表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/107

91 写真

 

 夜。


 部屋の明かりは、スマホの光だけ。


 ベッドに寝転がって、

 何気なく画面を開く。


 指が、無意識に動く。


 写真フォルダ。


 スクロール。


 最近のもの。

 仕事のメモみたいな写真。

 どうでもいい風景。


 さらに下へ。


 時間を遡る。


 指が、少しだけ遅くなる。


 見覚えのある色。

 見覚えのある空気。


 そして――


 止まる。


(二人で写ってる)


 小さな画面の中。


 並んで笑っている。

 距離が近くて、

 当たり前みたいに隣にいる。


 指が、そのまま画面の上で止まる。


 タップすれば、


 きっとはっきり見える。


 あの日の空気も、

 声も、

 全部、思い出せる気がする。


 でも――


 動かない。


 開かない。


 開いたら、


 戻れなくなる気がした。


 今の“普通”に。


 今の距離に。


 やっと保っている、

 この静かなバランスに。


(……)


 ほんの一瞬だけ、迷う。


 それでも、


 指を離す。


 画面を閉じる。


 暗くなる。


 部屋も、また静かになる。


 さっきまでそこにあったはずの“二人”は、


 もう見えない。


 見なかったことにするみたいに。


 でも――


 完全には消えない。


 まぶたの裏に、


 ぼんやりと残る。


 それを振り払うように、


 スマホを伏せる。


 天井を見る。


 何もない。


 何も変わらない。


 ただ、


 見なかったことにした記憶だけが、


 静かにそこに残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ