22 文化祭当日①
文化祭当日。
校門の前から、もう騒がしい。
カラフルな看板、呼び込みの声、制服じゃない服装の人たち。
普段の学校とはまるで別世界みたいで、
足を踏み入れた瞬間、空気が一段明るくなる。
廊下には飾り付けがびっしりで、
紙の花や手作りのポスターが、少し不格好なのにやけに楽しそうだった。
自分のクラスの前に立つ。
扉の上には「喫茶店」と書かれた看板。
中からは笑い声と、食器の軽い音が聞こえてくる。
一歩入ると――
そこはもう、完全に“別の場所”だった。
机は整えられて、クロスがかけられ、
簡単な飾りでも、ちゃんと雰囲気が出ている。
そして。
「いらっしゃいませー」
凛の声。
振り向く。
制服にエプロンをつけて、
いつもより少しだけきちんとした格好で、客を迎えている。
その笑顔が、やけに自然だった。
(……普通にやってるな)
しかも。
思った以上に人気だった。
「この子感じいいね」なんて声が聞こえる。
実際、凛の周りには人の流れができている。
注文を取る手際も、案内の仕方も、無駄がない。
(……なんかムカつくな)
理由は分からないけど、少しだけ面白くない。
そんなことを思いながら、近づく。
「似合ってるな」
声をかけると、凛が一瞬だけこっちを見る。
少しだけ驚いた顔。
それから、すぐに笑う。
「でしょ?」
自信満々。
「ちょっとな」
わざと抑えた言い方。
「素直じゃん」
「たまにはな」
凛はくすっと笑う。
そのまま「少々お待ちください」と別の客に向き直る。
動きに迷いがない。
声も明るい。
いつもの軽さとは違う、ちゃんとした“役”をやっている感じ。
(……ほんとに似合ってるな)
心の中でだけ、そう思う。
教室の中は賑やかで、
笑い声や会話が絶えず続いている。
その中心にいる凛の姿が――
なぜか、やけに目に残った。
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