表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/108

99 変わらないもの

 

 カフェの照明が、少しだけ落ち着いた色に変わる。

 外は完全に夜で、ガラスには店内の光が映っている。


 テーブルの上。

 空になりかけたカップが二つ。


「変わらないね」


 凛が、ふと口にする。


 視線は、カップの縁をなぞる指先に落ちている。


「なにが」


 顔を上げる。


 少しだけ首を傾ける。


「そういうとこ」


 小さく笑う。


 その笑い方は、あの頃と同じで、


 何を指してるのか、


 説明されなくても分かる気がする。


「凛もな」


 自然に返す。


 少しだけ間を置いてから。


 凛が、少し驚いたように目を上げる。


 それから、


 ふっと、柔らかく笑う。


 沈黙。


 言葉が途切れる。


 でも――


 さっきまでとは違う。


 無理に何かを探さなくてもいい沈黙。


 埋めなくていい空白。


 ただ、そこにある時間。


 カップの底に残ったコーヒーが、


 静かに揺れる。


 店内のざわめきが遠くにあって、


 二人の間だけ、少しだけ静かになる。


(……)


 目が合う。


 逸らさない。


 そのまま、少しだけ続く。


 昔みたいに、


 言葉がなくても成立する距離。


 なくしたと思っていた感覚が、


 ゆっくりと戻ってくる。


 変わったものもある。


 時間も、関係も、形も。


 でも――


 全部が変わったわけじゃない。


 ちゃんと残っているものもある。


 それを、今になってやっと、


 確かめるみたいに。


 沈黙が続く。


 でも今度は――


 昔みたいに、


 心地よかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ