U.T.W.と倒産直前な映画館
「到着したぜぇぇええ!」
とりあえず落ち着け。血圧上がるぞ。
「ていうかここ・・・静かだな」
シャッターの閉まった店の並ぶ住宅街の奥に、小さな壊れかけの映画館。
「客居んのか。てか開いてんのか」
「商業区の北側のあたりにでっかい映画館が新設されたみたいで。ここはほぼ人が来ない。だからもうすぐ閉店だって」
無駄な知識をありがとう優。しかし何故こんなとこに来たのだろうか。
「まあ入れよ」
「店主みたいな口ぶりで言うな!ここはお前の店じゃねぇよ!」
中に入ると、電気は点いているが誰もいない。カウンターとその奥に手洗いと一つ劇場があるだけの質素な造り。
「誰もいないな。店員も」
「サラッといったけど結構重大じゃん!駄目だろ、店員いないって!」
カウンターらしき場所に人の手のようなものが見えたので、覗いてみる。
「お、誰かいるじゃん、すいません・・・」
返事が無い。
「へんじがない ただのしかばねのようだ。」
「なんだ、死体か・・・。っておい待て鷹穂不吉な事言うなぁああ!!」
しかし死体はピクリとも動かない。
「つまり変死事件を見に来たのね鷹穂は」
「鵲先輩冷静に分析しないで、まさかつまりお前が殺ったのか鷹穂!」
「いや、別に知ってたわけじゃないけど。」
すると死者がしゃべりだした。「死者って呼ぶな雨宮ぁ!」
「こんな所に客が来るとは。もしかして迎えか、俺ももう死に時かなぁ」
「開口一番死に時かよ!!!」
場内に入って、ポップコーンを口にほうりながら鷹穂が言った。
「ここの名物、激辛ポップコーンを食べるためここに来たのさ。」
既に場内は貸し切り状態だ。客はほかにいないし、好きなの見せてやる、金は要らんと店員に言われたぐらいだ。
我らが明ヶ原学園は縦割り式な事が多い。例えば部活。小学部から大学部まで統一された部活。どの部のどの学年でも入部できるのだ。また、生徒会は全体共通。
部活は自由度が高い。入退部に制限なしで、顧問を適当に頼み、活動場所と一人以上の部員がいれば創立可能。U.T.W.の顧問は一応いるが完全に幽霊化してしまっている。
三十分後。
「飽きた。」
「お前が誘ったんだろうがぁああ!!!」
という訳で途中退場した俺達。
鵲先輩は上映中まで本を読んでいたので見ていなかっただろう。姫野は絵を描いていた。優はポップコーンを食べながら辛いと言って涙をこぼしていたし、俺は寝ていた。
「俺しか見てなかったな」
今さら言わなくてもいいぞ圭介。
「誰に誘われてきたと思ってるんだよ!」
そして早々に帰宅。大量の激辛ポップコーンを担いで帰って来たのは何故だか知らない。成り行きだ。
「大量に貰ったな。しかも無料で」
「これ貰いに行っただけだな結局。当面のおかずはこれになりそうだ」
「これで飯食うの!?お前ら正常か!?」
土曜の午前はこれでつぶれた。まあこんなものだ、日之出荘とは。