21 一緒に帰る理由②
帰り道。
文化祭準備のあとの街は、いつもより少し遅い時間になっていた。
空はもうほとんど暗くて、街灯の光が道を淡く照らしている。
さっきまでの教室の賑やかさが嘘みたいに、外は静かだった。
遠くで車が通る音と、たまに聞こえる自転車のベル。
その中を、並んで歩く。
いつもより少しだけ、歩くペースがゆっくりだった。
「ねえ」
凛がぽつりと口を開く。
「なに」
横を見ると、凛は前を向いたまま、少しだけ足元を見ていた。
「もしさ」
「うん」
「一緒に帰れなくなったらどうする?」
唐突な質問。
でも、その声はやけに静かで、軽い冗談には聞こえなかった。
一瞬、考える。
街灯の下を通るたびに、影が伸びては縮む。
「……別に」
反射的に答える。
そのまま流そうとする。
でも――
ほんの少し、言葉が止まる。
足音だけが、やけに大きく響く。
「まあ、困るな」
結局、そう言っていた。
凛が少しだけ顔を上げる。
そのまま、ふっと小さく笑った。
「でしょ?」
その一言が、やけに軽くて、でもどこか安心したようにも聞こえた。
風が吹く。
夜の空気は少し冷たくて、昼間の温もりはもう残っていない。
(……なんでこんなこと聞くんだよ)
理由は分からない。
でも、その質問自体が、少しだけ怖かった。
“一緒に帰れなくなる”
そんな可能性を、考えたことがなかったから。
いつの間にか当たり前になっていたもの。
それがなくなる想像。
胸の奥に、ほんの少しだけ空白ができる。
隣を歩く距離は変わらない。
足音も揃っている。
それなのに――
その“もし”だけが、妙に現実味を持って残った。
街灯の光の中で、二人の影が並んで伸びていた。




