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63 未来の拒否

 

 帰り道。


 夕焼けはもうほとんど消えて、

 空は淡い青から夜に変わりかけている。


 街灯がぽつぽつと点き始めて、

 道に長い影を落としていた。


 並んで歩く。


 足音だけが、静かに重なる。


 会話は少ない。


 でも、それが当たり前になっている。


「卒業したらさ」


 ふと口に出る。


 深い意味はない。


 いつもみたいに、なんとなく。


「……」


 返事がない。


 隣を見ると、凛は少しだけ視線を落としている。


「どこ行く?」


 続けて聞く。


 少しだけ軽く。


 重くならないように。


 凛はすぐには答えない。


 歩きながら、ほんの少しだけ間が空く。


 街灯の光が、その横顔を照らす。


 その表情は――


 読めない。


「……分かんない」


 やっと出た言葉。


 短い。


 いつもより、少しだけ遅い。


「考えてないのか?」


「……」


 また、間。


 今度は、さっきより長い。


 足音だけが、やけに響く。


 それから、


「考えたくない」


 はっきり言う。


 迷いはない。


 ごまかしもない。


 ただ、断ち切るみたいに。


「……そっか」


 それ以上、何も言えなかった。


 言葉が続かない。


 続けてはいけない気がする。


 凛は前を向いたまま歩く。


 表情は見えない。


 でも、


 さっきまでとは違う空気だけが、残る。


 風が吹く。


 少し冷たい。


 季節が変わり始めているみたいな風。


 その中で、


 二人の距離は変わらない。


 隣にいる。


 触れそうな距離。


 でも――


 どこか遠い。


「……」


 未来の話。


 ただそれだけのはずなのに、


 そこに触れた瞬間、


 踏み込めない何かがあると分かる。


 見えない線みたいなもの。


 それ以上は行くな、っていう境界。


 凛は何も言わない。


 何事もなかったみたいに歩く。


 でも――


 さっきの一言だけが、


 強く残る。


 “考えたくない”


 その言葉が、


 やけに重く、


 胸の奥に沈んだ。

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