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34 静かな不安

 

 夜。


 部屋の明かりはついているのに、どこか暗く感じる。


 机の上には開いたままの教科書。

 でも、文字はまったく頭に入ってこない。


 スマホを手に取る。


 画面をつける。


 トーク画面。


 既読はついてる。


 ――でも、返信はない。


(……なんだよ)


 指が、画面の上で止まる。


 打ちかけたメッセージを、消す。


 また開いて、閉じる。


 同じことを何度も繰り返す。


 時計を見る。


 まだ、そんなに時間は経ってない。


 でも――


 やけに長く感じる。


(……なんでだよ)


 ベッドに倒れ込む。


 天井を見上げる。


 部屋は静かで、時計の秒針の音だけがやけに響く。


 いつもなら。


 どうでもいいやり取りでも、すぐ返ってくる。


 スタンプでも、短い一言でも。


 それが“普通”だった。


 なのに。


 今日は、何も来ない。


(……さっきのせいか)


 頭に浮かぶのは、放課後の会話。


 いや、会話ですらない。


 一方的に投げた言葉。


「神代と帰ればいいじゃん」


 思い出しただけで、胸の奥が重くなる。


(……最悪だな)


 自分で言っておいて、今さら後悔する。


 スマホを握る手に、少しだけ力が入る。


 既読の文字が、やけに冷たく見える。


 何も言ってこないってことは――


 怒ってるのか。


 呆れてるのか。


 それとも。


 もう、どうでもいいと思われてるのか。


 考え始めると、止まらない。


(……いや、そんなわけ)


 否定しようとする。


 でも、その根拠がどこにもない。


 外から、風の音が聞こえる。


 窓が少しだけ揺れる。


 部屋のカーテンが、かすかに動く。


 その小さな音だけが、やけに大きく感じる。


 スマホの画面は、相変わらず変わらない。


 既読のまま。


 何も増えない。


(……なんでだよ)


 さっきよりも、少しだけ弱い声。


 答えは分かっているはずなのに、


 それを認めたくなくて、


 同じ問いを、何度も繰り返してしまう。


 暗くなった画面に、自分の顔がぼんやり映る。


 その表情が、思ったより不安そうで――


 少しだけ、目を逸らした。

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