66 既読
夜。
部屋の明かりはついているのに、
どこか静かすぎる。
窓の外はもう真っ暗で、
時々、遠くを走る車の音だけが聞こえる。
ベッドに寝転びながら、スマホを見る。
画面の光が、やけに白く感じる。
『明日どうする?』
送る。
ほんの軽いメッセージ。
いつもなら、すぐ返ってくるやつ。
数秒後。
既読がつく。
(……)
それだけ。
指が止まる。
画面を見たまま、動かない。
(まあ、あとで返すだろ)
自分の中で、すぐに理由をつける。
風呂かもしれない。
何かしてるのかもしれない。
それくらい、普通にある。
スマホを伏せる。
天井を見る。
何も考えないようにする。
――はずなのに。
数分後。
また手が伸びる。
画面を開く。
変わってない。
既読のまま。
返信はない。
(……なんだよ)
小さく息を吐く。
別に、おかしいことじゃない。
たったそれだけのこと。
なのに――
妙に気になる。
時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる。
また少し時間が経つ。
もう一度見る。
やっぱり、変わってない。
既読。
それだけ。
(……まあいいか)
そう思って、スマホを置く。
今度こそ、見ないようにする。
でも――
頭の中には、ずっと残っている。
既読がついたままの画面。
返ってこない一言。
静かな部屋。
何も起きていないはずなのに、
何かが少しずつズレていく感覚だけが、
消えなかった。




