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恋愛病死 ― 愛は、最後に名前がつく ―  作者: 椿
第6章:すれ違い
66/107

66 既読

 

 夜。


 部屋の明かりはついているのに、

 どこか静かすぎる。


 窓の外はもう真っ暗で、

 時々、遠くを走る車の音だけが聞こえる。


 ベッドに寝転びながら、スマホを見る。


 画面の光が、やけに白く感じる。


『明日どうする?』


 送る。


 ほんの軽いメッセージ。


 いつもなら、すぐ返ってくるやつ。


 数秒後。


 既読がつく。


(……)


 それだけ。


 指が止まる。


 画面を見たまま、動かない。


(まあ、あとで返すだろ)


 自分の中で、すぐに理由をつける。


 風呂かもしれない。

 何かしてるのかもしれない。


 それくらい、普通にある。


 スマホを伏せる。


 天井を見る。


 何も考えないようにする。


 ――はずなのに。


 数分後。


 また手が伸びる。


 画面を開く。


 変わってない。


 既読のまま。


 返信はない。


(……なんだよ)


 小さく息を吐く。


 別に、おかしいことじゃない。


 たったそれだけのこと。


 なのに――


 妙に気になる。


 時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる。


 また少し時間が経つ。


 もう一度見る。


 やっぱり、変わってない。


 既読。


 それだけ。


(……まあいいか)


 そう思って、スマホを置く。


 今度こそ、見ないようにする。


 でも――


 頭の中には、ずっと残っている。


 既読がついたままの画面。


 返ってこない一言。


 静かな部屋。


 何も起きていないはずなのに、


 何かが少しずつズレていく感覚だけが、


 消えなかった。

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