20 ちょっとした嫉妬
放課後の教室。
文化祭準備の続きで、いつもより人が多く残っている。
机は端に寄せられて、真ん中には材料や道具が散らばっていた。
ガムテープの音、はさみの音、誰かの笑い声。
ざわざわとした空気の中で、それぞれが自分の役割をこなしている。
その中で――
凛が、他の男子と話している。
何かの役割の相談らしく、楽しそうに笑いながら身振りを交えて話している。
(……別にいいだろ)
そう思う。
普通のことだし、当たり前の光景。
凛は誰とでも普通に話すし、
それを止める理由なんて、どこにもない。
でも――
なんか、気になる。
作業している手が、少しだけ止まる。
視線が、勝手にそっちへ向く。
笑ってる顔。
相手との距離。
その全部が、妙に目に入る。
(……なんだよこれ)
自分でも分かるくらい、落ち着かない。
そのとき。
「顔に出てるよ」
横から声。
いつの間にか、凛が戻ってきていた。
「なにが」
なるべく平静を装う。
「発熱してる」
「違う」
即答。
でも、さっきの違和感がまだ残っている。
「嫉妬は高熱か」
「だからその理論やめろ」
凛はくすっと笑う。
からかうような、でもどこかやわらかい笑い。
「安心して」
「なにが」
少しだけ間があって、
「ちゃんと戻ってくるから」
その言い方。
軽いはずなのに――
なぜか、引っかかる。
まるで、“戻る場所”が決まっているみたいな言い方。
(……なんだそれ)
胸の奥が、少しだけざわつく。
教室のざわめきは変わらない。
誰かが笑って、誰かが呼んで、音が絶えず流れている。
でも、その中で――
その一言だけが、妙に残る。
凛は何事もなかったみたいに、また作業に戻っている。
さっきと同じ距離。
同じ空気。
なのに。
ほんの少しだけ、意味が変わった気がした。




