U.T.W.の蛙鳴蝉噪な日之出荘
ここ、2017年に建設された人工島「明星島」、通称「明ヶ原」。
何を目的に建てられたのかはよく分からないが、とりあえず俺達はこの島の中央部にある明ヶ原学園に通っている。学校を建てるために作ったとは思えないのだがな・・・
東には商業区。北の方は管理系施設らしい。立ち入り禁止だからよく知らない。西は俺達の住むような住宅区があり・・・
「ただいま」
「いっつもどーり冷めた感じねー」
そう、ここは「日之出荘」。この島には寮の他に、こんな感じのシェアハウスが色々ある。
因みにU.T.W.部員は全員ここの住人である。
「姫野、冷めてるんじゃなくて、最初から冷たいんだよ俺は」
「そういう意味じゃないっての。」
荷物を持って部屋に上がる。俺の部屋は202号室だ。
荷物を置いてとりあえずリビングへ。
「おー、帰って来たか雨宮ー」
「鷹穂に圭介、何か用か」
「さあ?鷹穂が何か用って」
鷹穂がごそごそとクリアファイルから一枚の紙を取り出した。
「今度の土曜、これ見に行かないか?」
「見ろ!【全米が吐いた超駄作、日本上陸「勝手に上陸すんなぁ!!!」
いつものごとき五月蝿さ。これぞ日之出荘である。
「全米吐くなよ!俺は行かないぞ、劇場で吐くつもりか!?どんな気持ち悪さだよ!?」
「いや、全米が吐いたって俺は負けん」
「何と戦ってるんだよ!現実か!?てか負けるだろ、全米なめんなよ!!」
騒ぎを聞いて皆が寄ってくる。
「また鷹穂、今度は何?」
「おおっ、面白そうな映画だな、今度の週末―――」
「乗るな姫野、ちょっと待てぇぇ!!!」
別に俺はどっちでもいい。だが五月蝿いのは嫌いだ。
という訳で部屋に避難しようと・・・
「雨宮はどうなんだよ」
そこで俺に振るか?
「どうでもいいが俺は行かん。五月蝿いのは嫌いだ」
「まあお前はそう言うと思ったけどな、だから代わりに別の映画を予定して来た」
「じゃあ先にそっち出せよ!」
「だって面白そうだったから「吐きたいのかぁ!!!!」
という訳で半ば強制的に俺の土曜の予定は埋められた・・・。
まあこんなもの、慣れたものだ。