23 文化祭当日②
休憩時間。
校舎の外に出ると、空気が少しだけ変わる。
中の熱気に比べて、外はひんやりしていて、秋の匂いが混じっていた。
中庭には人が溢れている。
写真を撮るやつ、笑い合うやつ、出し物の呼び込み。
その全部が重なって、文化祭の音を作っていた。
少し離れたベンチに腰を下ろす。
木の葉が風に揺れて、影が地面に細かく揺れる。
遠くから聞こえる音が、どこか少しだけ遠く感じた。
凛が隣に座る。
制服の袖が、ほんの少しだけ触れる距離。
「楽しいね」
ぽつりとした声。
さっきまでの接客の明るさとは違って、少しだけ落ち着いている。
「そうだな」
答える。
視線は前のまま。
でも、隣の気配ははっきりと感じる。
「こういうの、ずっと続けばいいのに」
その言葉。
軽く言ったようで――
どこか、引っかかる。
風が吹く。
木の葉が一斉に揺れて、光が細かくちらつく。
その音の中で、凛は少しだけ目を細めた。
まるで、この瞬間を確かめるみたいに。
「……ああ」
短く答える。
それしか言えなかった。
“ずっと続くわけじゃない”
そんな当たり前のことが、なぜか頭をよぎる。
文化祭も、今日で終わる。
この空気も、この距離も、この時間も――
全部、期限付きだ。
凛は少しだけ俯く。
そして、小さく笑う。
「でもさ」
「ん?」
「終わるから、いいのかもね」
その言葉は、さっきの“ずっと続けばいいのに”と、どこか矛盾していて。
でも――
なぜか、妙に現実的だった。
遠くで、終了時間を知らせるアナウンスが流れる。
その声が、少しだけこの場所に届く。
凛は顔を上げて、空を見る。
「ねえ」
「なに」
「このあとも、一緒に帰ろうね」
当たり前みたいに言う。
でも――
ほんの少しだけ、確認するような言い方だった。
「……ああ」
また、短く答える。
それで十分なはずなのに。
胸の奥に、さっきよりも強く残るものがあった。
“ずっと続けばいい”
“終わるからいい”
その両方が、同時に存在しているみたいな違和感。
風がまた吹く。
木の葉が落ちる。
それは、ゆっくりと地面に触れて――
そのまま、動かなくなった。




