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49 帰り道

 

 帰り道。


 祭りのざわめきが、少しずつ遠ざかっていく。

 提灯の明かりも減って、街灯の白い光に変わる。


 さっきまでの非日常が、ゆっくり溶けていく。


 それでも――


 手は、繋いだまま。


 指と指が、自然に絡んでいる。


 さっきよりも、ずっと当たり前みたいに。


 歩くリズムも、ぴったり合っている。


 何も言わなくても。


「ねえ」


 凛が小さく言う。


「なに」


「離す?」


 軽い調子。


 でも、少しだけ確かめるみたいに。


 一瞬だけ考える。


 でも、答えはすぐ出る。


「……いや」


 短く言う。


 迷いはない。


 凛が、ほんの少しだけ力を込める。


「だよね」


 小さく笑う。


 その声が、やけに近い。


 静かな道。


 車の音も、人の声も、ほとんどない。


 あるのは、二人の足音と、


 繋いだ手の感覚だけ。


 さっきの花火。


 言いかけて止めた言葉。


 全部、頭のどこかに残っている。


 でも――


 今は、それを無理に言葉にしなくていい気がした。


 繋いでいるだけで、分かるものがある。


 凛の手の温度。


 少しだけ伝わる力。


 離さないっていう、無言の意思。


 街灯の下を通るたび、


 影が長く伸びる。


 二人の影は、もう完全に繋がっていて、


 一つみたいに見える。


 その形が、


 今の関係をそのまま表している気がした。


 曖昧で、


 でも確かで、


 言葉がなくても成立している距離。


「……」


 何も言わない。


 でも、沈黙は重くない。


 むしろ、心地いい。


 言葉はいらなかった。


 今はまだ、


 このままでいいと思えた。

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