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84 理由
歩きながら、凛が続ける。
「嫌いになったわけじゃないよ」
その声は、少しだけ優しい。
「分かってる」
すぐに返す。
それだけは、本当に分かっていた。
「むしろ――」
言葉が一度止まる。
風が吹く。
その間が、やけに長く感じる。
「ちゃんと好きだから」
静かに、でもはっきりと。
胸の奥に、まっすぐ届く言葉。
「……」
何も言えない。
嬉しいはずの言葉なのに、
今はただ、苦しい。
「このままだと、壊れる」
凛が続ける。
「……」
分かる。
痛いほど分かる。
何も言わなくても、
もう崩れ始めていた。
無理に続ければ、
きっともっとひどくなる。
だから――
終わる。
好きなまま、終わる。




