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24 帰り道

 

 文化祭の帰り。


 校門を出るころには、もう空は少し暗くなっていた。

 夕焼けがゆっくりと色を変えて、オレンジから紫へと滲んでいく。


 校舎の中からは、まだ片付けの音がかすかに聞こえる。

 笑い声も混じっていて、終わったはずなのに、どこか続いているみたいだった。


 外に出ると、急に静かになる。


 さっきまでの賑やかさが嘘みたいに、

 風の音と、足音だけが残る。


 並んで歩く。


 少しだけ疲れてるはずなのに――


 足取りは軽い。


「今日さ」


 凛が空を見上げたまま言う。


 頬が少し赤いのは、疲れのせいか、それとも――


「なに」


「めっちゃ楽しかった」


 その言葉は、迷いがなかった。


「俺も」


 自然に出る。


 変に考えることもなく、すっと。


「でしょ?」


 凛が少しだけ嬉しそうに笑う。


 それだけで、なんとなく満足する。


 会話が途切れる。


 でも――


 沈黙が、重くない。


 むしろ、さっきまでの喧騒のあとだからか、

 この静けさがちょうどいい。


 靴がアスファルトを踏む音。


 遠くで鳴く鳥の声。


 夕方特有の、少しだけ冷たい風。


 凛が、ほんの少しだけ歩幅を合わせてくる。


 気づかないふりをする。


 でも、ちゃんと分かる。


(……こういうの)


 言葉にしなくても、成立している感じ。


 文化祭は終わったのに、


 その“余韻”だけが、まだ続いている。


 凛がぽつりと。


「なんかさ」


「ん?」


「終わった感じ、しないね」


 前を見たまま言う。


「……ああ」


 同じことを思っていた。


 空はもう、ほとんど夜に変わっている。


 街灯がぽつぽつと点き始める。


 その明かりの中で、二人の影が並ぶ。


 伸びて、重なって、また離れて。


 言葉はない。


 でも――


 この沈黙が、やけに心地よかった。

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