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恋愛病死 ― 愛は、最後に名前がつく ―  作者: 椿
第6章:すれ違い
66/90

66 既読

 

 夜。


 部屋の明かりはついているのに、

 どこか静かすぎる。


 窓の外はもう真っ暗で、

 時々、遠くを走る車の音だけが聞こえる。


 ベッドに寝転びながら、スマホを見る。


 画面の光が、やけに白く感じる。


『明日どうする?』


 送る。


 ほんの軽いメッセージ。


 いつもなら、すぐ返ってくるやつ。


 数秒後。


 既読がつく。


(……)


 それだけ。


 指が止まる。


 画面を見たまま、動かない。


(まあ、あとで返すだろ)


 自分の中で、すぐに理由をつける。


 風呂かもしれない。

 何かしてるのかもしれない。


 それくらい、普通にある。


 スマホを伏せる。


 天井を見る。


 何も考えないようにする。


 ――はずなのに。


 数分後。


 また手が伸びる。


 画面を開く。


 変わってない。


 既読のまま。


 返信はない。


(……なんだよ)


 小さく息を吐く。


 別に、おかしいことじゃない。


 たったそれだけのこと。


 なのに――


 妙に気になる。


 時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる。


 また少し時間が経つ。


 もう一度見る。


 やっぱり、変わってない。


 既読。


 それだけ。


(……まあいいか)


 そう思って、スマホを置く。


 今度こそ、見ないようにする。


 でも――


 頭の中には、ずっと残っている。


 既読がついたままの画面。


 返ってこない一言。


 静かな部屋。


 何も起きていないはずなのに、


 何かが少しずつズレていく感覚だけが、


 消えなかった。

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