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28 三角形の予感

 帰り道。


 夕方の光が、街をゆっくりと染めている。

 文化祭の余韻がまだ残っているのか、どこか少しだけ現実感が薄い。


 いつもの道。


 でも今日は――


 三人。


 靴音が一つ多いだけなのに、

 空気の流れが微妙に違う。


 神代は自然に会話の中心にいる。

 無理に目立つわけでもなく、でも確実に場を回している感じ。


「ユウタくんって、相沢さんと仲いいよね」


 軽い調子で、でもちゃんと核心を突いてくる。


「まあな」


 短く答える。


 隣を見ると、凛は特に気にした様子もなく前を向いている。


「いいなあ、そういう関係」


 神代は少しだけ笑う。


 嫌味じゃない。

 本心から言ってるように聞こえるのが、逆に厄介だ。


「普通だろ」


 そう返す。


 いつもなら、それで終わる言葉。


 そのはずなのに。


 凛が、すぐに続ける。


「普通だよ」


 さらっと。


 何でもないみたいに。


 でも――


(……あれ)


 ほんの少しだけ、間があった。


 言葉と言葉の間に、ほんのわずかな空白。


 風が吹く。


 街路樹の葉が揺れて、光がちらつく。


 その一瞬だけ、凛の横顔が視界に入る。


 表情はいつも通り。


 なのに、どこか少しだけ違う気がした。


(普通、か)


 その言葉が、やけに残る。


 いつもなら、気にもしないはずなのに。


 今日は、違う。


 三人で歩く距離。


 会話のテンポ。


 視線の動き。


 全部が少しずつズレている。


 神代は前を向いたまま、軽く言う。


「でもさ」


「ん?」


「普通って、一番特別だよね」


 さらっと言う。


 風に乗せるみたいに。


 その言葉に、凛は何も返さない。


 ただ、少しだけ歩幅を合わせる。


 ユウタと。


 その距離は、変わらないはずなのに――


 なぜか、強く意識される。


 夕日が、三人の影を長く伸ばす。


 並んでいるのに、


 どこか、重なりきらない。


 その形が――


 妙に、引っかかった。

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