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55 構築完了

 

 夕焼け。


 空はゆっくりと色を変えていく。

 オレンジから、少しずつ赤へ。

 その境目が曖昧で、どこか今の自分たちに似ていた。


 帰り道。


 並んで歩く。


 言葉は少ない。


 でも、沈黙が苦しくない。


 それがもう、答えみたいだった。


 風が吹く。


 昼の熱を残した空気が、少しだけやわらぐ。


 凛の髪が揺れる。


 その横顔が、夕焼けに染まる。


「ねえユウタ」


「なに」


 自然に名前で呼ばれる。


 それも、もう当たり前になっている。


「今、幸せ?」


 足を止めることもなく、聞かれる。


 軽い調子。


 でも、その奥にあるものが、分かる。


「……ああ」


 迷いはなかった。


 考えるより先に、言葉が出た。


 即答だった。


 その瞬間、


 胸の奥が、静かに確かになる。


 凛が少しだけ目を細める。


 夕焼けの光を受けて、


 その表情はやわらかくて――


 どこか安心したみたいだった。


「よかった」


 小さく言う。


 その声は、風に溶けるくらい静かで。


 でも、確かに届いた。


 また歩き出す。


 歩幅は、ぴったり揃う。


 何も言わない。


 でも、


 離れる気配もない。


 この距離。


 この関係。


 名前はないまま。


 形もはっきりしないまま。


 それでも――


 ちゃんと“できあがっている”。


 ふと、凛の方を見る。


 凛も、同じタイミングでこっちを見る。


 目が合う。


 ほんの一瞬。


 それだけで、十分だった。


 凛が笑う。


 その笑顔は、いつも通りで――


 でも、


 ほんの少しだけ、


 影がある。


「……」


 気づいてしまう。


 この時間が、


 ずっと続くわけじゃないこと。


 それでも、


 今はまだ、


 ここにある。


 夕焼けが、ゆっくり沈んでいく。


 一日の終わりみたいに。


 でも同時に――


 何かが完成した瞬間でもあった。


 その笑顔が――


 少しだけ、切なかった。

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