5.教室
訪問有り難う御座います!
話がようやく進み始めます。
付き合い始めて、早数ヶ月。水面が自分を好いてくれているのは、よく伝わってくる。それは恥ずかしいほど伝わってくるのだが、何故好きになってくれたのか、和斗は分からないでいた。
付き合うに至るまでのことを思い出してみる。
昼を一緒に食べて、図書館に通って、お勧めの本を読んでみて、登下校を一緒にして――今思えば、その頃からまるで本当のカップルのようなことをしていた。
思わず口元が緩む。
「何にやついてんのよ」
和歌の言葉に慌てて口元を引き締める。
そういえば今は、一人でいるのではなかった。和歌と明が変なものを見る目で、こちらを見ていた。
しかし、思い出しては見るものの、どこか特別何かがあったわけではないようだった。
「なぁ、水面はさ、俺のどこを好きになったと思う」
「「顔」」
見事なまでに二人の声がハモった。
何故こんなにも自分の幼なじみたちは失礼な奴らなのだろう。少し泣けてきた。
「いや、嫌われるより好かれる顔のがいいけども――」
「少しピアスが多いけど、さっぱりしてるしいんじゃない?」
「男の俺から見ても、整ってる方だと思うし」
だから別に、顔の話をして欲しいわけではない。というより、いい加減顔から離れて欲しかった。
「実際、和斗は顔以外取り柄無いでしょ」
「あぁ!?」
「いや、運動神経いいし、喧嘩も強いぞ」
どれも水面が好きになりそうな所では、ない気がした。運動神経にいたっては、水面の前で運動をしたことがないので、分かるはずがない。
「まじめな話、水面はさ、あんたみたいなの怖がってはいるけど、憧れている節があるのよね」
「憧れ?」
「ん。ま、どこが好きとかそんな話、水面に直接聞くのが一番じゃない?」
それが聞ければ苦労はしないだろう。
今までの時間は一体何だったのだ。
和斗は肩を落とした。
有り難う御座いました。