間も恭平には与えられることはなかった。
ドロドロの声が聞こえた。
【キョウヘイカラダ】
「は?」
【イタダク】
「頂くって……え?!」
【チカラホシイ】
「なん…っ」
ガクンと恭平の体は倒れた。力が抜けたように。
恭平の顔には焦りがあった。
やべえ。
こんなに力が入らないの初めてだ。
ドロドロにこんな力があったなんてな。
ここからまず逃げ出さなきゃな。
恭平が動けない体を無視して、瞳だけを動かした。
剣があるはずだ。
そう恭平は考えた。
いつも遊んでばかりの人間だった恭平だが、本気を出せばテストを満点で合格する事が出来る。
そう…考えたのだ。
「あった!」
恭平の瞳に輝きが出た。
しかし、届かない。
ん〜と手を伸ばそうとするが体が動かない。
すると、上から叫び声が聞こえてきた。
「あん?」
恭平が上を見上げると、上から何かが落ちてくる。
そいつは何か言っていた。
「落ちるぅぅぅ!!!」
「え?!ユーリ?!」
そうだった。
上から落ちてきたのはユーリだった。
しょうがないから一生懸命手を出した。
「恭ちゃぁぁん!」
「とぅりゃあ!」
【ドスッ】
恭平の手にはユーリが乗っていた。
恭平とユーリはポカンとして口を開いていた。
そして恭平が最初に言った言葉はこれだった。
「軽っ!!!!」
「はあ」
「お前ちゃんと食べろよな」
「食べてるよ」
「じゃあ何で空気みたいに軽いんだよ」
「今体重消してるの」
「体重を消す?」
恭平の手から立ち上がったユーリは笑っていた。
そして、ここに来た訳を話し出した。
「私ねあの時一人ぼっちで寂しかったのよ」
10分前〜
「恭ちゃぁぁん!」
あぁどうしようぅぅ!
恭ちゃんまでいなくなったら私どうしよう!
このドロドロ気持ちが悪いし…
ううん!恭ちゃんは多分あいつに力を奪われてしまう筈!
私が助けなきゃ!
「ドロドロ!」
【ワレハドロドロデハナイ】
「じゃあ何ですか!」
【ドーロ】
「変わらないですね」
【コイツノチカライイ】
「え…………」
ユーリは立ちすくんだ。
ドーロはもう恭平の力を取ってしまったのか。
それは嫌だ!
この世から恭平が消えてしまったら私はどうすればいい?
なら私もいってやる!
その瞬間ユーリはドーロの中に飛び込んだ。
「やっぱり気持ち悪いよぉ!」
今〜
「という訳です」
「ふーん」
「恭ちゃん大丈夫?」
「いや、体が動かん」
「え?!」
ユーリは俺の体を支えた。
すると近くにあった剣を取って渡してくれた。
俺はまだ自由の利かない体を光の剣で支えた。
「あんがと」
「大丈夫なの?」
「なんとか。だけど、ここから逃げ出すまでは大丈夫じゃないかもな」
「うん…」
「見てろユーリ」
「え?」
恭平の顔が違って見えた。
いつもより真剣な顔で、いつもよりカッコ良くて、いつもより輝いていた。
【ピキンッ】
恭平が剣を地面に刺すとそこから光が現れた。
そこには綺麗な女の人がたっていた。
普通の人間ではなく、光を放ち輝いていた。
「光の聖霊ヒューズよ」
『おぬしか。光の勇者は。』
「ああ。力を貸して欲しい」
『よかろう』
ヒューズと呼ばれた女性は恭平の剣に力を込めたと思うと、姿を消した。
すると剣は強い光を放ちだした
「き、恭ちゃん?」
「ん?ああ。彼女はこの剣に宿る聖霊ヒューズだよ」
「それは分かるけど…」
「なんだい」
「なんで髪の毛の色が違うの?」
「封印を解いたから」
「封印?」
「ユーリ俺を連れてきたのに知らねえのかよ」
「うん」
ユーリの言葉に恭平は苦笑いをした。
そんなほのぼのとした時またあいつの声がした。
【フウイントケタカ】
「まあな」
「ここから出てやるわ」
【ムリダ】
ここはきっとドーロの中なのだ、と確信をした2人だった。
それは、みるみるうちに、体の自由が奪われていく感覚があったからだ。
「またか…」
「恭ちゃん?!」
「アイツは俺の力を吸い取っているんだよ」
「!!!」
「だが、負けるものか」
恭平が感覚を無視して、光の剣に力を込めた。
すると、恭平の周りだけパァーっと光だした。
それにはユーリが驚いていた。
「ユーリ!来い!」
「へ?」
恭平はユーリの手を握りしめた
ユーリの顔は赤らんでいた。
コイツさっき俺の手を握りしめたくせに俺から握られると照れんのかよ。
バカ可愛いな。
「いくぞ!!!!」
「お、おう!」
「光が導く限り、邪悪な者を斬り捨てる。」
【ズサッ】
と剣の刺さる音がした。
ドーロの苦しむ声も聞こえ始めた。
【イタイイタイ】
「ざまぁみろ」
「や、やったね!」
【ユルサナイオマエラフタリコロス】
『え?』
ドーロが言った瞬間、ユーリがピクリと動かなくなってしまい、ドーロの触手に捕まってしまった。
やべえ!!てかコイツどうすれば死ぬんだよ!
どこかにヒントはあるはずだ…
うーん…………………。
まずはユーリを助けようか。
「ユーリを離せ!」
「恭ちゃぁぁぁん!」
恭平は光の剣でユーリを捕まえていた触手を斬った。
ウニョウニョと動いたかと思うと一瞬で砂に変わった。
「恭ちゃんありがとう!」
「怪我ないか?」
「うん!」
「心臓見つけるか」
「心臓ならそこにあったわよ?」
「マジで?!」
ユーリが指を指した場所には赤く大きな心臓があった。
ドクンドクンと脈を打っていた
「あそこだな!」
「そうだね」
「いくぞ!!!!!!!」
恭平とユーリは手を強く握り合った。
そして奴の心臓を斬った。
【ヌォォォォォ!!!】
奴は大声をだした。
そして俺らは外に出られた。目の前には赤い血をダラダラと流すドーロがいた。
【オレガマケルト…ハ】
「チェックメイトだ」
恭平は指をパチンと鳴らした。
同じタイミングでドーロは血を吹き出した。
キランと光る恭平の髪は風に靡いていた。
ふぅと息を漏らした恭平はユーリに笑いかけた。
その顔は輝いている。
「終わったな」
「う、うん!」
「行くかユーリ」
「あのさ!!恭ちゃん髪の毛色変わってないよ?」
「あん?」
恭平は金色の髪の毛をクルクルと巻いていじっていた。恭平は小さく
「解」と言った。すると恭平の髪と瞳は一瞬で元に戻った。
いつの間にか恭平はそんな力を得たのだ。
「黒髪に戻ったな」
「あ、うん!」
「なぁユーリ」
「ん?」
「お前…」
「なっ何?!」
ユーリはキスでもされるかと思い目を瞑った。
なんだこいつ?と恭平は髪の毛に付いていたゴミをとってあげた。
首を傾げている恭平とは裏腹にユーリは赤い顔を治せなかった
「…………」
「大丈夫かお前」
そっとおでこに手を当ててきた恭平はかなり驚いた。
「お前っ!熱っ!」
「ふえ?」
「熱あんじゃねえか!」
「ほぉうはっは?」
「そうだったって…」
ゴチンと頭を叩いた。
「痛い!!!!」とユーリが言ったが気にせずに恭平はユーリをお姫様だっこした。
「き、恭ちゃん?」
「黙ってろ」
「…………」
「お前に死なれたら困るからな」
「んっ!!!!」
「あ?!どしたユーリ?!」
「寒い…」
「あぁぁ!チキショウ!!!あ!家発見!」
恭平はユーリをお姫様だっこしながら走り出した。
フッとユーリの意識がぶっ飛んだ。
恭平は急いで急いで急いで走り出した。
「スイマセン!!!はぁ!」
しかし反応がない。
ああどうしよう!!!!!
ユーリ…ユーリ…ユーリ!!!!!!!!!!
俺は何も出来ないのか!
誰か…。
「男、誰アルカ?」
「あら久しぶりの若者たちね」
恭平が後ろを振り返ると、そこには2人の女の人がいた。
恭平たちは家に入れてもらう事になった。
ユーリは氷嚢を乗せて、気持ちよさそうに眠っていた。
それを見て安心したのか恭平の力も抜けた。
「あ…ありがとう」
「男、礼はいらないアルヨ」
「は、はぁ」
「あなたたちは勇者たちね。そうでしょ?」
「な、何で?!」
「光の剣アルヨ」
中国風の少女が恭平の光の剣を差した。
あぁ。と恭平は納得したように返事をした。
「男、名前は?」
「恭平」
「恭平くんね」
「女」
「ああ彼女はユーリ」
うにぃ……と寝ぼけているユーリを笑っていた。
恭平は良かった。ありがとうを繰り返していた。
恭平にとってユーリは今一番大切な人だ。
そんな人を失うのはもうコリゴリだった。
恭平は人が死ぬところを目の前で見たのだから。
父、謙三の自殺だったのだ。
恭平は凍りついた。
首をだらんと垂らして足が浮いている父の映像がすぐに蘇る。
なぜ死んだのか。
なぜ俺を捨てたのか。
なぜ…なぜなのか。
「ワタシ春蘭ネ」
自分に指を指して笑顔で自己紹介をしたのが俺より1つ上の少女春蘭だ。
彼女の生まれは…どこだ?
まあ日本語は勉強したらしい。
「じゃあ次は私ね。私は楓。星鞍楓よ」
楓と名乗った着物姿の女性は、俺の5つ上だ。
春蘭に日本語を教えたのも彼女であった。
「何日かはここにいなさい。いつでも来ていいわよ」
「ありがとうございます」
「恭平、礼はいらないアル」
「春蘭もありがとう」
「照れるアル」
春蘭は少しだけ赤くなった。
楓はかわい〜っと言って春蘭を抱きしめた。
ついていけねえ………。
「恭平くん」
「はい?」
「ユーリ好きカ?」
「は?!」
「好きなのですね」
「………。」
恭平は返事が出来なかった。自分が好きなのか。
本当に好きなのか、分からなかった。
まだそういう恋愛馴れてないんだ、俺。
初恋はしたけど手繋いで抱き締めてキスをするなんてした事なかった。
「分からないよ」
「分からないノカ?」
「恋は難しいものですからね」
「そうナノカ」
「んぅ………あり?ここはどこだっけ?」
ユーリが目を覚ました。
ユーリが頭に乗っている氷嚢を落として、周りを見渡すと恭平を見つけて歩き出した。
「恭ちゃぁぁん」
「おいっお前!な、何抱き付いてんだっ!」
「え?」
「春蘭と楓さんにお礼を」
あらいいのに、と楓さんは言っていた。
ペコリとユーリは頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「ワタシ春蘭ネ」
「あ、ユーリです」
「よろしくナ」
春蘭はユーリの手を握った。友達の誕生?
ニコニコしているユーリを見て心が落ち着いた。
死ななくて良かった。
好きな人を失わなくて良かった
ん………?
好きな人だと?
ユーリを好きだと?
んな訳無いよな。
うん、そうだよ。
「恭平くん?」
「え?!あの、いや…」
「何考えてたアルカ?」
「考えてないっ!」
『ふぅん』
ああ女って怖いなぁ。
噂があるとすぐ近寄って来るし、買い物すると、すっげえ長くなるし。
女の買い物と裁判はどっちも悩んで長くなるって聞いたことがあるな。
うん。その通りだね。
「今日は泊まってケ」
「ああ。」
「お願いします」
「ええ喜んで!」
「本当に良いのですか?」
「ええ」
「無理してないアル」
恭平はほころんだ。
心が落ち着いたように、優しい笑顔だった。
しかしそんな明るい未来も、終わってしまうのだ。
そんな事嫌だよ。
未来を守りたい、いや、守らなきゃいけないんだ。
キルトに勝たなくては、と恭平は考えていた。
「恭平」
「ん?どうした春蘭」
「恋は難しいノカ?」
「はぁ?!」
「ワタシ分からない」
「……難しいよ」
「そうアルカ。ユーリは、恭平が好きアルな」
「え?!」
春蘭が恭平のおでこにツンっと指を押した。
痛ったいな!!と恭平はキレていたが春蘭は無視していた。
楓とユーリは何の話をしているの?と不思議そうに笑っていた。
「ったく…」
「あはは!!!!!!」
「笑い事じゃねえよ」
「ふっ…あり…?」
「ユーリ?」
フラっとユーリの体が傾いた。恭平はびっくりしたが、上手に支えた。
「大丈夫か」
「ん。ただちょっと目眩しただけだよ」
「ふぅん」
「本当に大丈夫かしら」
「心配ダナ」
「皆さんすいません」
ユーリは短い髪をパラッと落としてお礼を言っていた。
ユーリの髪は緑色である。
って今言うことじゃねえよな………。
でも結構綺麗なんだよな。
俺は黒髪だし。
春蘭はオレンジ色だし。
楓さんは茶色だし。
俺が一番普通だよな。
あはは。
「夕飯準備するアル」
「何が良い?」
「恭平作れるのか?」
「一人暮らしだからな」
「すごいじゃない」
「すごーい!!」
みんなに誉められた恭平は頭を掻いていた。
恭平には得意分野として料理がある。
菓子作りも何でも出来てしまうのだ!
う〜ん天才少年!!
「じゃあ餃子食べたいアル」
「餃子な」
…恭平は何かの視線を感じた。恭平は何かを感知するとすぐに外にでた。
そこに立っていたのは黒い頭巾を被っていた少年キルトだった
『僕の視線を感知したの?』
「ああ」
『恭平くんには僕の手下がお世話になったね』
「本当にな」
『封印も解けた』
「お前ぶっ殺すぞ」
『あっはは!君には出来ないよ。恭平…くん』
恭平はキルトに近づいていった
今にも飛びかかりそうな時、ユーリが叫んだ。
その声に驚いた恭平の隙を見たのか、キルトは恭平の鳩尾を打ちつけた。
ぐっ…と小さく吐息を出した恭平はガクンと倒れた。
ユーリはすぐに駆け寄った。恭平はまだ軽く意識があった。
「き、恭ちゃん!?」
「は…だ大丈夫だけど…痛ってえ……」
「許さない!!!!!」
ユーリは腰から刀を取り出し、キルトに向けた。
そして走り出した。
しかしそれは意図も簡単にキルトに避けられた。
『君、邪魔』
「え?っキャア?!」
ユーリは恭平が倒れ込んでいる所まででぶっ飛んでいった。
運動神経が良いため、着地は上手に立った。
しかし顔には焦りがあった。
「あいつ…何なの…」
「忘れたか?…あいつは闇の化身だぞ…」
「……でも…強すぎる」
ユーリがもう一度体制を整えてキルトを睨みつけた。
しかしキルトは笑っていた。
すすると急に腹を抱えて恭平が苦しみだした。
顔は真っ青だ。
「あうっ………?!」
「恭ちゃん?!どうしたの?!」
『ふふふ。恭平くん。僕が憎いか?』
「おっ…お前…」
『僕を殺したいのなら全ての妖怪を殺すのが一番だよ』
「ゆる…さねえ」
『はっはは!!』
「許さねえ!!!!」
恭平が叫び出すと恭平の瞳と髪の毛の色が変わりだした。
封印が解けたのだ。
しかしキルトは笑っていた。
『恭平くん君には殺せないよ』
「?!」
『じゃあね』
と言って闇の中に消えていった
恭平はフッと力が抜けたように膝を付けて倒れ込んだ。
意識は朦朧としていた。
ユーリの声、春蘭の手、楓の暖かい胸。
抱きかかえるように持ち上げられた恭平は静かに眠りに落ちた
一時間後〜
恭平はまだ意識が戻っていなかった。
現実の世界ではこんな事になっていた。
ユーリと春蘭と楓が急いで恭平を部屋に連れて行った。
「どうしよう!!」
「ああ…守れなかった…」
「恭平守れなかっタ…」
「な…何の話ですか?」
春蘭がスッと立ち上がり箪笥の中から何かを取り出した。
それはパスポートの様な物だった。
春蘭はそれをユーリにそっと渡した。
「これは…………」
「ワタシたち光の勇者を守るために創られたネ」
「………え?!」
「私たちは創られた人間よ。光の勇者を守るために」
ユーリが混乱していると、楓がそっと声を掛けた。
「この話は止めましょう」
「は、はい…」
「恭平腹見るカ」
「そうね。キルトに攻撃を受けたからきっと…」
楓は何も表情も変えずに恭平の服を脱がし始めた。
ユーリは小さくキャッ?!っと言って顔を隠していた。
春蘭は真面目な顔をしていた。
「こ…これは?!」
急に楓が大きな声を上げた。その声にユーリは振り向いた。
その先には恭平の腹に書いてある物だった。
それは………
「魔法陣?」
「これは、大変よ!!」
「ヤバいアルな」
「え?えっ?」
「恭平くんが死んでしまう!!」
「ええっ?!」
ユーリは驚いて腰を打った。痛いはずなのに、ユーリは気にはせず楓の話をしっかり聞いていた。
その顔は真剣だった。
「…と言うことは恭ちゃんは呪いを受けた?」
「そうダ」
「まず目を覚めさせなくちゃいけないわ」
「殴る?」
「首締めるカ?」
「ダメよ。キスしなきゃ」
「キスぅ?!」
ユーリは声が裏がえった。顔は真っ赤だ。
キスという言葉に敏感であります。
とてもとても照れております。
(恭ちゃんにキスなんて出来ないよぉ…………。しかもマウスtoマウスはキツいぞ〜〜〜)
「ユーリちゃん」
「はひっ?!」
「チュウするアル」
「………」
「このまま死んでいいのカ?」
「嫌だ…よ」
ユーリが見つめる恭平はピクリとも動かない。
息してんのかな?
肌白いなぁ…………。
キスしなきゃダメ?
ううん!しなきゃ!!!
ユーリがぐぐっと恭平の顔の前に近づいた。
今にも破裂しそうな心臓がドキンドキンと高鳴っている。
息が荒くなりつつある。
顔は真っ赤だ。
(うー………恥ずかしいよぉ)
しかしそんな不安をよそに、楓と春蘭は笑っていた。
すると今にもキスしようとユーリが近づくと、うーん…と恭平の意識が戻った?
「うーん…ここは?」
「恭ちゃん?!」
「あ?」
恭平が何も知らずに起き上がると、そこにはユーリの唇があった。
避けることは不可能だ。
思いっきり2人の唇は合わさった。
「ん〜!!!!!!!?」
「やった!」
「素敵アルな。」
「お…俺のファーストキスがぁぁぁぁぁ?!」
「ごめんなさいぃぃ!」
ユーリはずっと謝っていたが顔は笑っていた。
いや、笑うというより照れているような…。
そんな事は気にせずに、 恭平は毛布を被っていた。
(はじぃ……やべー……キスしちまった…)
恭平の顔はトマトのように赤い。
「キスしたナ」
「…………………」
「それより、痛くないカ?腹何か書いてアルネ」
「腹?」
恭平が自分の体を見ると何故か脱げている。
これに驚いた恭平ははぅ?!っと叫んだ。
胸元が完全に見えている。ヤバいぞ〜これは。
誰だ…脱がしたの誰だ…。
誰か教えてくれぇぇっと叫んでいた。
「ああ、春蘭ダ」
「お前かぁぁぁぁ?!」
「意外と肉体美ダナ。恭平」
「いい加減にっ………………………」
急に言葉を失った恭平の顔は青くなっている。
そして再び布団に倒れ込んだ。
「どっどうしたアル?!」
「………痛っ?!」
「マサカ?!」
春蘭が全く気にせずに恭平の服を脱がし、腹を見つめた。
その傷は黒く動いている………だと?
動く度に恭平は苦しんでいる。
「キルトか……っ?!」
「そうダ」
「しょう…が…ねえなぁ。ちょっと肩かせ春蘭。」
「イイアルよ」
恭平は痛さに我慢しながら春蘭の肩に寄りかかった。
恭平は軽い。
そして、光の剣に力を込め始めた。
すると、光出した。
「封印解けたり!!!」
恭平の黒髪が、ふわっと持ち上がったかと思うと、一瞬で髪の毛の色が変わりだした。
輝くような金色である。
それには春蘭と楓が驚いていた。
恭平が春蘭の肩から手をどかし、両手を地面に向け、何か言葉を発した。
ユーリたちには分からない言葉だ。
「…………」
「恭ちゃんの体が…」
「光に包まれているダト…?」
「聞いたことがあるわ。光の勇者は…」
「黄金を操れるだろ」
恭平が笑いながら指を指した。
痛いはずなのに。
なんで…笑ってるの?
(痛いんでしょ………??恭ちゃん…………)
「大丈夫だよ」
「本当に…?」
「キルトの呪いを消したからもう大丈夫だ」
「うん…うん!!!」
「お世話になったな楓さんと春蘭」
「もう行くのカ」
「いつでも来て良いですからね。分かりました?」
「ああ。」
「じゃあさよう…」
「待っタ」
春蘭が手を出してニコッと笑った。
すると恭平の手を握り顔を赤らめて言った。
恭平は何だ?と聞いた。
「好きダ恭平」
「はぁ?」
「なんカキューンと胸痛いのネ」
「あっそ」
「ええええぇぇ?!」
ユーリはやっと我に返ったように叫びだした。
うーん…ウルサい。
それには流石に驚いた恭平はウニャ?!っとなった。
楓さんはもう…と言って春蘭の頭を叩いた。
「ごめんなさいね。違うのよ。今日は泊まっていきなさいっていうことを言うはずだったのよ」
「タハ(照)」
「…照れてんじゃねえ」
「よ…良かったぁ」
ユーリはホッと胸をなで下ろしていた。
と言えば恭平はイラついていた。
「なんだよなんだよ」とブツブツ言っていた。
未だに春蘭はニコニコしているがそれは気にしない。
「夕飯餃子ダゾ」
「お前が作ればかやろう」
「…やだアル」
「あ−作れないんだ」
「ふん」
「あの…私作りましょうか餃子?」
「作れるのか…?」
「ユーリ作ってクレ」
「あ、はい」
ユーリは作れるらしい。
意外と家庭的なんだなぁユーリって。
それが恭平の気持ちだった。
しかしそれも一時の夢。
すぐに覚めてしまった。
「痛っっったぁい!」
「はぁ…作れないなら言えば良いのに」
「恭ちゃあぁぁん」
「はいはい…」
やっぱりユーリはユーリだな…うん。
恭平がユーリのそばに近づいた。
ユーリの指からは血がポタポタと垂れていた。
ああ…と恭平は理解した。
「痛いぃぃ」
「お前治癒能力持ってんだから平気だろ」
「…………あ!」
しょうがなさそうに恭平がユーリの指を持ち上げて指をパクッと自分の口の中に入れた。
ユーリの顔は赤いのか泣いているのかわからない。
「痛いか?」
「ううん………」
「そっか。俺作るよ。ユーリは休んでろ」
「一緒にいる」
「あん?なら包むの手伝ってくれよ」
「ん」
恭平は手際よく材料を刻んでいく。
ニラ、豚ひき肉、キャベツとどんどん刻んでいく。
その手際の良さにユーリは口をパカンと開けていた。
「すっごぉい…」
「ん?一人暮らしだと、出来なくちゃだめだしな」
「そっか」
「じゃあ皮に包むからユーリもな」
「はぁい」
恭ちゃんの顔がだんだんとお母さんに見えてきたよぉぉぉ。
すごいなぁ。
恭ちゃんが恋人だったら幸せかもです〜。
「俺もユーリがいい」
「は?」
「なんでもねえよ」
「もう一回言ってよぉ!」
「嫌だ」
「ぶぅ…」
ユーリは膨れっ面をした。
その顔には恭平は爆笑してしまった。
お前なんだよ!あっはは!笑える!
恭ちゃんは自分の気持ちに気づいているのかな。
と不安になっていたユーリであった。
第五章 餃子食うなら恋愛しろ
一時間がたった頃やっと餃子が出来上がった。
恭平は普通だったが、ユーリの顔は真っ白であった。
プッと軽く笑った恭平にユーリは怒った。
「何ですか!」
「顔に白いの付いてるよ」
「はう?!」
ユーリが近くにあった鏡に向おうとした。
が、恭平に手をガシッと捕まれた。
え??っと振り返ると恭平がユーリの顔に近づいた。
ユーリは再び赤くなった。
「ん………?」
「ほら。取れたよ」
「あ…ああ」
「何照れてるんダ?」
「あらあら」
「照れてないです!」
「出来たよ。食べよう」
「はぁい」
そして早めの夕飯が始まった。
今日は餃子と春雨スープである
スープは恭平手作りでもある。
物凄く美味しい。
「美味イ!」
「本当ね。ありがとぅ恭平くんたち」
「いやぁ…」
「そう?まぁ美味きゃいい」
恭平は無言で自分の作った餃子を食べていた。
ユーリは
「美味しい」と喜んでいた。
「ご馳走様ダシタ」
「でした」
「ご馳走様デシタ」
「よろしい。」
「ありがとぅ恭ちゃん」
「んあ」
「じゃあ片付けは私たちがやるとしますか」
「そ?」
「恭平くんたちの部屋は二階だよ」
楓が指を指した。
あ、そう。と軽く流したが実は嬉しかった。
自分は一人暮らしだったから周りに人がいると嬉しいのだ。
しかも隣にはユーリ?
「そっか。隣だねえ」
「ち、近寄るなよ」
「大丈夫!」
「お前の大丈夫は不安なんだけどさ………」
恭平は後ろを向いて
「よしっ!」と拳骨をギュッと握った。
その顔は笑っていた。
「よろしくお願いします」
「テレビないカラな」
「それくらい分かるよ」
「オヤスミ」
「ああ」
恭平は階段を上っていった。
築何年だろうなぁ。
けっこうボロである。
上る度にギシギシと鳴っている。
(落ちないよな…下)
そんな不安をよそに下ではギャアギャア言っていた。
(うるせえな…)
どうせ皿誰が洗うかとか片付けるとか言ってんじゃねえのか?
ああうるせえ。
「騒がしい!!!!!!!」
「すみません〜」
「ごめんね恭ちゃん!」
「ゴメンな」
そして俺は部屋の戸を開いた。
けっこうそこは広くて明るかった。
ここって電気あるんだ。
当たり前か。
布団ひこう。花柄…?
まぁいいや。寝れるなら。
「あ、風呂入りてぇ」
「恭ちゃん!お風呂入ろ〜」
「は?!」
「だって広いんだよ」
「………」
「や?」
「………いいけど」
絶対コイツ俺の気持ち気づいてない!
お前は女、俺は男!!
どうして分かんないんだ!
どうして…。
「早く〜」
「わった!待て!下着ねえんだけど」
「借りれるよ」
「あっそ」
またあのギシギシ階段を下りなくてはならないのですね。
ああめんどくさいね。
風呂入りてえ。
「あ、来た来た」
「どこにあるんですか?」
「端ですよ」
「あ、どうも」
「恭ちゃん待って〜」
「もしかして…混浴?」
「正解!」
「さようなら」
「ええ?!」
ユーリが焦って恭平の腕を引っ張った。
泣きそうな顔を見るのはもう飽きてきた。
しかし泣かれるのも辛い。
恭平は頭をポリポリと掻いた。
ユーリといる内に癖になってしまった様だ。
ただ単に頭が痒いだけなのかもしれないが。
「お前女だろ!」
「女です!」
「俺の事考えろ!」
「何を?!」
はぁ…とため息をついた。
ああ!もう!
ガシッとユーリの両肩を捕んだ。
それにはユーリも驚いてはい!と返事をした。
「恥ずかしいんだよ…」
「何が?」
普通に受け流した。
そんなユーリに恭平はキレた。
常に静かな彼がだ。
「は…裸が…」
「ああ!大丈夫!」
「俺が大丈夫じゃねえんだよ!!!!!!」
「ドード−」
「俺は馬じゃねえ!!!」
「ま、入ろ」
「……………うん」
恭平はもう何も言う気力が無かった。
なんでだろうなぁ…って。
こいつにだけは色々と言えないんだよな。
強く言ったら気付ける。
泣いて欲しくない。
笑っていてほしい。
ずっと側にいてほしい。
「入ろ〜入ろ〜」
【ガラリッ】
風呂場の戸を開けるとユーリと恭平は一斉に声を上げ始めた。
そこはとても広かった。
「ひ…広い!」
「先入れ」
「一緒に入るの!」
「だ−か−ら!裸を見たくないだろ!」
「ああ。」
「だから早く入れ」
ユーリは納得したように服を脱ぎ始めた。
恭平はその場から立ち去った。
(流石に混浴は無理)
それが頭の中から出て行かなかった。
俺も男だしな。
うん。逃げよう!
そう考えて、部屋に戻ろうとした時風呂場からユーリの叫び声がした。
「キャアアアアア」
「ユーリ?!」
そして何も考えずに風呂場に直行した恭平の目にはユーリの顔しか映らなかった。
そしてガラッと勢いよく戸を開けた。
「ユーリ!」
「あは」
「は?」
「いや〜帰ってほしくなかったからさ〜」
「……なんだよ」
「ゴメンね…」
恭平はふっと力を抜いた。
そのせいで目の前の光景がクッキリクリアに見え始めてしまった。
風呂の中に入っているユーリの姿……………。
「のぉぉぉ?!」
「大丈夫大丈夫」
「すみませんでした!」
「え?!」
「俺帰ります!」
「は?」
「お邪魔しました!」
恭平は混乱すると丁寧語になることを学んだ。
ユーリは口を開けてポケーッと開けていた。
「さようなら!」
「恭ちゃん?ねえ!目覚ませぇい!」
恭平の鳩尾にユーリの左手が入った。
その一発で目が覚めたのか、パチリと瞬きをした。
「ふひ?」
「早く服脱いで入るんだ!」
「はい!」
恭平は服を脱いでタオルを巻いて風呂に入った。
顔には何も表情はない。
何か一点を見ている。
するとユーリが恭平の隣にやってきた。
「何見てるの?」
「…………」
「無視しないでよ−」
「…………」
「出るよ?」
「…………え?!」
「やっと反応したあ!」
「何?」
「あたしもう出るね」
「あっそ」
恭平は後ろを向いた。
その顔は赤い。
うーん赤い。
真っ赤っかだなぁ。
「じゃ!」
静かに戸を閉めて出て行った事を確認した恭平はふぅ…と一息ついた。
風呂は疲れるなぁ。
なんか知らない人いるし……。
誰だ〜。
「誰?」
『わたしが見える?』
「ああ。くっきりと」
『そう』
「あんた誰?」
『私は百合。キルトに殺された人間』
「え?!」
彼女の…百合の言葉に恭平は深く驚いた。
キルトを知っているのか?
百合は恭平の隣に座った。
そして話をし始めようとした時ガラッと戸が開きユーリが出てきた。
「恭ちゃん遅い!」
「あ、ああ」
「もう!あれ……………………お姉…ちゃん?」
「へ?!」
『由里…』
恭平が混乱していると、ユーリが百合に話しかけている。
完全に無視されている恭平はあのう…と話に入ろうと頑張っているが…。
「お姉ちゃん何で…」
「おい!俺出たいんだけど!」
「あ、ごめん」
恭平はプンスカと怒り、シャンプーを始めた。
泡立つようにしていた時ユーリが近づいてきた。
洗うよ、と恭平の頭を洗い始めた。
それには恭平も驚いたのか
「いいよ、やんなくて」と照れていた。
「洗わせてよ!」
「…………ったく」
「ねえ…恭ちゃん。百合お姉ちゃん、私のお姉ちゃんなんだ」
「話聞いてりゃ分かるよ」
「そっか」
「洗うなら早く洗ってくれませんかユーリさん」
「あ、ゴメン!」
ユーリは急いで洗い出した。
時々恭平が
「痛っ」と涙ぐんでいた。
「痛い?」
「さっきは。今は大丈夫だけど」
「良かった〜」
『恭平さん』
「なんだ?百合さん」
『あなたも光の勇者ですか』
「?!」
あなたもって事は…百合さんも光の勇者なの?!
いや…だったのか?
じゃあキルトに殺されたのは世界を作らないかと言われ断ったから…?
ああ…なんてことだ。
キルトを憎むユーリの気持ちが今分かったよ。
…………俺もこうなる可能性があるのかな。
いいや…ダメだ。
俺がいなきゃダメだ。
「………部屋で話しませんか」
『良いですよ』
「動かない!!ああズレた」
『ふふふ』
ユーリと百合さんって、そういえば名前似てるなぁ。
あ、姉妹だっけ?
そりゃあ似るな。
「体は?洗う?」
「それは…恥ずいからいいや」
「恥ずい?!折角洗ってあげたかったのに…グスン」
「泣くなよ〜」
「じゃあ洗ってイイ?」
「もう勝手にしろ」
恭平は、はぁ…と小さくため息をついた。
だから痛いっ!と何度も怒りながら。
でも顔は笑っていた。
「なぁユーリ」
「ん〜?」
「その…ゴメンな」
「何がぁ?」
「いつも…迷惑かけて」
「うふふ」
ユーリは何故か笑っていた。
恭平は
「ゴメン」としか言っていないのに。
「何で恭ちゃんが謝るの?」
「だってさ…」
「じゃあチュウして?」
「?!」
恭平は座っていた椅子から落っこちた。
もうトマトの様に赤い顔は戻せない恭平である。
ユーリはケタケタと笑いザバーっとお湯を恭平にかけた。
温度は32℃である。
意外と熱い。
「熱っ!」
「早く出てね」
「ん−!」
恭平は犬がするように、頭をブルブルさせていたので水が飛び散りユーリに叱られていた。
それから10分後、一時間という長い入浴が終了した。
「…てか疲れた」
「恭ちゃ…………」
「?!」
【ガタンッ】
大きくドアを閉めて部屋から出て行ったユーリはキャアアア!!と言って走り出していた。
恭平はぼそりと
「人の体洗っておいて今頃?」と少しイラついていた。
−部屋にて
一息ついた恭平は近くにあったお茶を一口飲んでふぅ…と息をだした。
周りにはユーリと百合が座っていた。
春蘭と楓は先に就寝したようである。
部屋からスーっと吐息が聞こえている。
現在10:15分。
恭平にとってはまだ早い時間である。
ユーリは欠伸をしていたのか目には涙の跡が残っていた。
百合は真剣な顔をして恭平を見つめていた。
そんな百合を恭平も見つめていたが、ユーリに止められた。
「恋愛禁止!」
「は?」
『誰と誰がですかユーリ?』
「恭ちゃんとお姉ちゃん」
「ばっかじゃねえの」
「ムッ」
恭平の言葉にユーリはムッとして頬を膨らまし始めた。
恭平はユーリに近づき耳に軽く何か囁いたかと思うとユーリは茹で蛸の様に赤くなっていた。
「な…………」
「分かっただろ?」
『話始めますね恭平くん』
「あ、はい」
百合は恭平とユーリのじゃれあいの間に入り、身の上の話をし始めた。
それは二時間程かかった長い長い話であった。
『私は、恭平くんと同じ光の勇者の生まれ変わりです。その力を知ったのキルトが現れた事です。でも、世界を作らないかと言われはしなかった。』
…二年前
私はユーリと遊んでいた。
かくれんぼをしていた時どこからか声が聞こえた。
最初風だと思っていたのだけどもそれは違った。
そこに現れたのは小さな少年だった。
小学生ぐらいの男の子。
そうキルトだ。
「お姉さん、こんにちは」
「こんにちは?」
「ねえ…僕に力をくれない?」
「え?」
「あはは!大丈夫!痛くないよ」
キルトは私に手を向けた。
すると公園の周り一面が闇に包まれた。
怖い…そう初めて感じた。
ユーリはどこ?
私をどうする気?
力?
私には何も分からない!
只早く外に出たい。
「さあ…」
「嫌!!!!!!!!!!」
そう叫んだ。
すると私の手から剣が現れた。
そうそれが光の剣。
キルトはそれをもう気づいていたように、大声で笑い始めた。
私は気がついた。
【普通の人間じゃない】
「おっと!お姉さん光の勇者だね〜あは」
「光の…勇者?」
「やっぱりほしいな!君の力」
「切り裂いてやる!」
けれどキルトには全く効いていない。
逆に力を奪われていく感覚があった。
何…これは…。
「自分で死にたい?」
「………?!」
「死んだら力貰うね」
「や…だ」
「大人気ないなぁ」
「嫌!!!」
「さようなら!」
キルトは私の方へ走ってきた。
手には短剣を持って。
私の体はピクリとも動かなくなってしまった。
【ドスッ】
鈍い音が響いた。
私の腹から血が流れ出し地面と服が血だらけだった。
痛い……………………?
熱い……………………?
感覚と意識が消えてゆく。
ああ、私死ぬんだ。
最期にキルトの笑い声が聞こえてきた。
私を嘲笑うように…。
『そして気がついた時、私の体は霊体になっていました』
「……二年前にキルトが小学生…?」
「今は中学一年生なの?」
『計算すればそうね』
恭平はうーん…と何かを悩んでいた。
ユーリが
「どうしたの?」と聞いても、返事をしなかった。
「力は?」
『今は光を失ったわ。力はキルトの中に』
「じゃあアイツに勝てない?!」
「……まだわかんねえ」
「わかんねえって…」
「だって、百合さんは記憶があるんだろ?力を失ったなら記憶は消えるはず…それじゃあ辻褄が合わない気がする」
「そっか!じゃあお姉ちゃんにはまだ力が」
『いいえ。力を失ったのは本当です』
「じゃあ何で!?」
「アイツは悪魔と契約しているはずだ。特殊なやり方もあるはずだろ」
「あ!血だ!」
恭平は
「多分」と言って頷いていた。
百合の顔からは不安というオーラが漂っていた。
それは誰にでも分かる程……。
「百合さん」
「お姉ちゃん」
『はい…』
「俺は死なないよ。そしてユーリも守る」
「お姉ちゃんは安心してよ!」
百合の瞳は潤んでいた。
涙を堪えているのか手が震えていた。
この人も守らなくちゃ、そう恭平は思った。
「明日も早いし、今日はもう寝るか?」
「ん!」
『私は姿を消しておきます』
「じゃあおやすみ」
「おやすみ!お姉ちゃん」
『おやすみなさい』
と言って百合は姿を消した。
部屋に残ったのはユーリと恭平だけである。
恭平は早く寝ようとしか考えていなかったのだが、ユーリは少しだけ、悩みを抱えていた。
(恭ちゃん…お姉ちゃんの事好きなのかな?)
ううん!違うよ!
そんなこといつも気にしてないし!
大丈夫!
……………だよね。
私なんでこんなに恭ちゃんの事気になるんだろ。
好き…なのかな。
恭ちゃんさっき耳元で、
「お前の方が好きだよ」
と言っていた。
恥ずかしいぃぃ!!!
私が好き…?
………………あは。
「寝ねえの?」
「え?!あ、寝る寝る!」
「あっそ」
「おやすみ〜」
「電気消せよユーリ」
「うぃ」
「おやすみ」
恭平はニコッと笑いユーリのおでこをピシッと叩いた。
それから10分後、恭平は眠りについていた。
スーッと寝息が聞こえ始めた。
しかしユーリは寝れなかった。
考え事をすると寝れないのがユーリの癖である。
そして立ち上がり、外に夜散歩しに出掛けた。
「星…あったんだ」
夜の空にはキラキラ輝いている星があった。
ユーリはここに来て早4年である。
ここに来た理由。
それは両親の事故死によってであった。
まぁそれはおいといて。
綺麗だなぁ。
「は!楽しそうだね!」
「え?」
ユーリが後ろを振り返ると、木の上に1人の少年が座っていた。
闇と同じ色の瞳はユーリを見つめていた。
「き…キルト?!」
「あはは!ユーリちゃん頑張ってる?」
「何の用?!」
「ひどいなぁ。僕の仲間にならないか?」
「お姉ちゃんを殺したあんたを許さない!」
「そぉ?じゃあ許してね!今から」
「え?!」
キルトがストンと下に下りた。
ユーリは立ちすくんでいた。
怖い…………。
コイツは闇の化身だ。
逃げよう!
ユーリが逃げようと走り出すと、キルトが後ろで呪文を唱え始めた。
『静止』
何を言っているの?
私はそう思っていると、体が動かなくなった。
あ…。
声も出ない…………。
嫌だ…!
『君を利用させてもらうよ』
「………………」
キルトがユーリに近づいた。
そしておでこに何かを埋め込み始めた。
スゥ−っと消えていくと、ユーリの体に異変があった。
力が抜ける。
何…………これ。
キルトは嫌な微笑みをユーリにした。
「君の体は僕のモノ」
「………?!」
キルトは何かを埋め込んだユーリのおでこに指を当てた。
その瞬間、一瞬でキルトの体は消え去った。
どこにいったか?
ユーリの体の中にだ…。
『君の体は僕のモノって言ったでしょ?』
頭の中にキルトの声が響く。
気持ちが悪い。
何故私の体の中にいるの?
嫌だ…嫌よ…。
『君は僕の言う通りに動けばいいんだ』
言う…通り…に?
キルトは私に何をさせるつもりなの?
そんなの…嫌だ!!!
ユーリの顔は固まっていた。
頭の中に響くキルトの声がどんどんとユーリの意識を蝕んでゆく。
体はもう私の言う通りに動くことは許されないのか?
このまま、私は何をしてしまうの?
『大丈夫だよ!!あはは!!ユーリちゃんは何も考えなくていいんだよ』
何も…考えなくて…いい?
いや…何も考えられない。
どんどん頭が締め付けられていくよ…。
痛い!痛いの…。
誰か助けて!
恭ちゃん助けて!
ワタシヲタスケテ……………。
『…ユーリちゃん…』
ドキンッ!?
ユーリの体がキルトの声に反応し始めた。
するとユーリの腕は持ち上がり首の方へ動き始めた。
ユーリにはまだ意識が少しだけ残っていた。
体はキルトのモノだ。
動いた腕は、ユーリの首を締め付け始めた。
「グッ…」
軽くユーリは口が動いた。
息が続かない。
ユーリの意識は無くなった。
もう…完全に。
この時からユーリの体は
【キルトのモノとなった】
第七章 光と影の誘惑
朝、眩しい光で目覚めた恭平は
「ん〜」っと伸びをしていた。
隣を見てみると寝ている筈のユーリの姿が見当たらなかった。
どうせトイレにでも行っているんだろうと、欠伸をした恭平だった。
夜中汗をかいたのか、恭平の背中はびしょびしょだったので、服に着替え始めた。
すると上を脱いでいる時部屋の戸が開き始めた。
「恭平!ユーリ倒れてル!」
「あん?」
「マタ着替えてんノカ」
「お前も慣れたな」
「早くコイ」
「着替えさせろよ…」
そこに現れたのは春蘭であったが、何食わぬ顔で指を指していた。
しかし恭平は気にせずに服を着ていた。
「…ん?ユーリが倒れてる?!」
「反応オソイ!」
「まじかよ…」
恭平は急いで服を着始めた。
「おかしいな…」と呟きながら頭を掻いていた。
着替え終わると、恭平は春蘭に引っ張られて階段を降り始めた
「楓!」
「やっと来たわね!そう!ユーリちゃんが倒れてたのよ」
「今どこにいるんだ?」
「私の部屋に」
「入って良いか?」
「どうぞ」
恭平はそっと戸を開いた。
そこには何も表情のないユーリが眠っていた。
昨夜どこで何をしていたのか分からないが、首に手の跡が残っていた。
不思議そうにユーリの頬を持ち上げた恭平だったが、何か嫌な気を感じた。
「今…ユーリから何か嫌な気がした…」
恭平の腕には鳥肌が少し立っていた。
恭平はいつの間にか、嫌な気を感じる力を得た。
そう。
さっき感じたのは何故かユーリの体から。
しかもキルトのような。
「お前…何があったんだ」
「ん………」
「ユーリ?!大丈夫か?!」
「恭…ちゃん?」
「ああ良かった!痛いとこ無いな?」
「ちょっと体思いかな?」
「そっか…?」
いつものユーリには無い少し鈍った話し方だなぁ。
ま、大丈夫だよな。
「あ、その首の跡…」
「これ?ああこれはね〜寝ぼけてタオル巻いちゃったみたいなんだ!」
「?なら良いけど」
恭平の顔には疑いがあった。
タオル?
この世界にあったか?
そんな上手く首に巻けるはずが無いじゃないか。
ユーリ…君は嘘をついてはいないだろうか。
真実を僕に教えてくれ。
「恭ちゃん?」
「あ、ああ。」
「手〜貸して頂戴」
「あ、うん」
まただ…。
ユーリの手からは嫌な気を感じてしまう。
いつもと違う彼女?
闇の…いや影か…?
ユーリ…。
「恭平くん!」
「楓さん…………」
「どうしたの?」
「いいえ…何でも無いですよ…」
「ユーリちゃんの事?」
楓さんは何でも分かってしまうんだね。
そう、ユーリの事。
ユーリがいつもと違う。
ユーリがおかしい。
ユーリから嫌な気がした。
どうしたらいい?
俺は聞きたかった。
ホントウノカノジョハ?
でも、出来なかった。
「いいえ。大丈夫ですよ」
「そうですか」
「食事、作りましょうか?」
「ええ。ありがとう」
恭平は無理をしていた。
俺は間違っているのか?
どうして…。
こんな力いらないよ。
嘘でもいいから、いつものユーリが見たい。
見たいんだ…!
「恭平?」
「春蘭…俺はおかしいのか」
「?」
「もう…嫌だよ」
「どうしたアルか」
「ユーリが…ユーリじゃないみたいなんだ」
「ユーリは普通だゾ」
「違うんだっ…」
恭平の目からはポロポロと涙がこぼれていた。
それには春蘭も驚いて
「泣くナよ〜」と慰めていた。
俺だって…泣きたくない。
知りたいんだ…。
キミノココロヲ。
「うぅっ…うぅ…」
「恭平…」
「もうっ…俺…嫌なんだ…」
「何がダ?」
「世界なんか守りたくない…」
「…」
「俺には…無…」
バシンッ
春蘭は恭平の頬を思いっきり叩いた。
その力で、恭平は後ろに倒れてしまった。
恭平の頬は赤く腫れている。
もっと驚いたのは春蘭の顔であった。
彼女は泣いていたのだ。
恭平のようにポロポロとではなく、スゥーっと流していた。
そして大声で。
「恭平はバカアル!!お前が守らなくテ、誰がこの世界守ル?!」
「し…春蘭」
「お前が…お前シカ…この世界は守れなイ!」
「ごめ…」
「謝るナ…!!よく考えロ!!恭平は一人じゃないんだかラ!!」
「……………………」
恭平は口を閉じてしまった。
春蘭が…俺のこと…ちゃんと考えてくれていた。
誰も…言ってくれないと思っていた言葉を。
ああ…そうだったんだ。
俺以外に世界を守れる人はいないんだ。
「ごめん…………」
謝ることしか出来なかった。
涙も嗚咽も止まらなくて、誰かに側にいてほしかった。
抱きしめてほしかった。
今まで俺は自分を
「一人」だと思っていた。
父さんや母さんは味方じゃないと思っていた。
「恭平は一人じゃない」
それを誰かに言って欲しかったんだ。
「ありがとう…春蘭」
その頃春蘭の部屋では、春蘭も涙を流していた。
ワタシ恭平…叩いた。
泣いてイタ…。
こんなコト…辛いヨ…。
支えてアゲなくちゃいけナイのニ…。
ワタシのバカ!
バカアルよ…。
こんなコトで嫌いにナンカなれるはずナイのに。
やっぱりワタシ恭平スキ…なのかナ?
「スキなんて…サ」
トントン!
春蘭の部屋の戸に音がした。
「春蘭?楓よ?」
「楓…アルか」
「入るわよ?良い?」
「……」
ガラガラ!
ゆっくりと春蘭の部屋に入った楓は笑顔だった。
春蘭は目をゴシゴシして涙を拭いていた。
「どうしたの?」
「……何でも無いアル」
「恭平くん、泣いてたよ」
「!!!!!!!!」
「笑って泣いてたよ」
「どう…シテ?」
春蘭の肩は震えていた。
自分のせい?
どうしたらよいのか?
ワタシは…。
「恭平くんの事、好きなのね」
「?!」
「それぐらい分かるわ」
「…………」
春蘭は黙ってしまった。
口が固まってしまっている。
楓は
「そうね」と春蘭の頭を優しく撫でた。
春蘭は楓の暖かい手に落ち着いたのか、涙がポロポロ流れ出ていた。
「うんうん」
「楓…」
「でも…私たちは創られた存在だからね」
「ゥん」
「行きましょう」
「ん」
楓は春蘭の手を優しく引っ張った。
春蘭の顔は笑っている。
そしてみんながいる場所へと戻った二人でした。
「あ、春蘭!」
「ユーリおはようネ」
「うん」
「はい!朝ご飯だよ」
恭平もすっかり涙が止まり晴れやかな気持ちでいた。
その顔はいつも通りの顔であった。
「さ、食べて」
「ウマそうダナ」
「上手いぞ」
「ふぅん」
「し、信じろよ」
「信じてるアルよ」
「お前今日頭大丈夫か?」
「ウルサい」
春蘭は恭平の頭を軽く殴った。
「痛てえ?!」
「バカにしたカラだ」
「うぜぇ」
「あ?!」
「なんでもありません」
春蘭と恭平のコントはいつも通りである。
春蘭は恭平を
「バカ」と馬鹿にしていたが、恭平は
「はいはい」と軽く受け流していた。
ユーリと楓は顔を見合わせて微笑んでいた。
「楽しいわね」
「そうですね。」
『失敗かな?ま、楽しみは取っておこうかな?あはは!』
「ユーリさん?」
「はい?」
不思議そうにユーリを見つめている楓が
「熱でもあるのかしら?」とおでこにそっと手を当てた。
「脈は正常、熱もなしね」と安心していた。
今ユーリには意識は無い。
全てはキルトの操り人形のような状態である。
「ご馳走様デシタ」
「結局俺の分まで完食かよ」
「恭平…送るヨ」
「あ、ああ」
「サヨナラしたくないが妖怪狩るダロ?」
「後何匹か分かればな」
「後10匹ダ」
「?!何でわかんの?!」
「勘」
「あっそ」
恭平は春蘭の髪の毛をクシャクシャと弄った。
「止めるアル!」と春蘭は怒っていたが、顔は笑っていた。
恭平も笑っていた。
こんな世界が続けばいいのに。
永遠に続けばいいのに。
未来は…。
そう恭平が考えているとユーリが立ち上がり、上の部屋から荷物を持ってきた。
恭平の荷物も。
ユーリは光の剣を見つめていたのだが、すぐに恭平に目を移した。
口を開いたユーリからは聞いたことの無い言葉だった。
「光の剣欲しいな」
「ユーリ?」
「え?!あ、ああ!何でも無いよ!あはは!」
「じゃあ行くか」
「うん!」
「じゃあお世話になりました!また会いましょう!」
恭平はペコリと挨拶をした。
それに遅れてユーリも挨拶をしていた。
楓と春蘭も
「いえいえ」と笑っていた。
「じゃあ、またね」
「バイバイ」
そして俺達は二人の家を出ていった。
なんだか清々しい気持ちだな。
相変わらずユーリからは嫌な気がしてるけど。
春蘭と楓さんは気にするなって言ってたけど。
何だかなぁ。
いつもなら話しかけたいんだけど…さ。
何か今日は近寄りがたいんだよな。
「恭?」
「え?恭ちゃんじゃないんだ」
「あ」
「何か今日おかしいよ」
「どこが?」
「お前がお前じゃないみたいなんだ」
「私が私じゃない?」
「キルトに…関係あるのか?」
「分からないよ」
ユーリは恭平を睨みつけた。
急に睨み付けてきたので恭平はびびっている。
両手を前に出して
「ドードー」と軽く抑えている。
ユーリがキレたのなんか初めてだな。
やっぱりおかしい…。
てゆうか、怖えぇ…。
嗚呼…こんな時に…。
【ニ"ャアアアアアア】
猫来たぁぁぁぁ!!!
しかもデカいよぅぅ!
「ユーリ!」
「恭ちゃん!!!!!!!」
「止めろ!」
このセリフもう言うのは嫌だなぁ。
もっとカッコ良いセリフ言いたい…ん?
ちょっとまて…。
光の剣…出てないし!
「出ないよぉぉ?!」
「セリフ考えてみて!」
「えぇ?!」
「光の事考えて!」
『僕の事気付きそうで気付かないんだね。面白いね!恭平くん』
ユーリ…何故君はそんなに笑っているんだい?
怖い…コワい…こわい…
君が怖いよ!
何かにとりつかれてるのか?!
「兎に角…光の事考えて…ってどうしたら?!」
嗚呼どうしよう!
猫恐怖症なんだよぅ!
近付かないでぇう!
【ニ"ャア"オ】
「ひぃ!?」
「恭ちゃん!」
「嫌だぁぁぁぁぁ!」
恭平が恐怖に追いかけられてついに叫ぶと鞘から光の剣が現れた。
恭平は口をパカンと開け腰を抜かしていた。
「…んで…?」
「恭ちゃん!来るよ!」
「ぅおお!」
猫…猫だから…。
「ニャン?」なんてな…!
いやいやそれは無い。
全く俺バカだな。
「ニャン…合ってる!」
「またかよ?!」
恭平は体制を整えて剣をニャンに向けた。
恭平の瞳には奴しか映っていない。
恭平は助走をつけ、走り出している。
そして飛び上がった。
「ひぃぃぃぃぃ?!」
「怖がるなぁ!」
「今日のユーリは男らしいぃ!」
「五月蝿い!!さっさと斬れぇ!」
「人格変わりすぎだよ!」
ズシャアッ
恭平はニャンの頭から剣を入れ切り裂いた。
後ろからはニャンの苦声が聞こえてくる。
恭平は回転しながら耳を塞いでいる。
猫の鳴き声はうざい!
ああ…嫌だぁぁぁぁ!
その頃ユーリの体の中ではキルトが爆笑していた。
『恭平くん笑える!!いつもこうなのかい!!あっははは!!』
【ウ"ニャア!!!】
恭平は何回転したのか?
グルグル回って回っているので目が回っている。
声も
「うわぉえぅい?!」
と裏がえっている。
そのたんびにユーリが爆笑している。
いや…キルトが。
『やっぱりおもしろいね恭平くんは』
「もう…やだ…」
恭平はやっと地面に着いた。
しかし着地はできたけど力が抜けたのか、バタッと倒れた。
「恭ちゃん大丈夫?」
「大丈夫な訳…無いんだよ…」
「砂になっちゃった」
「ヒィ…ヒィ…」
「まだ続くんだよね」
「そだね−」
「じゃあ行こうか!」
「ユーリ?」
「置いてくよ?」
人格変わってんなぁ。
これ本当にユーリか?
俺の知っているユーリはもっとカワイくて−。
素直で−。
口悪くなくて−。
性格良くて−。
俺が好きなタイプ−。
んん?!んんん?!んんんん?!
「こんなに違うって事は頭打ったのかな?」
「恭ちゃん!」
「はいはい…行けばいいんでしょ?」
恭平はユーリに引っ張られてゆっくり歩いている。
少し疲れたように。
いや…まじで疲れたの。
本気で本気。
猫恐怖症は辛いよ。
あの目!怖い怖い!
あんなの好きな奴いんの?!
もうやだね。
風が奴の砂を吹き飛ばしていたようだ。
後何匹いんだよ…。
数多いな。
「恭ちゃん!」
「んあ?」
「次の敵来てるよ」
「うぇ?!」
恭平が恐ろ恐ろ上を見ると目が三つある犬がいた。
地獄の番犬?
ケルベロス?!
こんな所にいるわけが…。
まさか現実にっ?!
「何故っ?!」
【グルルルゥゥ】
ケルベロスは威嚇していた。
動物苦手の恭平は怖じ気づいている。
時々口から
「怖いぃ!」と叫びが聞こえる。
ユーリは手にトランプのような物を持っている。
そこに描かれているのは
「死に神」と
「番犬」である。
キルトは妖怪を操り人を殺め続けているのか?
ユーリは不気味な笑みを見せている。
「ケルベロス…」
「恭ちゃん!来るよ!」
「かかって来いよ」
「来た!!」
ケルベロスは崖の上から飛び降り、恭平とユーリの前にストンと降りた。
意図も簡単に。
口からは涎と息がこぼれ落ちている。
恭平を睨みつけている。
恭平も負けじと光の剣をケルベロスに向けた。
「どっからでも来い!」
【そうするよ】
「?!」
【そんなに驚く事かい】
「ケルベロス…」
【その通り。我はケルベロスである】
「君の目的は」
【早瀬恭平を殺す】
「質問を間違えたかな」
恭平は苦笑いをした。
ケルベロスは言葉を話すことが出来るのか…。
今までの妖怪とは格が違いすぎる。
怖い…。
まさに地獄の番犬だ。
こんな奴までキルトは下部としているのかっ?!
恭平は唇を噛み締めた。
近くにいるユーリはニコニコと笑っていた。
それに気がついた恭平はユーリの方へ見た。
「ユーリ!!」
「え?」
「お前………」
「なぁに」
「怖くないのか…?」
真面目な顔をしている恭平に再び笑ってしまったユーリであったが、それには焦っていた。
周りを見渡すと何もない崖だけだ。
目の前にはケルベロス。
恭平の手は震えていた。
「怖くないよ」
「……………ユーリ」
【僕の使命は早瀬恭平、君を殺す事だ】
「さっき聞いたよ」
【そうか。なら話は早いな】
ケルベロスは笑った。
すると、ケルベロスの体は光り出し、なにやら人のような形に変わりだした。
影…のようだ。
それを見た恭平の顔は凍り付いている。
「お…俺…?」
そう…。
ケルベロスが変化したのは、恭平の姿だった。
しかしそれは影のように真っ黒であった。
恭平は何が何だか分からない状況に陥った。
怖いのだ。
自分の目の前に自分がいる。
俺じゃない…。
「恭ちゃんが二人?!」
ユーリは驚いたような顔をしていたが、内心は笑っていた。
このまま行けば恭平の心は壊れる事を分かっていたからだ。
恭平は自分と闘わなくてはいけないのだから。
「っ…!」
【俺は死にたくない】
「………」
【世界なんて守りたくない】
「それはっ!」
【世界なんていらない】
恭平の心は揺らいでいた。
自分の心が何故分かる?
こんなのおかしいよ。
恭平の口は固く閉じている。
そんな時周りが闇に包まれた。
恭平の体は闇に溶けて消えていってしまった。
恭平もケルベロスも。
恭平は小さく目を開いた。
(ここは…どこ?)
恭平が周りを見渡すと、ケルベロスの姿は見当たらない。
その代わりに幼い恭平が立っていた。
「ママ〜」
「私はもうあなたのお母さんじゃないのよ」
「何でそんな事言うの??」
「本当の事だからよ」
「いかないで」
「さようなら恭平」
(嫌だ…嫌だ…嫌だ…!!母さん俺を捨てないで!!俺を見てよ!!)
「あなたは私に必要ない人間なのよ」
(必要…ない…)
「可哀想な僕」
「可哀想な恭平」
「可哀想…」
(止めてくれ!俺は可哀想なのか?!)
「そうよ」
「もう僕は世界を守らなくていいんだよ」
(守らなくて…いい?)
「そうよ。あなたはもう世界を守らなくていいのよ」
「誰も僕を恨まない」
(恨まない…?)
「僕は自由なんだ」
(自由…)
「世界なんて必要ないんだよ」
(必要…ない?)
恭平は頭を抱えて膝を地面につけた。
「ああ…ああ」と魘されながら苦しんでいる。
世界なんて必要ないのか?
俺は自由なのか?
世界を守らなくていいの?
俺はここにいていいの?
オレハダレナンダ………
(もう嫌だ!!!)
恭平は精神的に攻撃を受けてしまった。
心が傷ついてしまった。
でも…負けてられないのだ。
俺は…どうしたら…?
「恭平は一人じゃナイ」
突然春蘭の声が、闇の中に響き渡った。
恭平の青い顔が少しだけ落ち着いていた。
空っぽになってしまった恭平の心には、春蘭とユーリと楓の思い出が残っていた。
いつも暖かい楓の手。
いつも口喧嘩してた春蘭の顔。
いつも側にいてくれたユーリ。
俺は一人じゃないんだ。
ユーリも春蘭も楓さんもみんないるんだ。
そんな世界を、俺は守りたいんだ。
分かったよ。
(ケルベロス…。いや俺。君はここにいていいんだよ。一人じゃないんだ)
「一人…じゃない?」
(うん。みんながいる。だから俺はここにいる)
恭平は笑って自分の胸を軽く叩いた。
それを聞いたもう一人の恭平は
「そうか」と言って消えていった。
恭平は(俺はここにいる)と呟いた。
目の前の嘘の情景はゆっくりと消えていった。
恭平の体も、現実の世界に戻ってこれたのだ。
しかし力を使い過ぎたのか恭平は倒れ込んだ。
薄れ行く意識の中でケルベロスが【さらば、面白い少年よ】と呟いたのを聞こえた気がした。
ユーリは
「役立たず」と言ってトランプを破り捨てた。
妖怪が描かれているトランプを破ってしまうと、その妖怪は砂となる。
そうだった。
ケルベロスは砂となった。
それが分かったのか恭平の目から涙が流れていた。
もう一人の俺…。
さようなら……………。
「!」
「ゃん!」
「恭ちゃん!」
恭平がゆっくりと目を開くとそこにはユーリの大画面が映っていた。
「うぉ?!」と恭平は飛び起きてしまい、おでことおでこがぶつかった。
「いったぁい!」
「ご…ごめん」
「私は大丈夫だけど、恭ちゃんは?」
「ちょっと辛いかな」
「闇の中で…何かあったの?」
恭平は黙りこくった。
答えたくないのだろう。
あんな事を…。
そうだった。
恭平はもう一人の自分とそして自分を捨てた母親皐月と話をしていた。
「世界を守らなくていい」
「君は自由なんだよ」
全て、その通りだった。
自分は世界を守れる自信が無かった。
弱い所を全部知ってた。
見られたくない思い出を全て言われた。
思い出したくなかった。
凄く凄く傷ついた。
ズタズタと俺の胸だけに秘めてある事を引っ張り出して引き裂いた。
でも負けなかった。
みんながいたからだ。
俺は一人じゃないんだよ。
そう気付けた。
「恭ちゃん?」
「ありがとう」
「……………うん」
恭平はユーリに笑いかけた。
その笑顔は嘘ではなかった。
凄く傷ついてるはずなのに。
凄く泣きたいはずなのに。
凄く辛いはずなのに。
恭平は笑って
「ありがとう」と言っていた。
『………君は…』
キルトの心も少し動き始めていた。
「はあ…。次行くか?」
「恭ちゃんは休んでて!!水汲んでくるから」
「え?!」
ユーリは近くの井戸に走り出していた。
バケツを持って。
恭平は
「何だよ?」と少し嬉しそうに毛布にくるまっていた。
『悪魔よ出てきてくれ』
キルトが声を出すと、目の前に黒い服を纏った悪魔アンジェリーナが現れた。
アンジェリーナはキルトの顎をひょいと持ち頬に軽くキスをした。
これはいつもの事である。
【あらん。今日は一段と可愛いじゃない】
『彼女の体を借りてる』
【今日はどうかしたの?子猫ちゃん?】
『子猫ちゃんは止めてくれないかアンジェリーナ。…君に頼みがあるんだ』
【あら】
『トランプをくれ』
【あなたにあげたはずよ。バードンもドーロも】
『まだ…あるんだろ』
【あるわね】
アンジェリーナはケタケタと笑っていた。
キルトが『何がおかしい』とキレていたが、アンジェリーナは笑っていた。
【子猫ちゃんはあのハンサムボーイに負けてるのね?】
『五月蝿い』
【んもぅしょうがないわね。このカードをあなたにあげるわ】
キルトが受け取ったトランプには
「闇」
「影」が描かれていた。
キルトは疑いながら『これはなんだ?』と聞いていた。
アンジェリーナは、長い髪の毛を触りながら、
【闇のトンネルよ】
『闇の…トンネル?』
アンジェリーナはキルトのおでこをちょんと付き不気味な笑みを浮かべた。
それにはキルトも恐れていた。
【あらん…知らないのね…。】『それは何…?』
【そのトランプは人を闇に閉じ込め力を全て奪い自分のモノにするのん】
『はは…。それはいいね。使わせてもらうよ』
【じゃあ頑張るのよん】
アンジェリーナはキルトの頬に軽くキスをして姿を消した。
キルトはトランプを手に取りそれを飛ばした。
するとニヤッと笑い恭平の元に戻っていった。
「恭ちゃん」
「遅かったな」
「ちょっと井戸を掃除してました」
「は?!何の意味が?!」
「いいじゃない」
恭平はびっくりしていた。
てか掃除すんなよ!!
大切な水ねえし!!
てめえは何をやっていた?!
嗚呼…何て可哀想な俺。
好きな奴にまで振り回されて。
あん?
ああもう白状するよ!
君たちにはバレバレか…。
そうだよ!
俺はユーリが好きだ!
恋をしたことなんてないから分からないけど、ユーリに側にいて欲しいってか抱きしめたいってか…好きなんだなって。
え?
知ってた?
ユーリも俺の事好きなの?
うっそだ〜。
……………嘘じゃないの?
「恭ちゃん誰と話してるの?」
「だからこれを読んでる読者さんと…」
「大丈夫?」
「俺の事バカにしてるだろ」
「うん」
ユーリはケロッと答えた。
その反応には恭平も呆れて
「あっそ」とそっぽを向いていた。
顔は赤い。
ユーリはいや…キルトの顔には嫌な笑みが浮かんでいる。
恭平はその顔をチラッと見てしまった。
ユーリ?
昨日から何かおかしいんだよなコイツ。
何か秘密を隠してるのか?
教えて欲しいのに…。
「そうだ!!噂なんだけどね恭ちゃん『闇のトンネル』って知ってる?」
「闇のトンネル?」
「知らないかぁ。そこに妖怪が住んでるって聞いた事があったから」
「行ってみるか?」
「うん!」
ユーリもといキルトは心の中で笑っていた。
罠にかかった…とね。
はてさて、恭平くんの運命は変わるのかな。
ユーリちゃんはどうなるのかねえ。
楽しみだねえ。
恭平くん…。
アハハ!アハハ!アハハ!!!!!
恭平とユーリは借りていた宿から出て、キルトが投げ捨てたトランプに描かれている『闇のトンネル』に向かうことになったのだ。
元は存在しない闇の世界へ通じるトンネルへ…ね。
30分位歩くとポツリと寂しげにトンネルがあった。
ボロボロで少し怖い。
恭平は幽霊とかそういう物は怖い。
だからゆっくりと進み出した。
恭平がゆっくりと入ると上からピチョンピチョンと不定期的な水の落ちる音が気味が悪い。
闇のトンネルというだけはあって真っ暗だ。
ユーリは入らなかった。
「怖いよ〜」と言って恭平だけ入れさせたのだ。
水がピチョンと落ちる度に恭平は
「うきゃ?!」とびっくりしていた。
「ユーリ〜俺怖いんだけどぉ」
「頑張って!」
「ひどっ?!酷いよ」
「あ?!恭ちゃん前!!」
ユーリが大きな声で指を指した。
恭平が後ろをフイッと見た瞬間ユーリは指をパチンと鳴らした。
するとトランプが浮き上がり恭平を閉じ込めた。
トランプの
「中に」。
恭平が飲み込まれる時、ユーリの甲高い声がトンネルの中に響いた。
『チェックメイトだよ』
「うぉぉうぇお?!」
恭平は叫びながらまた回転していた。
自分が今どこにいるのか分からない。
ここはどこだぁ?!
えっと俺は闇のトンネルの中に入って、ユーリの声が聞こえて…ああ!その後が覚えてないよ!
………。
【アナタがハンサムボーイ?】
「誰だ!」
【あらん…本当にカッコイいじゃない】
「俺は誰だと聞いている」
その黒い服を纏った女性はニコッと笑って恭平の頬にキスをした。
それには驚いた恭平は
「何すんだよ?!」と顔を赤くしていた。
その反応が気に入ったのかもう一度キスをしようと近づいてきた彼女から恭平は距離を置き指を指した。
「誰だよ!!あんた」
【アンジェリーナよ】
「アンジェリーナ?!」
【悪魔よ】
「悪魔かよ…」
【あらん…綺麗すぎて驚いちゃった?】
「バカかてめえは」
【口悪いところもいいわねえ】
アンジェリーナは綺麗だ。
これで何人の男や人間を手玉に取ってきたのだろう…。
恭平は全く興味を示していないがな。
恭平は
「ここどこだよ」ともう諦め気味にアンジェリーナに聞いた。
アンジェリーナは【あら】と喜んで答えた。
【ここはねトランプの世界よ】
「トランプの…世界?」
【アナタが逃げることは不可能な世界よ】
「逃げるって………」
『今頃気付いた?』
?!
上を見るとキルトの声が聞こえた。
恭平は
「どこにいる?!」と焦っていた。
でもキルトの姿はない。
目の前にいるアンジェリーナだけだ。
『君はそこから逃げられないんだよ』
「姿見せろよ!キルト!」
『ははは!!小鳥が暴れても自由に飛べないんだよ』
「小鳥言うな!!」
恭平は少しキレている。
その反応にアンジェリーナは爆笑していた。
恭平はアンジェリーナにも
「笑うな!」と怒っていた。
『じゃあ精々頑張ってね恭平くん』
「五月蝿いぃ!!!!!」
それからはキルトの声は完全に聞こえなくなった。
恭平は
「あいつどこでも現れんだな…」と呆れていた。
でも俺を閉じ込めてどうする気だ?
変な奴だよな
……………。
恭平は無言になった。
今の喋り方…独特な訛りがあった気がした。
どこかで聞いたような…。
ああ!本当に思い出せないじゃないか!!
ユーリ…。
【ねぇ】
「なんだよ」
【世界を守れると思ってる?】
「………何がだよ」
【この世界は毒なのよ?】
「キルトと同じ事言うなよ」
【ふふふ…同じだったかしら】
恭平は苦笑いをしていた。
(俺…何でこんな悪魔と普通に話してんだろ)
つうかコイツキルトの何なんだろう…。
悪魔…。悪魔?!
まさかコイツ…!!!!
『キルトの契約相手』?!
【今頃気付いたのかしら?】
「バカなもんでね」
恭平は心が読まれた?!と少し冷や汗を流していた。
相変わらずアンジェリーナは笑顔で笑っている。
【そろそろかしら】
「?」
ガクンッ
恭平は急に来た体の重さに驚いた。
(重いっ?!何だ?!)
恭平の体は立っていられずガクンと前のめりに倒れ込んだ。
アンジェリーナは【うふふ】と笑って恭平の光の剣を取った。
「何…すん…だよ」
【この光の剣はね強い力を持ってるから、私が預かっとくわ】
「返せ…!」
【アナタの力が完全にキルトのモノになったらね】
「俺の…力」
【可哀想だから教えてあげるわね。この空間は私の力で作ったトランプの中なのよ。そしてこのトランプはアナタの力をキルトが得ることが出来る最良の場所なのよ】
話を理解した恭平は
「俺の力は渡さねえ!」と叫んだ。
しかしみるみるうちに恭平の体は自由を奪われていく。
体力もである。
恭平は体を動かすことが出来ないのである。
「あうっ…」
【ほらほら…力が無くなってゆくでしょ】
「封印が…っ?!」
さっきキルトの声がした時封印を解いた恭平の体は光を失っていた。
完全に封印が封じ込まれてしまったのだ。
かつては金色だった髪も元の黒髪に戻ってしまった。
「ユーリ…」
【あああの子ね】
「知ってんのかよ…」
【ま、そうね】
「ここからどうやれば出れるんだよ…っ?!」
【教えてあげてもいいけど…】
「教えろ!!」
アンジェリーナは動けない恭平の唇に指を付けた。
恭平は
「は?!」と言って目をそらした。
アンジェリーナは恭平に優しく言った。
【私と契約を結ぶの】
「お前とっ?!」
【私と契約を結んだら死ぬわ】
「死ぬだと?!」
ふふふ。といつも通りに笑っているアンジェリーナに恭平は恐れをなした。
怖いよ…てか怖いんだけどさ!
死ななきゃ出れないってか?
随分とした選択だこと。
死ぬか、このまま力を奪われて終わるか…か。
決まってんだろ。
「契約してやるよ」
【そう?なら良いわ。じゃあ証拠にキスして】
「は?」
【キスしなきゃ成立出来ないのよ】
「……キスじゃなきゃダメ?」
【しょうがないわねえ。手出して頂戴】
「手?」
恭平はびびりながら手をアンジェリーナに差し出した。
するとアンジェリーナは恭平の掌に軽く口づけをした。
恭平は口をパカンと開け何してんだ??と思っていた。
だが次の瞬間恭平は理解したように苦笑いをした。
「呪い…か」
【正解!】
「さっさと出して」
【はーい】
アンジェリーナは何やら呪文を唱え始めた。
恭平は目を閉じた。
死んでもいい。
だから世界を守らなきゃいけないんだろうな。
運命を…変えてやる!!
【………ビルディア…ルルームデオポルト!!!!】
その呪文を聞くと恭平の視界が揺れ始めた。
目の前にいたアンジェリーナも消えた。
最後にアンジェリーナが【あ、そうそう】と言った。
【一度死んだら呪いは解けちゃうからね】
「死んだらって…おい!!」
恭平の声は届かずアンジェリーナは闇へと消えていった。
恭平も
「うわぁぁ?!」と叫び一瞬で消え去った。
第八章 死んでたまるか
ドタンッ
恭平は空中に現れたため上手に着地が出来ない。そのため腰を打った。
泣きたいほど痛かったが声を押し殺した。
そこにはユーリがいたからだ。
アンジェリーナと一緒に。
「ユーリ?」
恭平は混乱していた。
アンジェリーナと何で仲良いんだ?
まさかな…。
おい…そいつ…悪魔だぜ。
狙われてんじゃねえの?
まぁ…良い奴だけど。
「ユーリ!」
俺がユーリに声をかけるとユーリはアンジェリーナの首を締めていた。
焦って手の力を抜いたユーリは俺の方を見た。
でも…俺を見るユーリの目はユーリじゃない。
「ゆ…ユーリ?」
【あらん…ごほっ…無事だったのね】
「アンジェリーナ?」
【私はそろそろ消えるわね】
「消え失せろ」
アンジェリーナの体がスゥ−っと消えていった。
ユーリじゃないよな。
ユーリ?
いや誰だコイツ。
ユーリじゃない。
幻覚かなぁ…ムゥ…。
「恭ちゃん…」
「ひぃ!」
「帰ってきたぁ!」
「え?」
ユーリはいつも通りの笑顔を俺に見せてきた。
おかしい…よな。
兎に角…ここから出たいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
「出れるよ?」
「ああ…そっか」
「おいで」
「ん…ああ」
恭平はのそのそと歩き出してユーリの元へ行った。
久しぶり?に見た太陽の光が何だか気持ちいい。
でも…俺の命は3日っていうことか。
値切りやがって…。
「恭ちゃん!大丈夫だった?」
「ああ…。あのさ」
「?」
「いや…何でもねえよ」
「そっか」
ユーリはニコッと笑った。
可愛い。
ああなんて可愛いんだ。
心が落ち着くよ…。
でも抱きしめたくないんだよな今は。
変なもの見ちゃったし。
あはは〜。
「恭ちゃん!」
「うい」
「私ね…恭ちゃんのこと好きなんだ!」
「え?!」
「私のことどう思ってる?」
「えーっと…」
そんな急に言われても…困るんですけど。
言っちゃって良いのかな?
好きだってこと。
よし、言おう!
恭平は深呼吸を1回してユーリの肩に手をポンと置いた。
顔は赤い。
「俺も好きだ」
そう言った瞬間ユーリは顔を赤らめずに…。
ん?
赤らめずに…って…。
ええ?!
そうだった。
ユーリは走り出した。
恭平の元に。何かを持って走り出したのだ。
「ユーリ?」
「恭ちゃん!」
ユーリは恭平に抱きついた。
恭平もユーリをギュウーっと抱きしめた。
しかしそんな幸せもすぐに消えてしまうとは。
グサッ
鈍い音がした。
恭平は
「何…」と良いながら前のめりに倒れた。
恭平の背中から何か赤い物がダラダラと流れていた。
その顔をみたユーリは大声で笑い始めた。
いつものユーリではない事が分かった。
背中が熱い………。
背中が痛い………。
どうしてどうしてだ?!
「あっははは!」
「ユーリ…じゃないな。なぁそうだろ…キルト」
『分かってたんだ』
「まあ…な」
『いつからかい』
「結構前…かな…」
キルトは倒れている恭平の顎を軽く持ち上げて笑った。
背中からは溢れ出るように血が流れてる恭平には力が出ない。
「止めろ…」と小さな声を出している。
『君はバカだねえ』
「…うるせえ?!っ…」
『意識が朦朧としてきたでしょう?君は死ぬんだよ』
「それは…好都合だ…」
『?』
恭平はフッ…と笑い意識を失いかけた。
キルトは『何を言っているのかな?』と足で恭平の背中を踏みつけた。
恭平は軽く
「んぅっ?!」と苦声を出した。
『君は愛しの彼女に殺されるんだよ』
「………分かってら」
『さようなら』
もういちど、キルトはナイフを恭平に向けて、ニヤリと笑った。
恭平は目を閉じた。
死ぬと確信したかの様に。
恭平は誰かの声を聞いた。
女か…な。
誰だ?暖かい…。
でも…もうダメだな…。
俺…死ぬわ…。
ごめんな…。
フッ…と恭平は意識を失った。
誰かに抱きかかえられながら。
「はぅ?!」
恭平は目を覚ました。
でもそこは今までいた場所ではなかった。
恭平は体が透けていた。
「俺死んだんだ」と1人ごとを呟いていた。
周りを見渡すと何もない静まった所だった。
『お前はまだ死んでないよ』
「え…?」
恭平は後ろを振り向いた。
すると男が立っていた。
恭平はその男の顔を見ると、凍りついた。
そして最初に発した言葉はこれだった。
「父…さん」
そうだった。
その男は恭平の父謙三だった。
自殺して死んだ謙三であった。
恭平は殴りかかろうと飛びかかった。
「親父っ!!!!!」
『おっと。焦るな焦るな。ここはどこだか分かるか?』
「知らねえよ!」
『ここは生と死の硲という場所でなぁ』
「生と死の硲だと…?」
『だからまだ死んでないんだお前は』
「現実的には死にそうだけどな」
『良く分かってるじゃないか』
謙三は恭平を誉めた。
でも恭平は謙三から距離を置いた。
そして睨みつけていた。
親父には色々と聞きたい事があるからな。
何故死んだのか。俺はそれが知りたいんだ!!
何故俺を置いて死んだ?
一人ぼっちは嫌だと言ったよ?
俺は…俺は…寂しかったんだ。
自分の声だけが耳に入って来て俺だけが…。
酷いよ…親父は酷い…。
『悪かった…恭平』
「謝るなら自殺なんかしないでくれよ…」
『悪かった…』
「だから謝るな!!」
恭平は謙三の胸を掴んだ。
その手は震えていた。
恭平の目からは涙がポロポロと流れ出ていた。
「どうしてだよっ!!」と謙三に当たる恭平の姿は幼く見えた。
父に当たる少年の様に。
『恭平』
謙三に呼ばれた恭平は顔をあげることが出来なかった。
今あげれば大声で泣き出してしまいそうだったからだ。
泣きたいよ。
大声で泣きたいよ。
「何…だよ…」
『お前は光の勇者の生まれ変わりなんだろう』
「何でっ?!」
『世界を守るんだよ』
「それは…」
『負けるな恭平』
「…簡単に言うなよ…」
恭平は涙を拭いて謙三の方を睨みつけた。
謙三はでも笑っていた。
その顔は普通の父であった。
いつも殴られてたけど今は怖くない。
「俺は…」
『戻り方なら教えるよ。俺の力をお前に与える』
「それじゃあ…っ」
『俺は消える』
「…また辛い選択しなきゃいけねえか…」
『お前は世界を守る為に頑張るんだ』
謙三は恭平の肩をポンと叩くと笑いかけた。
恭平は落ち着いている。
涙はもう止まっている。
深呼吸をして恭平は父親謙三の顔を見つめた。
「親父」
『さあ行け!!世界をまもるんだろう』
「ああ!じゃあな」
『俺はお前を…見守っ……』
「親父?!」
謙三の姿は消えていった。
少し涙ぐんだ恭平だったけども確信したように、目を閉じた。
恭平は
「世界を守るのは俺なんだ」と心に決めて胸に手を当てた。
そして恭平は現世へと歩み出した。
そのころ現世では、植物状態の恭平が眠っていた。
その周りには春蘭と楓が泣きながら座っていた。
恭平をキルトから守ったのは春蘭と楓であった。
最後の攻撃を受けていれば恭平は命を失っていただろう。
彼女たちは光の勇者の為に作られた幻想物なのだ。
「恭平っ!死ぬナ!」
「恭平くん!」
二人が呼びかけ続けても恭平には意識は戻らなかった。
ついには春蘭までもが疲れ果て倒れ込んだ。
「春蘭?!」
「ちょっト…疲れタ」
「大丈夫?」
「ウン…」
恭平はウンともスンとも返事をしない。
楓が
「もうダメね…」と言った瞬間恭平はパチリと目を覚ました。
「ぬぉぉ?!ここは現実か?!」
「き…恭平くん?!」
楓が口に手を当て目を見開いて恭平を見つめた。
そんな反応に一番若い恭平は驚きを隠せなかった。
よく…生きて…
楓は声を震わせて恭平を強く抱きしめた。
恭平は
「はい…」と優しく楓の胸に抱かれていた。
楓は泣いていたようだ。
恭平がそれに気がついたのは楓の肩が震えていたからだ。
恭平は楓の肩をポンポンと叩いて話し出した。
「ちょっと痛いんですけど…」
「あ…。ごめんなさい」
「楓さんが助けてくれたんですか?」
「私じゃないですよ。春蘭が見つけたのです」
「そうですか」
恭平は毛布で繰るんで寝ている春蘭の顔を優しく見つめた。
俺…コイツのお陰で助かったんだな。
感謝しなくちゃな。
そんな時眠っていた春蘭がゆっくりと目を覚ました。
起きたばかりでまだ目が慣れていないのか目の前に笑っている恭平がいる事にすぐ気が付かなかった。
目を擦った春蘭は恭平の顔を見つめた。
そして抱きついた。
泣きながら恭平の胸に。
「恭平!」
「痛いって…春蘭」
「悪イ…」
「春蘭が助けてくれたんだな」
「生きてて…良かっタ」
恭平は春蘭の涙を自分の指で拭いてあげた。
春蘭は顔を赤くして恭平の頭を撫でた。
「ゥん…!」
「ユーリちゃん…何故あなたを刺していたの?」
楓の質問に恭平の顔は曇りだした。
楓も自分の言った言葉に少し反省した顔を見せ、視線を膝に移した。
春蘭は
「あれハ…ユーリじゃナカッタ」と頷いた。
恭平は小さな声で話し出した。
「ユーリはキルトに操られているてか入られてるというか…」
「あの倒れてた日?」
「多分…そうですね。」
「今…ユーリハ?」
「キルトの意思通りに体を動かしている状態で、意識はないんだ」
「意識ガ…無い?」
恭平は目を閉じた。
あの時の事をゆっくりと思い出しているのだ。
刺される時の悲しみも。
冷たいユーリの深紅の瞳。
そのままの声が耳に入る。
死ぬと思った。
現実的には死んでたけど。
痛いなんて思わなかった。
どっちかって言うと、泣きたかった気がする。
「助けたなきゃ…いけないんだよ…な」
「ユーリを助けヨウ」
「私たちがあなたを命を懸けて守ります」
「出来れば死なないで」
恭平は苦笑いをした。
これから起こる最悪な事件を予想していたかのように。
春蘭も楓も恭平の思いを胸に託して。
恭平の瞳は遥か遠くにいるユーリを見つめ続けていた。
「痛っ?!」
「まだ無理はダメよ恭平くん」
「でもあと一匹なんだ…。あと少しでユーリに近づけるんだ」
「今は自分の体を」
「は…い」
恭平は自分の膝の上に置いてある両手に力を込めて震わせていた。
悔しい…。
直ぐにでも…助けに行きたいのに!!
俺の気持ちを伝えたい。
ユーリ…っ!
待っててくれよ…。
俺が本当の君を見つけだすまで
必ず…。
「恭平」
「春蘭…何?」
「これ飲メ」
「何だよこれ」
「薬」
「直ぐ治るわけじゃないし…」
「治るんダナ。これガ」
「まじ?!」
恭平は春蘭が持っていた薬を奪い取るように飲み込んだ。
しかしそれは薬だ。
恭平は顔を真っ青にして涙を流していた。
春蘭は爆笑していた。
「にっが?!」
「薬だゾ…恭平」
「でも…痛みは消えた」
「ダロ?」
「よしっ!これで行け…」
「ダメですよ」
楓が恭平を座らせた。
恭平は
「楓さん?」と不思議そうに楓を見つめていた。
楓は残念そうな顔をして恭平に話しかけた。
「ど…どうしてですか」
「食事をしなきゃ」
恭平はひっくり返った。
春蘭は口を開けて大笑いしていた。
楓は真面目な顔をして
「可笑しいですか?」と言っていた。
「はいはい。作りますよ」
「お願いします」
恭平はまだ完全には治ってはいない体を春蘭に支えてもらい台所に向かった。
何作ろうかな…。
卵あるからオムレツでいっか。
塩あるし胡椒もあるし…。
よし!作るか!
恭平は袖を捲ってエプロンを着始めた。
「春蘭」
「何ダ?」
「お前俺の事好きだろ」
「ナっ…?!」
春蘭は顔を真っ赤にして挙動不審の人のように瞳をあっちらこっちらに動かしている。
最終的には恭平の傷の所を思いっきり叩いた。
「っ?!叩くんじゃねえよ!あぁ痛かった」
「ば…バカある!」
「は?聞いただけじゃん!」
「我は…恋ヲしてはならないノダ…恭平」
「恋をしちゃいけない?何故?」
「光の勇者を守ル為に生まれてきたヨウな…存在ナンダ…」
「ふぅん…」
「驚かないノカ?!」
春蘭は恭平の反応に少し驚いたように恭平の顔を見つめた。
恭平は少し強めに春蘭のおでこを指で叩いた。
春蘭は
「痛いアル!!」と恭平の髪の毛を引っ張った。
「痛てえって!だから!それでも春蘭は今生きてるじゃないか」
「?!」
「人を好きになるのに理由とか無いんじゃないの?」
春蘭は恭平の言葉に優しく頷いた。
恭平は春蘭の頭をポンポンと撫でてあげていた。
すると
「で、俺の事好き?」
「この…自惚れガ!!!」
パシンッ
春蘭の平手打ちが思いっきり顔に来た恭平は持ち前の反射神経で交わし、春蘭の手を掴んだ。
恭平は男だ。
普通の女子とは違い力は強い。
「離せ!」
「素直になりなよ春蘭」
「っ…………」
「でも悪いな春蘭。俺はユーリが好きだ」
「知ってる」
「お前は友達として好きだからな」
「私もダ」
春蘭は涙目だ。
恭平はびっくりして
「泣くな」と肩を抱きしめた。
ああ…俺最近おかしい…。
女嫌いが女に囲まれて…苦痛な筈なのに平気だ…。
あぁ…!
辛いね〜俺。
「さ、出来た」
「早いナ」
「持ってくぞー」
恭平は頭を掻きながら春蘭にお盆を持たせた。
春蘭は
「何するある?」と困り顔で恭平を見つめた。
すると恭平はニヤリと笑い春蘭のお盆にオムレツが乗っている皿を乗っけ始めた。
「自分で持ってケ!!」
「めんどい」
「しょうがないナ!」
春蘭はプゥッと頬を膨らませて恭平の足を踏みつけた。
恭平は
「キレんなよ」と踏まれた足を揉んでいた。
春蘭と恭平はそのまま楓のいる部屋へとオムレツを運んでいった。
楓がテーブルを綺麗にしておいてくれたのか、春蘭はすぐにお盆を置いた。
少しキレ気味の春蘭はお盆をドスンと置いた。
その行動に楓は驚きを隠せなかった。
てなわけで、恭平たちは少し遅めの夕飯へとたどり着いた。
相変わらず料理が上手な恭平のオムレツは最高だ。
どっかの安い店のより遥かに美味しかった。
キレ気味だった春蘭も無言で食べていた。
突然楓が
「そういえば」と話し出した。
「確か魔法書によれば、妖怪を全て集めると【闇への扉】が開くって聞いたことがあるわ」
「闇への扉?」
「そう。恭平くんが捜し求めているユーリちゃんと闇の化身キルトもいるはずよ」
「ユーリもいるのか?!」
「キルトがいるところにいるに決まってるわ」
「そうですね…」
「ご馳走サマでした」
春蘭はスッと立ち上がり皿を片付け始めた。
その顔は無表情だった。
でも恭平に
「早く恭平モ準備シロヨ」と笑いかけた。
その微妙な笑顔に楓は不思議に思い恭平に聞いた。
「春蘭…あなたに言ったわね」
「何をですか」
「恭平くんへの思い」
恭平の顔はまた曇り始めてしまった。
でもすぐに顔を上げて楓を見つめた。
そして固かった口を開いた。
「俺はユーリが好きなんです」
「知ってるわ」
「だから…友達として…仲良くしようって」
「そうね」
「何か傷つけたかな…俺」
「さあね」
「さあねって…楓さん!!」
「さ、片付けましょ」
「………はい」
恭平はちらちらと楓の顔を見ていた。
なんだかんだ言って…一番良く分からない人って楓さんじゃねえ?
影で何かやってソ〜。
いや…やってる。
「ほらほら」
「分かりましたよ!」
恭平は苦笑いをした。
楓さんに限ってそういう事は無い…よね。
そういや…春蘭は俺の為に作られた存在だって言ってたけど…楓さんはどうなんだろう…。
「私??私は本当の人間よ」
「心が読めるんですか?!」
「勘よ勘」
「…怖っ…」
恭平は自分の体をギュッと抱きしめた。
顔は真っ青である。
「え?作られた人間じゃないのですか?」
「そうよ」
「じゃあ春蘭だけ?」
「春蘭も人間よ」
「何でじゃあアイツ自分の事そう言ってるの?」
「記憶が無いのよ」
「記憶が…無い?」
楓は遠くを見つめるように細い目をしていた。
恭平は
「え?」とか
「へ?」とか混乱していた。
記憶が無いって…どういう事なんだよ…。
アイツ…一体…。
アイツは…普通に生きてる人間なんだよな?
人間なんだよな?
もう…俺…。
「詳しく知りたいカ?」
「春蘭…」
「何故嘘を付いてタカ…知りたいカ、恭平」
そこに春蘭が現れた。
ずっと…聞いてたんだ。
春蘭…。
春蘭は恭平の隣にゆっくりと座った。
その顔は真面目だった。
いや…真剣だった。
春蘭の気持ちをこんなに聞いたのはきっと…。
初めてだったと思う。
第九章 さよならの花束
「と…言う訳ダ」
「…言ってないから!!」
「冗談ダ」
「早く話せこのやろう」
「ハイハイ」
最初の部分は気にせずに春蘭は真面目に話し出した。
今度は本当に。
「ワタシね両親が殺されたらしいノ」
「え?」
「その時のショックで記憶を失ったの」
「てか…普通にしゃべってないかお前」
「だって私日本人だし」
「え−(ブーイング)」
「騙してて悪かったな!!だってさ…こっちの方がカワイイじゃない」
「え−(ブーイング)」
恭平はブーイングし続けた。
カワイイと思ったけどさ……。
流石に…純日本人だとは誰も思わんだろう。
え−……………………。
読者の皆さん。
すいません!!!!!!!!!
ウチの春蘭が嘘付いて。
でも暖かく見守ってあげて下さい。
本当にすいません。
俺からも謝ります!!!
確認の為もう一度。
「私は日本人です」
ほら来たー。
日本人です…はいそうです。
別に君ら騙していたわけじゃあ無いからね。
だって私何人とか言ってないから。
あはは〜。
「で?」
「で?ってそれだけだよ」
「それ以外は?!」
「全く分からないのよ」
「楓さんは…」
「私の父は警察官なの。春蘭の家の事件を調べていたの。その時に父から春蘭を任されたんだけど…」
「け…警察官?!」
「そうよ、まあ今は話を進めるわね。それから仲良くなって、確か弟もいた気がするわ」
「弟ねぇ…」
恭平は今の春蘭の顔からみてどんな弟か考えていた。
ふと頭に浮かんだのが何故かキルトであった。
は?!何でアイツが出てくるんだよ!
春蘭には顔は………。
いや性格は………。
ヤバいぞ?!
よく分からないぞ?!
「恭平くん?」
「え?!あっはい!」
「大丈夫か?」
「うーん…大丈夫じゃないのかな?」
「と言う訳なのよ」
楓の話を聞いて少しだけ理解した恭平は頷いた。
春蘭は髪の毛を赤いゴムで結び始めた。
オレンジ色の髪の毛は相変わらず綺麗だ。
初めて会う人はきっと見とれているはずだ。
はっ…?!
俺…何を考えている?!
「じゃあ行くわよ」
楓は恭平と春蘭の頭を軽く叩いた。
恭平は
「ムムム」と言っていたが春蘭は
「はーい楓」と笑っていた。
恭平が気になっている事を春蘭に言った。
「春蘭…普通しゃべりにしてくれないか?」
「こうカ?」
「そうそう…ああ久しぶりの春蘭だぁ〜」
恭平は春蘭を抱きしめた。
春蘭は顔を赤くして恭平に平手打ちを繰り出した。
それは恭平にあたり恭平の頬は赤く手の跡がくっきりと残っている。
「痛いじゃんか!」
「抱きしめるからだ!」
「はぁ…」
楓は溜め息を付いた。
もうこの二人…似たもの同士なんだから…。
いつまでたっても変わらない二人は…きっと…。
さよならなんて出来ないと思うわ…。
姉弟みたい…ね。
楓は少し笑った。
でもその笑顔はすぐに消えてしまった。
楓は
「さぁて…一人で行っちゃおうかな〜」と二人に聞こえる声の大きさでしゃべり出した。
すると恭平と春蘭は高速移動をしたように楓の隣にちょこんと並んだ。
「行きましょう楓さん」
「行こウ楓」
「ハイハイ…」
そして三人は最後の妖怪を倒すために旅に出た。
それぞれが違う思いを持っているが目指す物は一つ、そうだ。キルトである。
恭平はユーリを守る為に命を懸けようと心に決め空を見上げていた。
空一面にきれいな水色が広がっていた。
「所で恭平」
「ん?」
「光の剣光ってる」
「あん?」
恭平が腰に付けている光の剣を見ると春蘭の言うとおりに剣に埋め込まれている五つの宝石が光っていた。
恭平は不思議そうにその宝石に触れようとすると楓が声を掛けた。
「触らない方がいいわ」
「どうしてですか」
「楓?」
「何かが来る…避けて!!」
楓が恭平の方に走り出した。
恭平は
「?!」と驚いていた。
そして楓が恭平を後ろにトンっと押した。
すると恭平は倒れた。
「何するん…」
シュルルルルルル…
「ひっ?!」
恭平の顔が固まった。
恭平が今立っていた所に何かの頭が伸びてきていた。
牙を剥き出して。
もしあのまま恭平が気付かずにいたら即死だ。
「ふぅ…」
「楓さぁぁぁん!」
「大丈夫?」
「あれハ?!白蛇?!」
「首四つもあるじゃん!!怖いよー(泣)」
恭平は腰が抜けたようだ。
そんな恭平を優しく立たせようとしている楓に白蛇は何かを吹き付けた。
スモッグだ。
楓はゴホゴホと噎せ始めた。
すごく苦しそうだ。
すると頭の中に白蛇の気味の悪い声が響いた。
まさか…。
「テレパシー?!」
【我の名は蛸珀。遥か昔死人となりた】
「蛸珀さん?」
【そなたは光の勇者か…おもしろいのぉ】
「な…何がだよ!!」
【我はキルトの聖なる下部。光の勇者、そなたの命我が頂く】
「蛇に殺されてたまるか!」
恭平がそう叫ぶと白蛇、もとい蛸珀の笑い声が響き渡った。
春蘭は倒れている楓を介抱していた。
楓は
「大丈夫…大丈夫よ」と言って春蘭の肩に体を任せた。
しかしその強い瞳は変わらず恭平を見つめた。
緑色の瞳だ。
(人によって瞳の色が違いますが、それは力があるためなので恭平は封印を解くと瞳の色が水色に変わるのです。)
【まだ気づかんか】
「楓さんに何をした!」
【ほほほ…】
恭平は何かに気が付いた。あれは…操りの煙…。
蛸珀の思い通りになられては困る!!!!!!
「春蘭!楓さんから離れろ!」
「え?!」
「早くっ!!!」
「わ…分かった」
春蘭は楓から離れて恭平の横に立った。
恭平は
「解」と言って自分の封印を解いた。
金色の髪、水色の瞳に一瞬で変わっていった。
手には光の剣を持って蛸珀に向けた。
【封印を解いても無駄じゃ。我には効かん】
「春蘭…」
「楓…!!!!!!!!!」
「行くな春蘭。直に楓さんは蛸珀の思いのままさ…俺を殺しにくる」
「まさか!」
恭平の顔はまず真剣であった。
頬に汗が流れている。
きっと焦っているのだ。
何が?って?
だから動物&爬虫類系は苦手だからね…。
「ひぃ!?」
「恭平頑張れよ!」
【可笑しい少年よのう…さあ行くが良い…我が下部!】
ムクッとゆっくり楓が起き上がった。
楓は…操られている…、そう恭平は確認し…た?
楓は笑っていた。
【どうした下部…早うかかれ】
蛸珀は楓を見た。
楓は蛸珀を見た。
そして両手を蛸珀へ向け
「…wind」と呟いた。
恭平は口をパカンと開けていたが、春蘭は
「あー解けちゃった」と溜め息を付いていた。
「何が解けたの?」
「楓の封印」
「え?!」
「楓は…風を使う人」
「風?!」
恭平が楓を見てみると楓の茶色い髪が水色になっていることに気が付いた。
春蘭は
「蛸珀さんがキレさしちゃったよ…」と溜め息を付いていた。
「あー!!蛇の癖に生意気なんだよ!!」
【我の操煙が効かんのか?!】
「は?何で私があんたに操られなきゃいけないんだっつ−の!!」
く…口悪っ?!
あれいつもの楓さんじゃ無いよね…無いよね…。
え−………っと。
一体どうしたんだぁい!
「恭平くん!!早くコイツ斬って頂戴」
「あ、はい!」
恭平は楓の言うとおりに光の剣を向けた。
そして飛び上がった。
楓も風を使い恭平に力を貸していた。
春蘭は
「私は!!」と言いかけて口を閉じた。
春蘭は普通の人間なので何も出来ない。
「とおりゃあ!」
【甘い】
「へ?」
【ほほ…】
蛸珀は四つの首を恭平に向けて何かを吐き出した。
恭平は空を飛んでるので避けられない。
ベシャッと恭平の顔に何かが張り付いた。
「ん−!!んん!」
言葉が上手に話せてはいない。
だんだんと息が苦しい。
恭平の顔には蛸珀の唾液がくっついて取れないのだ。
恭平は一生懸命もがいているけども取れない。
すると…蛸珀の体が動き恭平を締め付け始めた。
恭平は
「んぐっ…」と小さな声を出した。
「恭平!」
「恭平くん!」
恭平は息も出来ず体も動かせない。
顔の血色はみるみる変わっていった。
そんな時蛸珀は笑っていた。
【この少年の命頂いてゆくぞ】
「ん−−−−?!」
【まだ意識あったかぃ】
「んんんん!!!」
【よく見ればよい顔じゃ。殺すのは勿体ないのう】
「ん?!」
【さあ…眠るがよい】
「んぅ………」
恭平は限界を通り過ぎて意識を失った。
コテンと首を下に向けて力を抜いていた。
恭平に気づいた楓と春蘭は
「恭平!」
「恭平くん!」と叫んでいた。
「畜生…!春蘭!」
「何?」
「ここで待ってろ」
「うえぇ?!」
春蘭はびっくりして酔っ払いのおっさんみたいな声を出していた。
楓は
「相変わらずバカね」と溜め息を付いていた。
「あなたはここで待っていて頂戴。今から私は恭平くんを助けに行くから」
「わ…分かった!」
「よし!じゃあ行くぞ」
楓は春蘭の頭をポンと叩いた。
そして別れ際に
「さよなら」と言って。
春蘭は
「え…?か…楓?!」と手を伸ばしたが届かなかった。
まさか…。
春蘭は楓が飛び立った後気が付いた。
楓は二度と戻らない気だ。
そう…だった。
楓はいつか言っていた。
「光の勇者を守る為なら命だってかける。世界を守る為にも」と。
「嫌だ…嫌だよ…」
春蘭は首を振っていた。
涙も流していた。
でも…世界を守る為に、恭平を守る為に楓は行ったのだ。
そう春蘭は思い涙を拭いた。
手に力を入れてギュッと握りしめた。
「頑張れ…楓」
春蘭が見つめる先では楓がもう蛸珀の顔の辺りまで飛び上がっていた。
「蛸珀!恭平くんを離せ!」
【汝…風の使い手か】
「返せって言ってんだろ!」
楓は腰から短剣を取り出して蛸珀に向けた。
蛸珀は【小賢しい…】と楓をバカにしていた。
その言葉を聞いた楓は笑い言った。
「この短剣ただの短剣じゃないんだな〜これが」
【ま…まさか】
「気付くの遅えんだよバーカ」
楓は短剣に力を込めた。
すると短剣に埋め込まれている緑色の宝石が光り出した。
その光に恭平が目を覚ました。
かなり弱っている恭平は目の前の状況が見えそうで見えない。
でも、楓がその短剣で恭平を掴んでいる蛸珀の体の一部を切り落とした。
【うぎゃあ!!!】
蛸珀は苦しみもがいている。その隙に恭平を取り返した。
【自爆するつもりかえ?!】
「だから気付くの遅いんだよ」
「かえ…で…さ…」
「あら気づいた?大丈夫?」
「おれ…は…へいき…」
やっと気が付いた恭平を片手で持ち上げていた。
軽々と。
恭平は
「すい…ま…せん」と小さな声で楓に伝えた。
楓は
「安心して…あなたは殺させない」と頭を撫でた。
【我が身の命を賭けてまで守りたい物はそれかい】
「そうよ」
【ほほほ…】
「何がおかしい」
楓は蛸珀を睨みつけた。
恭平は呼吸を整えながら楓を見つめた。
「かえ…で…さん」
「ん−?」
「なに…を…するつ…もりで…すか」
「あなたは気にしないの!!あなたを守るためなんだから」
楓は恭平を地上に下ろした。
地上についた恭平は力がまだ入らないのか楓の肩に寄り添っていた。
楓は
「春蘭よろしくね」と春蘭に恭平を渡した。
春蘭は楓に何も言わなかった。
それだけで分かるから。
「さよなら二人とも」
楓はふぃっと顔を伏せた。
そして飛び上がった。
楓は後ろを振り返らなかった。
「うおぉぉう!!」と叫びながら飛んでいた。
蛸珀の所まで行くと楓は短剣を握りしめた。
そして…爆発した…。
「チェックメイト…よ」
ドカンッ
空中で煙が立ち込めた。
何かの呻き声が聞こえた。
蛸珀だ。
【おのれ…おのれ…】と苦しみ砂と変わった。
上から何かが落ちてきた。楓だった。
春蘭が上から降ってきた楓をキャッチした。
「楓…?楓?」
「かえ…で…さん…?」
楓の顔は笑っていた。
小さな涙を流しながら。
でも…息はしていなかった。
爆風から身を守ったが全ての力を出したから…。
楓はそのまま息を引き取った。
春蘭は冷たくなっている楓の体を抱きしめた。
すると…
「楓…楓…誰も死んじゃだめなんだよ…?」
春蘭は問いかけた。
返事をしない楓に…。
「だから…生きて…」
春蘭の頬から涙が流れていた。
その涙が楓の顔にポトリと落ちた。
すると楓の体がフワリと持ち上がった。
その後ろには砂になった筈の蛸珀がいた。
【そなた…】
蛸珀は人の姿に変わり始めた。
髪は長く綺麗な銀髪で、白い服を纏っていた。
そして一歩春蘭のほうへ歩み寄った。
【そなたは…キルトの…】
「キルト?」
【よかろう…我が力この女に渡そう】
「本当に?!」
【力を込めろ…そなたの真心我の力になりて】
「うん!」
春蘭は両手を組んで瞳をそっと閉じた。
恭平が春蘭を見ると春蘭の体は光りだしていた。
「し…しゅん…らん?」とびっくりしていた。
蛸珀が【そなたたち…生きるのだ】と言った。
(楓を助けて…!!!!)
蛸珀はニコッと笑い春蘭に【もう良いぞ】と話しかけた。
春蘭がそっと瞳を開くとそこには楓が立っていた。
春蘭は楓を見ると大粒の涙を流して抱きついた。
「楓ぇ〜!!!!」
「私…何で…生きてんの?」
「蛸…珀…さんが…」
「え?」
楓が後ろを見ると、そこには綺麗な銀髪の女の人が立っていたのが見えた。
楓は
「蛸珀なの?」と聞いていた。
【彼女の願い聞き届けただけじゃよ。我はもう…逝かなくてはならぬ】
「蛸珀さん」
【なんじゃ春蘭】
「名前…言いました?」
【知らないならいいじゃろう】
「…はぁ。あの…ありがとう」
【いいんじゃ。さらば…。皆頑張るんじゃよ】
そう言って蛸珀は消えていったのだ。
春蘭は
「ありがとう」と空に言っていた。
「春蘭…あんた」
「生き返って良かったよぉ!!」
「生き返って…って…私死んだの?!」
「そーだよー!」
楓は口を開けて驚いていた。
あ、そうそう。と言って自分の封印を戻した。
いつもの茶色い髪の毛に戻った楓は二人を見つめた。
「ありがとう」
「楓さん…生きてて…良かっ…たね」
「まだ苦しいですか?」
「ちょっとだけ」
「そうですか…。」
楓は心配そうに恭平の髪をそっと撫でた。
さっきの楓さんとは全く別人みたいだ…。
なんなら言うけど…ホワイト楓さんとブラック楓さんみたいな…?
「私の封印はキレると解けてしまうのです」
「怒らせちゃダメだよ?」
「俺はしないよ」
「知ってます恭平くん。あなたが優しい人だという事だって」
「楓さん…」
「さ、闇の扉が開いたわ。行きましょう」
楓が上を見ると空に大きな黒い扉が浮かんでいた。
恭平は唖然としてしまった。
この扉が現れた途端鳥肌がたちまくっていた。
闇の…キルトの気を感じる…。
そう恭平は感じ取っていた。
「まって…」
「どうしたの恭平くん?」
「体が…足が竦んでる」
「恭平怖いのか?」
「怖いんじゃない…」
恭平は自分の体をギュッと両手で抱きしめた。
その顔は凍りついている。
楓と春蘭は恭平の肩をそっと叩いた。
「恭平、大丈夫だよ」
「そうよ。春蘭の言う通り」
「なに…が」
「ユーリ助けるんでしょ?」
「?!」
その言葉に恭平は驚いた反応を示した。
その反応をした後恭平は俯いてしまった。
でも…恭平は
「……そうだ」と頷いた。
「行こう…ユーリの元へ。」
「ええ」
「そうだね!」
そして三人は宙に浮かぶ【闇の扉】へと消えていった。
一人だけ瞳を閉じていた人がいた。
恭平だ。
恭平は誰一人失わないように心に決めていた。
叶わない夢なのに…。
最終章 さよならとありがとう
恭平を入れた三人はキルトとユーリがいるはずの【闇の宮殿】に向かい続けていた。
【闇の扉】から入って随分歩いている。
長い長い道の端には炎の灯ったランプが何個も並んでいた。
遠くの方が真っ暗で見えないので少し不安だ。
いくつも扉があったのだが全て鍵がしまっている。
恭平が途中一つの扉が開いてる事に気が付いた。
そこだけランプの炎が消えていた。不思議にそこだけはとても空気が澄んでいた。
恭平は引き込まれるようにその部屋へと入っていった。
「恭平?」
「どうしたのかしら」
ギィ………
随分古いのか部屋の中は埃と蜘蛛の巣で覆われていた。
恭平は気にせずにそっと部屋に入っていった。
まず入ってすぐに何かの絵が置いてあった。
それに描かれているのは白い服を着た女の人と妖精であった。
「恭平!」
春蘭が心配して部屋に入ろうと恭平に呼びかけた。
恭平は春蘭を手で招いていた。
招くとすぐに絵のほうに目を戻してしまった。
「この絵見て」
「ん−?」
「君に似てる」
「私?!あれ…これ…確か…」
「どうしたの?」
「ちょっとだけ記憶を思い出したの」
「どんな?」
恭平が春蘭に問いた。
春蘭は
「そうだね」と恭平に話し出した。
「私の家に置いてあった絵にそっくり…ってか…私の母さんが描いた絵なんだ」
「ええ?!」
「だから妖精が弟で少女が私」
「ふうん」
恭平はまじまじと絵を見つめている。
すると、絵の端に人の名前が書いてあった。
【Mrs.アマバネ】という名前であった。
春蘭は…天羽春蘭という名前なのかな。
可愛い名前だな…。
「天羽か?」
「そう!!私天羽春蘭!」
「母さんの名は?」
「分からない…」
「そっか」
恭平は
「じゃあ行くか」と春蘭の頭を叩いた。
春蘭はコクンと小さく頷いた。
でも春蘭はその絵をもっと見ていていたかった。
「お母さん…」
その頃奥の【闇の宮殿】ではユーリの体に乗り移っていたキルトが既に抜け出していた。
ユーリはガラスの中に閉じこめられていた。
まだ意識は戻っていない。
キルトはそんなユーリを見つめていた。
『君はバカだね恭平くん。こんな子の為に命を賭けるなんて』
キルトは鼻で笑った。
キルトは独り言を続けている。
『世界を変えてやる…』
キルトの手には強い力が入っていた。
近くにあった机に手をドンっと当てた。
【あらん…坊や】
『またいた…アンジェリーナ』
【ハンサムボーイたちが来てるわよ】
『まだ生きてたんだ』
キルトは失笑した。
そして縄で縛っているユーリに近づいた。
ユーリは意識を取り戻した。「ここ…は?」
ユーリは周りを見渡した。すると目の前に嫌な笑みを浮かべているキルトが立っていた。
しかしユーリは縄に縛られている
両手両足を動かせない。
「キル…ト」
『おはようユーリちゃん』
「ここ…は…どこ」
『ん〜?闇の宮殿だよ』
「闇…の宮…殿?」
『もうすぐ恭平くんたちが君を助けに来る』
「だ…め」
『あはは!!君の声は彼らには届かないよ!!!!』
キルトは笑っていた。
ユーリはまだ力が入らないのか微妙に
「んう…」と唸っていた
ユーリは願った。
恭ちゃん…負けないで。
私は大丈夫だから…。
だから…頑張って…。
そして恭平たちに戻る
恭平たちはまだ前の見えない暗闇を歩いていた。
未だ届かないユーリへの遠い道だ…。
恭平は心の奥底で考えていた。
ユーリ…君はどこにいる?
俺は君の笑顔がみたい。
見なきゃ俺はおかしくなってしまいそうだよ…。
無事でいてくれ。
俺が行くまで無事で…と。
「恭平?」
「ユーリ…」
「………心配カ?」
「…うん…」
「大丈夫!!きっと無事だよ」
「そう…か」
恭平は春蘭に笑いかけた。
すごく不器用っぽく。
それから歩き出そうとした時恭平が何かの気配を感じた。
恭平が後ろを見ると執事のような人が立っていた。
不気味…。
「誰だ…?」
「わたくしこの闇の宮殿を守る執事アンクルでございます」
「執事なんているの?」
「はい」「で、何の用?」
「早瀬様達をお連れしてほしいと頼まれまして。」
執事のアンクルが指を指した場所は特別室という部屋である。
恭平は
「キルトか」と言って頭を掻いていた。
春蘭と楓は
「私たちも大丈夫よ」と恭平を安心させていた。
「ではこちらへ」
そして恭平達はアンクルに連れて行かれた。
春蘭ははぁ…と溜め息を付いていた。
「さ、入りましょ」
「うん」
扉を楓が開こうとした時後ろから弓が飛んできた。
楓と春蘭は気付いていない。
恭平がすぐに気が付いたので大丈夫だった。
「びびった!」
「恭平くん…ありがとう」
「危なかったな」
恭平は胸を撫で下ろした。
でも誰が…。
楓は不思議に思った。
ああ!キルトだ…!
「恭平くん」
「ん?」
「キルト…いるわよ」
「分かってますよ」
恭平は苦笑いをした。
そして手を握りしめた。
「ここはですね、昔の王が闇の王を封印した場所なんでございます。闇の王は今も尚封印されており、わたくしがお守りするように頼まれた訳です。」
執事のアンクルは部屋の説明をしていた。
今俺ら死にそうだったんですけど!!!!!
「随分…元気ですね」
「さ、どうぞ」
アンクルは片手を扉の中に向けた。
恭平達は
「はい」と頷きながら入っていった。
アンクルは笑った。
とても優しそうなお兄さんだ。
ギィ…
大きな扉が自動に開きだした。
奥を見るとキルトが椅子に座ってこっちを見ていた。
その後ろには両手両足を縄で縛られているユーリがいた。
恭平が大声で呼びかけた。
「ユーリ!!」
「恭ちゃあああん!」
「助けてやるからな!」
「ううううん!」
『恭平くん』
ユーリから目線を変えて声のする方へ向けた。
キルトが足をブラブラさせて笑っている。
恭平は光の剣を取り出した。
光の剣はまだ鞘だけだ。
恭平は封印を解いた。
黒い髪が金色に黒い瞳が水色に変わった。
光の剣が現れた。
恭平はそれをしっかり握りしめた。
「お前だけは許さないからな」
『望むところだよ』
キルトも立ち上がって何やら黒い剣を取り出した。
名前の通り闇の剣。
光の剣と対等な力を持っており邪悪な光を放ち続けている。
『おいでよ!』
「いいぜ!こっちからやってやろうじゃん」
『上等だよ』
「春蘭はユーリを助け出して」
「任せて!」
春蘭は恭平に向けてVサインをした。
すぐに動いてユーリの縄を解いている。
解かれたユーリは恭平に
「大丈夫ー!」と伝えていた。
いや…顔みりゃ分かる。
恭平は笑った。
キルトは何故か笑って恭平の方を見ている。
恭平が
「何がおかしい?」と聞くとキルトはこう答えた。
『世界を変えるのは僕さ』
「はあ?」
『君だって変えたいだろう?』
「んなわけないじゃん」
恭平は否定した。
強く、輝いた瞳で。
『え?』
「俺はねユーリと出会って気付いた。こんなにも世界は広いんだって事」
『そんな事』
「そう思うだろ?でも本当なんだよ」
恭平はキルトを見た。
そして次にユーリたちを見つめていた。
ユーリはニコッと笑って立ち上がった。
恭平の隣に走ってやってきた。
「久しぶり〜」
「俺にとってはずっといたぜ」
「え?」
「お前キルトに操られて俺の事刺したんだぜ」
「ええ?!」
恭平は久しぶりのユーリの顔を見れたのかとても嬉しそうだ。
春蘭は
「あれ…」と呟いていたのだが。
するて突然キルトが走り出し恭平に闇の剣を向けた。
その攻撃を見た春蘭が叫びだした。
「いやあああああ!」
「おっと」
『なんだ…?』
春蘭は頭を抑えている。
目を閉じ体を震わせながらしゃがみこんだ。
恭平が
「ちょっとタンマ」とキルトに言った。
「春蘭、どうした」
春蘭は恭平に抱きついた。
恭平は
「どうしたんだよ」と冷静に話し掛けた。
春蘭は涙を流している。
「ゆっくり話せるか?」
「…………んっ」
「よし」
「記憶…全部…思い出してしまいました…」
「まじ?」
春蘭がコクコクと頷いた。
全て思い出したか。
良い事じゃないか。
恭平は
「話してみろ」と春蘭に問いた。
すると春蘭は
「ぅん」と頷いていた。
『バカらしい』
「何…」
「キルト…いいえ伐斗。あなたは私の弟」
「え?!」
『今頃気付いたの?姉さん』
「え?!」
恭平は驚いている。
口をパカンと開けながら。
ユーリは
「そうかあ」と納得しているようだったがおかしい。
春蘭はキルト…もとい伐斗に話し掛け続けている。
「何故こんな事を?」
『姉さんだって…父さんや母さんを殺した奴許せないだろ?』
「許せないよ…でも」
『でもって何?!あの日は姉さんの誕生日だったじゃないか!』
「そうだよ…」
『僕は殺害がない僕の言う通りの世界にするんだよ!!だから世界を僕が作って…』
「バカなのは伐斗よ」
春蘭は伐斗を睨みつけた。
こう見るとそっくりだなぁ。
うん似てる。
そして叫んだ。
声を張り上げて伐斗に。
「世界を作るとか思い通りにするとか…それはあんただけの希望でしょ!!私たち以外にだって…両親を失った人だっている」
『知ってるよ!』
「事件を私が止めることは無理なのよ!!」
『出来るさ!』
「世界を変えるとか…世界を作るとか…伐斗が考えてるより大変な事なんだよ!!」
春蘭は涙を流していた。
伐斗は『分からないよ…』と言っていた。
恭平は春蘭を抱き寄せて背中を叩いてあげた。
すると春蘭は恭平に抱き付いて大声で泣いていた。
「ここで泣くなよ…」
「いいじゃん」
「おい!伐斗!」
『何…?』
「お前が世界を変えたいの分かるよ。でもな、それは凄く大変な事だ」
『…』
「世界だって生きてるんだ」
『生きている…だって?』
恭平は頷いた。
「だから世界を変えるんじゃなくて、世界を【始める】んだ」
『始める…?』
「俺らが世界を始めようよ」
『…』
伐斗は悩んでいた。
世界を始める。
僕らが世界を始めれば、どんな事だって。
伐斗は決心がついたように恭平の顔を見つめた。
そして
『分かった』
「よし。それならそうと…」
恭平が言いかけた時、後ろから誰かの声が聞こえた。
後ろを振り返るとそこにはアンクルが立っていた。
「キルト様」
『アンクルどうしたの?』
「だめですよ」
『え?』
「世界を作らなきゃいけませんよ」
『アンクル…もう僕が決めたことだよ』
「あなたがやらないのなら…わたくしがやります」
カチャッ
アンクルは胸ポケットから銃を取り出した。
それを恭平に向けた。
さっきの顔とは違い何かに取り付かれたような顔で恭平を見つめた。
恭平は後ずさりした。
「何…やってんすか…」
『アンクル?!』
アンクルはキルトの声も聞こえていない。
銃を恭平に向けて舌なめずりをしている。
片方の手で眼鏡を外して投げ捨てた。
「アンクルさん!」
「ガキにはやっぱり無理だったか…」
「ガキってまさか…!」
「ふははは!!!!」
『僕を利用したのか貴様は』
「そうさ!!こうなるとは考えていなかったがな」
キルトは恭平の隣に立ち恭平に話し掛けた。
『ごめんね…巻き込んで』
「いや…平気」
『後もう一つ…僕は彼女のお姉さんを殺してはいないよ』
「え?!」
『アンクルだ』
「あいつめ…!!」
『恭平』
「なんだ伐斗」
『死なないでよね』
キルトは笑った。
恭平は
「勝手に殺すな」と言ってキルトに笑いかけた。
アンクルはまだ撃とうとはしないようだ。
恭平は焦らないように深呼吸をしてアンクルに問いただした。
「アンクルさん」
「なんだい」
「何の為に俺を狙う」
「簡単な事さ」
アンクルは笑った。
「君の力を貰う為だよ」
「俺の…力…?」
「あはは!!彼女の力だけじゃ世界を闇に包めないからね」
「俺は渡さねー!」
恭平は叫んだ。
春蘭とユーリは動く事ができなかった。
少しでも動けば恭平が撃たれてしまう筈だ…と。
ただ神に祈るだけ。
その様子をみたアンクルは
「彼女たちも儚いね」と嘲笑った。
恭平は
「笑うなよな」とキレていた。
「動くなよ…動けば君の脳天ぶち抜くよ?」
「やれば?」
「じゃあまず出始めに彼女たちから殺ろうかな」
「ユーリは関係ないだろ!」
『姉さんも関係ない!』
楓がぼそりと
「私の心配はしないのね…」と悲しげな顔をしていた。
アンクルは恭平に向けていた銃をユーリに向けた。
恭平が
「止めろ!」と叫ぶとアンクルは笑った。
「good night!」
恭平は走り出した。
でも届かない。
銃声が鳴り響いた。
恭平は目の前が真っ白になってしまった。
でも次の瞬間驚くべき事が起きていた。
【おじょう際が悪いわよ】
アンジェリーナだった。
アンジェリーナはアンクルが撃った銃の弾を素手で掴んでいるのだ。
カランと下に落ちた。
「アンジェリーナ!」
『アンジェリーナ!』
【はあい。契約した人の仲間は助けなきゃね】
「ありがとう!」
恭平はアンジェリーナに近付こうとしたとき再び銃声が響いたのだ。
今度は真っ正面から。
アンジェリーナはゆっくりと倒れていった。
「アンジェリーナ?」
「あはは!邪魔者は消していかなきゃね」
「アンジェリーナ!」
【ハンサム…ボーイ…。頑…張るのよ…】
その言葉を言ってアンジェリーナは消えていった。
アンジェリーナの頬に涙が流れた。
恭平の涙が落ちたのだ。
どうして…どうして関係ない人まで殺すんだ!
恭平の瞳から零れ落ちる涙は悲しみを感じさせていた。
キルトも『蓄積…』と言っていた。
恭平はアンクルに言った。
声を震わせながら。
「俺を殺せよ!!!!!」
「その通りにしてあげるよ」
「………蓄積…」
『恭平!止めるんだよ!』
「キルト…」
キルトが恭平の腕を引っ張り止めた。
恭平は
「ごめんな」と言ってその手を離した。
恭平はアンクルに近付きみんなの声を聞かないようにした。
聞いたら戻りたくなってしまいそうだから。
俺がやらなきゃ…だめなんだ。
みんなを守るために。
世界を守るために。
カチャッ
恭平にアンクルは銃を向けた。
恭平は立ち止まった。
「撃てよ」
「さようなら恭平君」
『恭平!』
「恭ちゃん!」
「恭平!」
「恭平くん!」
恭平は瞳を閉じた。
お前らと出会えて幸せだった。
笑い合えたり喧嘩したり泣いたりして。
家族が出来たようだった。
一人じゃない、そんな事言われたの初めてだった。
嬉しかった。
世界を守ってな。
「さよう…なら」
ズキュン!!
耳元に銃声が響いた。
恭平は笑っていた。
アンクルは大きな声で笑い笑みを浮かべていた。
でも…恭平は生きていた。
心臓が動いている。
閉じていた瞳をゆっくり開くと目の前の状況がよく分からなかった。
でも、春蘭の叫び声で理解してしまった。
「伐斗ぉぉぉ!!いやああ!!」
「伐…斗?」
目の前には伐斗がいた。
伐斗は真っ逆様に倒れ落ちた。
恭平は倒れ落ちた伐斗の頭を自分の膝に乗っけた。
伐斗に恭平が話し掛けた。
でも反応がない。
恭平が腹の辺りを揺すると何かがベッタリと恭平の手に付いた。
「血………?」
伐斗の腹からはダクダクと真っ赤な血が流れ出ていた。
恭平はその時全てを理解した。
身代わりになったのか?
「伐斗!伐斗!目を覚ませ!」
「伐斗!!!!」
春蘭が駆け寄った。
春蘭は伐斗を抱きしめた。
本当の姉弟を証明するかのように優しく。
涙が溢れでてくる。
恭平は
「どうして仲間が撃たれなきゃいけないんだ!」
と叫んでいた。
その声に伐斗はピクンと反応した。
恭平が一生懸命に話し掛けた。
「キルト!!死なないでくれ!」
『恭…平…』
「何でお前が…!」
『君を…守り…たかっ…』
「分かったから…喋るなよ…」
『これ…で良いん…だ』
キルトは恭平に笑った。
最期の笑顔を。
『ありが…とう』
その言葉を言った後そのままキルトは深く瞳を閉じていった。
恭平は
「キルト!!!!!」
と言ってキルトの血だらけの体を優しく抱きしめた。
春蘭はフラッと立ち上がりアンクルを睨みつけた。
「春蘭!止めろ!お前まで殺されたくない!」
「ごめん…恭平。これだけは許せない…」
「春蘭!」
「春蘭…だめよ」
ドスッ
楓の手が春蘭の鳩尾に入った。
春蘭は気を失った。
楓が恭平に
「あなたが終わりにして頂戴」
と言いかけた。
恭平は
「分かってます」と楓に言った。
恭平は光の剣を出し、キルトを座らせた。
恭平は力を光の剣に込め瞳を閉じた。
すると恭平の体が黄金の糸に包まれた。
「世界を始めるんだ」
「何を言っている」
「お前を消す」
「?!」
黄金の糸がアンクルの方へ伸びていった。
アンクルは銃で振り払おうとしたが無駄な抵抗であった。
完全にアンクルは糸に捕まっていた。
身動きが取れないようだ。
「離せ!!」
「離すものか愚か者め。人の命を簡単な物の様に汚すな!!」
「は!ばかじゃねえの」
「地獄に送る」
「まさか!?」
「二度と地上に戻るな」
恭平は光の聖霊を呼び出した。
光の聖霊は全てを理解し頷いてくれた。
恭平が世界を守るためにこの一言に込めた。
「世界を始めるんだ!!!!」
「うわあああ!」
アンクルは光の聖霊に連れられて地へ消えていった。
恭平はストンと座り込んでしまった。
でもすぐにキルトを見つめた。
「キルト…」
恭平が両手を震わせてキルトの体をもう一度抱きしめた。
後ろにいたユーリも涙を流していた。
『恭平さん』
「百合さん…」
『私はあなたがたと出会えて全てを知ることができました』
「?」
『彼を助けます』
「どうやって?!」
『私の全ての力を彼に授けますから…』
百合は笑いかけた。
恭平は
「それはダメ!!」と叫んだ。
でも百合は恭平の言葉を聞かずキルトの体に手を翳した。
すると百合の体が光出しキルトの体も光出し始めていた。
『幸せにしてあげて』
「百合さん!」
『ユーリを…頼み…ました…』
「百合さん!」
百合の体はスウッと消えていった。
その代わりキルトの瞳がゆっくりと開かれた。
それに一番驚いていたのは恭平だった。
「キルト!」
『…恭平?』
「お前…助かったんだ」
『何だか…暖かい…』
「百合さんが命をくれたんだ」
『そっか…』
キルトは微笑んだ。
恭平はみんなに言った。
「戻ろう…俺らの街へ」
と。
みんなは頷いた。
キルトが『これ使って』と渡した物は闇の宮殿から出るための鍵であった。
恭平はそれを受け取りギュッと握った。
「行くぞ!」
その瞬間、キルトを含む全員が光に包まれた。
目を覚ますと、そこはユーリが住んでいた森であった。
恭平が
「戻った?」と呟くとみんなの瞳が輝いた。
「戻ったよぉ!」
「ええ」
「ここ…良いところだね」
『そうだね』
恭平は喜んだ。
そして5人の前に1人の少女が現れた。
リリーフだ。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「皆さんが世界を守ってくれたのですね」
「ああ」
「では…元の世界に送ります」
「みんなもだよな」
恭平が聞くとユーリがまず最初に答えた。
「もち!」
「私も帰りますか」
「春蘭もです」
『僕も…いいのかな』
みんな一緒だ。
ずっとずっと一緒だ。
どんな事があっても。
「では…さらばじゃ」
リリーフが両手を恭平らに向けると、全員の周りに光が輝きだした。
俺は世界を作るんじゃない。
世界を始めるんだ。
分かってる。
それがどういう事だという事。
大丈夫だから。
みんながいるなら。
俺は一人じゃないっ!
みんな【仲間】だ。
恭平は光の剣を翳した。
数ヶ月後
「ユーリ!」
「恭ちゃん遅い!」
「ごめん!」
「いいけど…待ち合わせ時間過ぎちゃうよ?」
「げ?!もうみんな待ってるかなあ?」
「走ろっか!!」
「ちょ…」
俺らは普通の生活に戻った。
ユーリも春蘭も楓さんもそしてキルトも。
今…ちゃんと生きている。
「あ、そうそう」
「恭ちゃん?」
「俺ユーリの事好きだから」
「っっっ?!」
ズデンとユーリが転んだ。
恭平は小さく笑った。
ユーリは
「もう!」と言って恭平の服を引っ張った。
二人は笑っていた。
みんなが待ってるあの場所に向かって走り出した。
俺らは生きているんだ。
おわり




