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96 再会
夕方。
空は淡く色づいて、
街全体がゆっくりと夜に近づいている。
見慣れた街。
少しだけ変わった店。
でも、変わらない道。
変わらない匂い。
(……久しぶりだな)
足を止める。
理由はない。
ただ、なんとなく。
そのとき――
前から歩いてくる人影。
人混みの中で、
なぜかそこだけ、輪郭がはっきりする。
すれ違うはずだった距離。
でも、
視線が合う。
一瞬。
ほんの一瞬で、
時間が引き戻される。
「……あ」
声が、こぼれる。
「……ユウタ?」
聞き慣れた呼び方。
忘れたはずの音。
足が動かない。
周りの人は流れていくのに、
そこだけ、止まっているみたいだった。
数年ぶり。
目の前にいる。
髪の長さも、服の雰囲気も、
少しだけ変わっている。
大人になっている。
でも――
目。
声。
空気。
何も変わっていない。
(……)
言葉が出てこない。
何を言えばいいのか、分からない。
でも、
分からないままでも、
分かってしまう。
目の前にいるのが、
あのときの“隣”だった人だってこと。
時間が止まる。
いや、
止まっているのは、
自分だけかもしれない。
夕方の光が、少しだけ傾く。
その中で、
二人だけが、
過去と今の境目に立っていた。




