表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛病死 ― 愛は、最後に名前がつく ―  作者: 椿
第6章:すれ違い
68/90

68 優しさのズレ

 

 放課後。


 教室には人がまばらで、

 窓から差し込む光も、少しだけ傾いている。


 静かな時間。


 机の上には、まだ片付けていないノート。


 帰るには、ちょうどいいタイミング。


「最近さ」


 思い切って口を開く。


「なに」


 凛はカバンに手をかけたまま、振り向く。


 その表情は、やっぱり普通。


「無理してない?」


 できるだけ、柔らかく言う。


 責めるようにならないように。


 ただの確認みたいに。


「してないって」


 即答。


 いつもと同じ。


 迷いもなく。


 でも――


「でも――」


 言葉が勝手に続く。


 止められない。


 ここで止めたら、何も変わらない気がして。


 その瞬間。


「大丈夫って言ってるじゃん」


 少し強い声。


 ぴたりと空気が止まる。


 ほんの一瞬。


 でも、はっきり分かる。


 今までと違うトーン。


「……」


 言葉が出ない。


 凛も、一瞬だけ目を逸らす。


 自分でも強く言ったって分かってるみたいに。


 でも、何も言い直さない。


 ただ、静かになる。


 教室の外から、部活の声が少しだけ聞こえる。


 遠くの音だけが、やけに響く。


「……悪い」


 先に言う。


 反射みたいに。


 踏み込みすぎたのは、こっちだと思って。


 凛は小さく首を振る。


 でも、何も言わない。


 そのままカバンを持つ。


「帰ろ」


 いつもの一言。


 でも、その声は少しだけ硬い。


「ああ」


 立ち上がる。


 距離は、変わらない。


 並んで歩く。


 でも――


 さっきまでと同じはずの距離が、


 少しだけ遠く感じる。


 優しさで聞いたつもりだった。


 心配だっただけのはずだった。


 でも、


 その優しさが、


 ぶつかった。


 噛み合わないまま。


 言葉にしなかった分だけ、


 余計に残る。


 触れようとした手が、


 少しだけ、空振りしたみたいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ