27 新しい風
朝のホームルーム。
ざわついた空気の中で、担任が軽く手を叩く。
「今日は転校生を紹介する」
その一言で、教室の空気が一気に変わる。
期待と好奇心が混ざった視線が、前の扉に集まる。
ドアが開く。
「神代 蒼です。よろしく」
落ち着いた声。
無駄のない立ち姿。
背は高くて、姿勢もいい。
どこか余裕がある雰囲気。
第一印象で分かるタイプのやつだ。
爽やか。
頭良さそう。
そして――
(……強いな)
教室の空気が、ほんの少しだけ変わる。
女子の視線が集まるのも、なんとなく分かる。
先生が席を指示して、軽いざわめきが戻る。
でも、その“新しさ”だけは、しばらく残ったままだった。
――――――――――
休み時間。
さっそく周りには人だかりができている。
質問攻め。
どこから来たのか、前の学校はどこか。
その中心で、神代は自然に会話している。
無理に合わせてる感じじゃない。
でも、ちゃんと空気に馴染んでいる。
(……すげえな)
少し離れたところから、それを見る。
そのとき。
神代の視線が、ふっと動く。
そして――
まっすぐ、凛の方へ向かう。
(あ)
次の瞬間には、もう動いていた。
「相沢さん、さっきの授業すごかったね」
距離の詰め方が、やけに自然だった。
名前も覚えてる。
話しかけるタイミングも、迷いがない。
「ほんと?ありがと」
凛も、いつも通りに笑う。
警戒する様子もなく、普通に受け答えしている。
その光景。
会話のテンポ。
距離感。
全部が、完成されている感じがした。
(……早いな)
思わずそう思う。
教室のざわめきの中で、
二人の会話だけが妙にスムーズに流れている。
自分が入り込む余地がないくらいに。
窓の外から風が入る。
カーテンがふわりと揺れて、
光が少しだけ形を変える。
その中で――
“新しい風”が、確かに入り込んできていた。




