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2.登校

訪問有り難う御座います。

今回は~少女は夢を見る~登校 の次の日の話になります。


まさか、あの混雑した車内に水面がいるとは思っていなかった。人が多いところは苦手というのは、当たり前のように知っていたし、そのために早く家を出ていることも調査済みだ。それなのに、まさか一番混雑しているときに乗っているとは想像もしないだろう。

「水面! おはよう」

椅子に座って本を読む姿をホームで見つける。

一本早い電車であっても、多少は混むだろうと思い朝は一緒に通うことにしたのだが――

「和斗さん、お早う御座います」

「――っ!」

想像以上の喜びに、和斗は身を捩った。

まさか、朝一番にこんな可愛らしい子に可愛らしい声で挨拶してもらえる日が来るとは。あまりの恥ずかしさに、顔が一瞬で熱くなる。

「和斗さん?」

「ん、おはよう。今日は何読んでんだ?」

「えっと、この間の本の作者さんの、別の話です」

「あの緑の……何とかの?」

確かこの間まで読んでいたのは、緑の背表紙のものだった。和斗がとってやったものだ。

「はい。緑の華です」

「もう読めたのか」

ホームに入ってきた電車に乗り込みながら、水面の手に持った本を覗き込む。また少し分厚くて、とても読むのに時間がかかりそうな本だった。

「はい。まだ返せてないんですけどね」

車内はやはり少し混んでいて、空いていた座席に無理やり水面を座らせるとその前に立った。一瞬困った顔を見せたが、すぐに耳を赤くした。小さな声で礼を言う姿がまた可愛かった。

座れたのだから本の続きを読めばいいのに、何故か水面は持っていた本を鞄にしまってしまった。

「読まないの?」

「これは和斗さんを待つのに読んでいただけですから。あ、別にそんなに待っていたわけじゃないですよ」

「俺を待つための時間つぶしに?」

「えっと、あの……」

もしかして、少しは期待しても良いのだろうか。

「俺が来たら、俺と話してくれる予定だった……とか」

「そ、なっ!!」

慌てて手を振りつつ顔を上げてくるので、そのまま目があった。

「っ!!」

すぐに顔を俯けてしまったのでそれは一瞬のことだったが、今のつむじが見えるこの体勢も、これはこれで気に入っている。恥ずかしがっている様が、見て取れる。期待しても良いのだろうか。

「水面さん、水面さん。昨日も思ったけど、すぐ耳赤くなるからバレバレですよ」

「い、いえ、あの……」

そう言ってまた赤くするところがまた可愛くて、今からまた明日の朝を楽しみにする和斗だった。


有り難う御座いました。

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